第3話


【3話】



○テーブルに置かれた数千円と小銭のアップ

○リボンの家の作業場に集まる3人の引きの図


愛奈『なんでこれしかないのー!?あの200万円は何に使ったの?』


リボン『装甲やラジエーターの修理費、ジェットエンジンのプラスチック燃料費に


次の試合の対策費、あなたが連日バカスカ食べたハンバーガー代』


愛奈『ちょっと待って!じゃあもうマックに行けないの?』


リボン『もういいじゃない!ハンバーガー何十個も食べたんだから!』


愛奈『えーー!マックシェイク愛してるんだから行かせてぇ~』


リボン『ハンバーガー愛してるんじゃないんかい!だめっ!底無しだから!』


愛奈『失礼ね!私の胃袋が底無しだってぇ?』


リボン『偏差値もねー』


愛奈『あ、それ言っちゃいけないやつだ!あー、もう、担任袋の緒が切れた!』


リボン『それを言うなら堪忍袋!』


愛奈『次の試合なんて対策しなくていいからさー。私の実力に任せてマックにいこーよ?


相手は去年準優勝で神の機体だよ?』


メガネ『神の機体は出ないと思うよ。おそらくサブマシンのスパイダーの方』


愛奈『なんで分かるの?』


メガネ『あのチームは去年の雪辱を果たすために決勝戦まで神の機体を温存すると思うの。


この大会では手の内をばらせばそれだけ不利。神の機体のバージョンアップ版を


初陣をぎりぎりで勝利した無名の中学生相手に出すなんて考えられない。


まだ二回戦だし』


愛奈『スパイダーの方だろうけど、あれだって無敗だよ?』


メガネ『でも愛奈ちゃんの夢でしょ?この大会』


愛奈『夢だけど、相手が悪過ぎるよ。出場が夢とは言ったけど


優勝が夢とは言ってないもん』


リボン『ところでメガネちゃん、次の試合の対策を教えて?』


メガネ『OSを耐電のゴムでコーティング。


前の試合みたいなしっぽが生えるシステムを導入。


しっぽの素材は銅でボディカウルの内側をはわせる。


愛奈ちゃんが体操部だからその身体能力を生かして


モーションキャプチャーシステムを導入。


かかとに小さいニードルを接着。


以前に話したリーチモードの導入。


以上。』


メガネ『うん。分かった!』


愛奈『リーチモードって聞いた事ないよ?』


メガネ『リーチモードは変形して


手足を長くする事で相手に攻撃を届きやすくするモードの事。


相手の機体が小さければボディを打たれずに、相手のボディを攻撃できるの。』


愛奈『ふーん。じゃあ最初からそのモードでやるの?』


メガネ『ううん。リーチモードは激しく電池を消耗するから


試合中に電池切れになる恐れがあるの。


さらに伸びた部分の装甲は無いから防御力も下がるの。関節の負担も多くなるから


状況に応じて使うかもしれないといったシステムなの。


あと、リボンちゃん、リチウム電池をなるべく増やして欲しいの』


リボン『もっと増やすの?これ以上重くして激しく動くと関節が壊れるかも?』


メガネ『相手が相手だから。


もしリボンちゃんに壊れてもいいと思う気持ちがあればお願い!』


リボン『うん。考えてみる』


愛奈『ふーん。なんかお金いっぱいかかりそう。無理言ってごめんね・・』


リボン『こっちこそごめんね。冷蔵庫に冷たい飲み物買ってあるから自由に飲んでね!』


○冷蔵庫を開ける愛奈


愛奈『あー!マックシェイク!』


リボンとメガネ『(笑)』


○試合会場のプレイヤーベンチで相手の機体を気にする3人。


メガネがオペラグラスで相手の機体をみる


愛奈『ここからだと神の機体かスパイダーかわからないね。もともと形も似てるし


しかし、ちーさいよね。うちの機体の半分しかないよ』


メガネ『スパイダーの方ね。手の所に穴がある。


小さいのはスピード重視って事。攻撃を受ける事は考えていないはず』


愛奈『今回の作戦は?』


メガネ『タイヤが8つあって、4つ動いている時は残りの4つが少し浮いていて


直角に曲がる事もできるからクモのように早いの。


手の穴からは速乾性の粘液を放出するから


出したらすぐ離れてね。相手の背が低いからミドルキックでジェット噴射を使ってね』


愛奈『うんうん。まかせてー』


○相手チームのプレイヤーベンチ


生徒『なぜ、今日になって神の機体を使う事にしたのですか?


相手は数秒で倒せる中学生。相手の支持票は3票。僕らは2608票。


納得がいきません!』


顧問『神の機体を去年同様の戦い方で使えば去年優勝のチームは、何だ去年と一緒か、と


油断するだろう。それが狙いだ』


生徒『なるほど!さすがは先生!分かりました!』


○モーションキャプチャーシステムにコントローラーが変わり


側転から宙返りでリング中央に向かう愛奈の機体。観客席からどよめき


リボン『関節やられるからそのくらいにしてね。』


愛奈『いざという時にこれが使えるように移動距離を測ったの』


メガネ『さすがね。普通のコントローラーならこんな事はできない。


動きがなめらかだから、関節負担も少しはましだと思うけど。


ただ、前回みたいなジェットキックが決まるかどうか』


相手の生徒『前回よりずいぶん身軽になりましたね。


中高生クラスで宙返りできる機体は初めて見ました』


相手の顧問『無駄なデモンストレーションだな』


アナウンス『それでは南中チームと聖山高校チームの二回戦を行います』


○ビーーーという開始の合図


○開始と同時に八方向に付いた車輪で素早く愛奈の機体の背後に回り込む。

背後を取った状態で相手の機体の手のロッドが伸びて愛奈の機体の背中に当たり、

雷が機体を包む


○転んだ愛奈の機体の背部からは煙


○相手チームのプレイヤーベンチ


生徒達『おっし!決まったー!』


顧問『3秒か。予定通りだな』


○プレイヤーベンチの前で倒れる愛奈


愛奈『あいたたた・・。モーションキャプチャーって機体と同じ格好になるんだ』


メガネ『神の機体?』


リボン『スパイダーってこんな事したっけ?今の光はなんだかわかる?』


メガネ『あれは熱プラズマで雷と一緒。温度は約1万度。


電流は家庭用電流の約80倍くらい。


そんな電流が流れたら電気製品はすぐに壊れちゃう。


一応耐電加工しておいて良かった』


○起き上がる愛奈の機体


生徒達『ええ!?』


顧問『ん~~。耐電加工でもしたか?ならばかみつけ!』


○相手の機体のタイヤに囲まれた部分からジャンプ用の脚が出現、


愛奈の機体のショルダーカウルに大きな牙を出してかみつき液体を流し込む


愛奈『きゃああ!』


○愛奈の機体の足元に溶けたゴムがどろっとたれる


顧問『やっぱり耐電加工!もう一回プラズマいけ!』


生徒『はい!』


○再び愛奈の機体は光に包まれる


○揺れる愛奈の顔のアップ


愛奈『きゃあああ!』


○煙を出しながら倒れる愛奈の機体


○後ろの生徒の方を向きながら話す顧問


顧問『今度こそOSに電流は流れたな。1分か、以外にやるじゃないか』


生徒『せ、先生!見てください!』


顧問『ん?』


○煙を出し、よろけながら立ちあがる愛奈の機体


愛奈『やっぱ、めちゃめちゃつよいわ!左腕が動かない』


顧問『どうなってるんだ!?』


○愛奈の機体の足元にしっぽがたれ下がるのを発見


顧問『あれか?あんなのあったのか?』


生徒『途中から生えたみたいです』


リボン『相手が速すぎて何にもできないね』


メガネ『避雷針を使っても完全には防げないね』


愛奈『ねえ!うごかない!?』


メガネ『え!?リボンちゃんタイム!』


○目の前のタイムボタンを押すリボン


○マシンに駆け寄り、リボンが装甲を外し、パソコンと線でつなげるメガネ


メガネ『おかしい。左腕はモーションセンサーが故障してるけど、OSは正常。


とりあえず普通のコントローラーに戻しましょう!


そうすれば左腕は回復するから』


愛奈『でも最後は何も動かなかったよ?』


メガネ『・・・OSが正常なのに動かない?通信妨害?


愛奈ちゃん、通信モードのスイッチを高周波にずらしてみて』


愛奈『うん。あ、動く!』


メガネ『やっぱり。高周波モードも作っておいて良かった。


外国の試合で通信妨害プレイを見たから。』


愛奈『高周波モードってなにー?』


メガネ『機体のモーション通信で使っているのは携帯電話と同じ900メガヘルツ。


その電波は1秒間に9億回波を打つの。でも高周波モードは


電波法で許されている限度の300万メガヘルツ。


1秒間に3兆回も波を打つから電波は捕えられないはず。


その分電池を激しく消耗するから電池切れに注意ね!』


○相手のプレイヤーベンチ


生徒『動いてます。妨害してるはずなのに』


顧問『相手はまだ二戦目だよな?大学生でもついているのか?』


生徒『どうしましょう?』


顧問『ん~。妨害電波装置はオフでいい。電池の消耗を防げ。


油断をしていると何をするかわからんからプラズマロッドを捨てろ』


生徒『ロッドを捨てると言う事は最終手段ですか?』


顧問『そうだ。機体は予備がある。壊れてかまわんから全力でいけ!』


生徒『はい・・』


○試合再開早々ミドルキックの体制に入る愛奈の機体


愛奈『えい!』


○素早くかわす相手の機体


生徒『そんなキック、前動作でみえみえなんだよ!前の試合みたいに決まるほど


うちの機体は遅くはないぜ!』


顧問『神の機体と言われたうちの機体をなめてるな。』


愛奈『こんなに早くちゃ当たらないよ!』


○高速で愛奈の機体の周りを旋回して手のロッドを外して糸を放出、ぐるぐる巻きにする


愛奈『え?なんで神の機体なのに糸だすの?』


メガネ『スパイダーの機体を合体させてる・・新しい神の機体』


愛奈『だめ!腕が動かない!』


顧問『しっぽにプラズマを食らわせてやれ!プラズマは溶接にも使われるほどの高温だ!


しっぽをはずしてやれ!ある程度感電もするはずだ!』


生徒『ロッド無しのプラズマはこっちも感電します!』


顧問『こわれても構わんとさっき言ったろ!!!判定なんかに持ち込まれてたまるか!』


生徒『は・・はいっ』


○しっぽを溶かし始めようと愛奈の機体を裏返す相手の機体


リボン『なにかするよ?』


メガネ『電池持たなかったらごめんね!愛奈ちゃん!リーチモード入れて!』


愛奈『うん!』


リボン『今!?』


○全身が伸びて巻かれた糸がちぎれる


○あっけにとられる相手チーム


顧問『なんだありゃ・・・。変形もするのか!』


愛奈『脚が曲がらない!』


リボン『関節に連続負担、高熱で損傷!電池も無いから早く決めて!』


顧問『向こうの脚の動きが変だな!よし!正面から止まるまでプラズマ攻撃を続けろ!』


メガネ『くる!愛奈ちゃん!右足逆噴射!』


リボン『逆噴射!?』


愛奈『え?逆?これかな?』


○愛奈の機体のまっすぐな脚がジェット噴射で逆回転。


相手の機体上部をかかとのニードルで大破


愛奈とメガネとリボン『やったーー!!』


○場内は大歓声。観客は驚きの表情


観客『すげえ!神の機体を倒したぜ!』


○静まりかえる相手チーム


生徒『動きません』


顧問『・・・』


アナウンス『ダウンです!聖山高校チームの機体があと10分で動き出さない場合は


ゲームセットとなります!』


○給水車のノズルを放水用に付け替えるメガネ


○ジャンプして喜ぶ愛奈


○唖然としながらぼーっとするリボン


リボン『勝ったの?本当に?』


○相手チームのベンチ


生徒『機体を見てきましたけどOSの所が・・・タオル入れましょうか?』


顧問『くくく』


生徒『?先生・・』


生徒『先生、大丈夫ですか?』


顧問『くはははは!』


生徒『!?』


顧問『モードスイッチをBに入れろ!これは神の機体だ!頭部が弱点の訳がなかろう!


もう一つのOSと通信機は前回とは違う所にある!


さらに地球上で最も硬いカーバインでコーティングしてある!


硬さはダイヤモンドの3倍だ!


どんな攻撃でも中枢は壊せぬわ!ふははははははっ!』


生徒『ああ!再起動しました!しかし、脚部損傷!少ししかうごきません!』


顧問『プラズマでの故障だろ!かまうな!少しでも動けばダウンは解消される!


あと数分で試合は終わる!立ってりゃ判定勝ちだ!寄ってきたらまたプラズマをくらわせ!


相手も関節が曲がらないからまともには動けん!』


生徒『タイムは取らないんですか?』


顧問『タイムを取ってポイントが10も減ったらさすがにまずい!


判定でもいい!勝つんだ!神は負けない!だからこその神だ!』


生徒『わかりました』


アナウンス『聖山高校の機動を確認。試合を再開いたします!』


○場内からは割れんばかりの歓声


○愛奈のアップ


愛奈『うそ・・・なんで?』


慌ててパソコンを覗きこむリボンとメガネ


メガネ『電池、最後まで持たないね・・・。ごめんね』


リボン『え?いいよ!判定まで持たせても有効攻撃数は大きく負けてるから。


もうタイムもできないし、ジェット攻撃もルール上使えないし』


○左腕の二の腕のキャプチャーモードボタンを押す愛奈


愛奈『動く。でも、キャプチャーモードだと左腕の通信機が壊れてるから


右腕1本か・・脚も曲がらないし』


○天を仰ぎ、目をつむり、体操の試合を思い出す愛奈


○床体操の選手のように右手を高々と上げてから深呼吸して走り出す愛奈


○黙ってそれを見つめるメガネとリボン


○側転しながら床に片手で手をつき、バックの宙返りで相手の機体にななめから着地


○驚く相手チーム


顧問『なんだと!!!』


○激しく蹴りつけられた相手チームの機体は場外に落ちる


○静まりかえる場内


アナウンス『聖山高校の機体が場外に出ましたので、南中チームの勝利となります!』


○大にぎわいの観客席


メガネ『うそ・・』


リボン『あの子、モーションキャプチャーで・・』


生徒A『・・・まるで、今試合が始まったかのような動きだ』


生徒B『あんな化け物みたいな機体見た事ない』


顧問『嘘だ。何かの間違いだろ?あんな動き出来るわけがない!』


○試合後にマクドナルドで乾杯する3人


リボン『片手で演技の練習とかしてたの?』


愛奈『ううん。危ないからしないよー』


愛奈『賞金また200万入ったからいっぱい頼んでいい?』


○半笑いで見つめ合うメガネとリボン


【4話と5話】

※ファイルが見つかりませんのであらすじを書きます。


4話のあらすじ

次の試合までに機体を修理できない愛奈チームは一時試合の放棄を考えるが

メガネの提案で放水車をチューンして参加。

ハイドロプレーニング現象を用いて相手に触れずに勝利。


5話のあらすじ

マトリョーシカのように分裂する機体に苦戦する愛奈チームだが

新装備のロケットパンチで勝利。


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