第六話

俺は今日もいつものように部室のドアを開けて中に入る。

「おーっす」

「今日のパ○ツ何色?」

「うちはピンク~」

「僕は水色~」

「我は深淵の漆黒」

「なんで新入生まで参加しとるん」


「ん、そういえば大戸は今日はいないのか?」

「今日は学校自体休んでるぞ」

「なんか風邪引いちゃったらしいよ~」

「そうなのか」

「なんだ?気になるのか?いないと寂しいか?」

「そういうんじゃなくてだな」

「形容しがたい胸の内、ということだな、主(マスター)」

「いつから俺は君のマスターになった」


「でもまあ、風邪っつーのは心配だな」

「ほら、やっぱりそうなんじゃねーか!」

「それじゃあ、お見舞いも兼ねてみんなで様子見に行くっていうのはどう~?」

「いや、だったらこいつを一人で行かせてラブコメ展開を期待するに決まっているだろ!」

「弱った一輪の薔薇とそれを擁護する雄牛...男女の匂いしかせぬな」

「あいつが昨日触った食器類に菌が付いてないか心配だ」

「お前は薄情すぎか」


「真面目な話、お見舞い行ってあげた方がいいと思うな~」

「東条が初めて部長っぽいことをしようとしてるだと!?天変地異がおこるぞ!?」

「浩大くんうちのことなんだと思ってたの~...」

「え~、でもラブコメ展開は捨てがたいぞ!」

「大丈夫~、きちっとお見舞いした後で浩大くんだけ残して帰るから~」

「おい、見直したと思った俺が馬鹿みたいじゃねえか」


と、いうことで大戸玲菜宅。

「ピンポーン」

「はーい」

がちゃっ。

「あら、わざわざお見舞いに来てくれたの?同級生かしら」

「...え?えっと、玲菜のお母さん...?」

「ええ、そうよ、どうぞ上がってって」

(乳がでかい!!!)

「ああ、部活のみなさんね」

(乳がでかい!!!!!!!)


「れいちゃ~ん?部活のみなさん方がいらしたわよ~」

「!!?!??!!げほっがほっ....」

「あらあら、大丈夫?」

「けほっ...なんで皆さんが...」

「玲菜ちゃんいないと部活さみしいから皆でお見舞い行こう~ってね~」

「そんな突然押しかけられても...」

「またまたー、本当は嬉しいくせにー」

「お前は調子乗りすぎだ」


「じゃあお茶淹れてくるわね」

「...玲菜」

「なんですか?」

「親子でも似てない部分ってあるんだな」

「???」

「同情するよ」

「よく分からないけどぶっ殺しますよ?」


「...ていうか、そんなに近くにいると、風邪移りますよ?」

「だから俺は最初っから近寄ってないけどな」

「ああん?お前薄情すぎんだろ、こういうときは移るの覚悟で看病してやるのが普通だろ!?」

「でも本人もああ言ってるしだなあ...」

「それは社交辞令だよ、そんなこともわかんねえのか?」

「なんかつっこみ役が入れ替わってるね~」

「けほっ...おもしろいから暫く見てましょう」


「桜田さんは人の心を読むのが苦手なんですね。意外です」

「そ、そうなのか?俺は自覚ねえけど」

「いつもつっこみばかりさせちゃってたからね~」

「ていうか周りに変人ばっかだからじゃないか?」

「お前もその変人に含まれていること忘れるなよ?」

「僕だってそのぐらいの分別あるに決まってんだろ」

「急に真面目になるなよ調子狂う」


「じゃあ私たち帰るねえ~」

「はい、わざわざありがとうございました」

「気にすんなって。あ、お前は一人残れよ」

「なんでだよ」

「ラブコメ展開」

「まだ言うか」


「私からもお願いします」

「!?」

「ほら、玲菜もこう言ってることだし」

「なっ...大戸、どうせ冗談だろ??」

「話したいことがあるんです」

「ひゅーひゅー」

「うっせ!!」


結局俺だけが残り、あとは退出。

「...で、用ってなんだよ」

「ラブコメ...」

「お前もかよっっ」

「ふふっ、冗談ですよ」

「...早く治せよ」

何気なくチビの頭に手をのせて撫でる。

「...はい」

大戸は熱でピンク色の顔で笑いながら俺を見上げた。


「まんざらでもねえかもしれねえなあ」

俺のいない場所でかりんたちはそう呟いた。

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