第5話 子供とLARPゲームを遊ぶことの楽しさ

 子供とLARPゲームを遊ぶ。

 最初に想像するのは、チャンバラやおままごとかもしれない。LARPは実は、そこもカテゴリとして内包しているのではと、著者は考える。

 ならば、だ。

 子供とLARPゲームをすることも、可能ではないか?


──答えはもちろん、「YES」なのである。


 元々LARPゲームが流行っている海外(特に発祥地である北欧)では、子供たちの参加も盛んだったりする。中には、なんと子供をLARP合宿に行かせて、その期間の間、夫婦水入らずで過ごす(!)、なんてこともあるそうだ。


 レイムーンLARPでは、親子での参加も視野に入れていた。北欧でそこまで人気ということは、日本でも起こり得る事象と感じたからだ。そのため、同意書には子供が来る場合の可能性も考えた以下のものを定めている。


・同意書について全文同意して頂く。

・未就学児の参加はご遠慮頂く。

・小学生の 参加は同意書に保護者の署名捺印と保護者の同伴が必要。

・中学生以上高校生以下の参加は同意書に保護者の署名捺印が必要。


 さらに、同意書外のことも視野に入れる必要があった。それは、大人の表現を用いる場合(暴力表現、麻薬、娼婦などの水商売について、その他子供に見せるのにちょっと考える必要があるもの)だった。ここについては、保護者の方とよく相談し、同意を得ることにした。


 レイムーンLARPでは、過去に小学三年生の男の子がプレイヤーとして参戦している。その際はゲームをするにあたり、以下のことを保護者の方と確認した。


・暴力表現、麻薬、水商売関係の施設がシナリオに関わること。

・あくまで「小さな大人」 として他の大人と変わりなく扱うこと。


 特に後者は、「子供だから彼だけ特別扱いで謎解きなどを優しいものに」という配慮をしないということだ。これは賛否両論あるだろうが、レイムーンLARPでは配慮するとキリがないことと、スタッフの負担を考え、 サークルの基本方針としている。(ここについてはあくまでレイムーンLARPの方針であり、サークルの方針次第では積極的に配慮しても良いと思う)


 例えば、彼のキャラクターが試練イベントに遭遇した時の話だ。

 突然真っ暗な中に罪人が現れ、剣が目の前にぽんと一本、無造作に置かれる。この罪人の罪を聞き、裁くべきと自分で判断したら剣で殺し、裁くべきでは無いと判断したら剣を置け、という試練だった。

 この試練は罪人を裁くかどうかがポイントではなく、自分のキャラクターとして信念を持って行動したかが試練クリアの基準となる。小学三年生の男の子に、この選択はやや酷ではあったかもしれない。

 罪人は縛られながら、首を垂れて、語り出す。


「俺の村は飢饉なんだ。食べ物が無く、飢えで人が死んでいる。俺という食扶持がいなくなれば、その分、命を救われる村人たちがいる。だから俺は殺されるんだ。それでいいんだ」


 しかし、男の子は臆することなく、多少考えつつも、剣を置いたのだ。GMは彼にその理由を問うと、彼はたどたどしく言葉を紡ぎながらも、こう答えた。


「この人が死ぬことは無いと思う。きっと、他の方法があるから──」


 俯いていた顔をぐっと上げて、彼は強く頷く。


「だから、村の人たちと一緒に、たくさん考えて、話し合えばいいと思う」


 この答えは、当時のスタッフ、そして参加者全員にとって、衝撃的な結果だった。小学三年生、齢にして10歳の子供が、きちんと自分の頭で悩み、考え、行動して決断したのだ。

 これは未だ子供を持たぬ著者ですら、目頭の熱くなるイベントだった。それ以上に、保護者のお母さんが感激していたのは言うまでも無い。そこにあるのは間違いなく、子供しか織りなせない一つの「ドラマ」だったのだ。安易に子供向けに変更しなくてよかったと、心から安堵したものだった。


 それから、小学生、特に低学年の子供と一緒にLARPゲームをする場合には、例え他の大人と区別なく対応するとしても、1つ気に掛ける必要がある。

 それは、大人と子供の集中力の長さの違いだ。


 LARPゲームの他にTRPGで子供たちとセッションしてきた著者の経験から言うと、個人差はあるものの、総じて子供の集中力は大人と違ってかなり短めに感じる。3~4時間などの長時間のゲームになる場合は特に、以下のポイントに気をかけておく必要がある。


・集中力が切れて眠くなり、体の動きが鈍る

・退屈になってしまって他の事に興味を持ち始める(ゲームと関係ないことを喋る、関係無い物に触り始める)


 これらが始まると、集中力が無くなってきたサインだ。放置していると事故の元になるので、この場合は、以下の事が有効だった。


・いったん休憩時間を設け、軽く飲食などをする。

・保護者の方に対応してもらう。


 どのように対応すれば良いかは保護者の方が一番よく分かっているので、ゲーム中でも異変を感じたら遠慮せず相談するようにした。場合によっては眠ってしまったり、疲れたりして退場することも視野に入れておくと良いかもしれない。


 また、当然の事だが、大人と子供の力と体格の違いは雲泥の差であるため、そこもよく加味した戦闘などを設けると良いと感じた。逆に、子供であることを活かせるシナリオギミックはあっても良いだろう。


・体格が小さいから特定の場所に入って他のプレイヤーを助ける事が出来る。

・体格が小さいから、隠れると見つかりにくい。

・大人のNPCとしゃべる時に油断を誘える。


 大人と同様には扱いつつも、あくまで小さな大人として接するなら、体格や容姿を武器にできると、それはそれでLARPゲームらしくなる。どうしても実行動でハンディキャップを背負いやすい分、ここで大人よりも活躍できると、子供のモチベーションは大きく上がるようだ。


 それから、ゲーム中に遠慮してしまってトイレや体調など口に出せなくなる子もいる。大人より少し、気にかけるようにすると良いかもしれない。


 子供とLARPゲームをしてみた感想の総括として、発達途中の段階にある子供たちは、大人たちと違いがあり、または同じ部分がある……そのどちらも尊重するべきだということである。違いを分かってあげて、一緒に行動すると、子供も大人も負担がぐっと減るだろう。

 その上で、我々が衣装を着て剣を振るたびに「いいなぁ」とキラキラと目を輝かせる子供たちが、憧れたそれと同じことができるなど、どれだけ豪華で嬉しいことだろうか。

 子供たちといつか、思いっきりLARPゲームをしてみたいと、著者は夢見ている。夢は見たっていい。


 思えばこのレイムーンLARPも、夢みることから始まったのだから。

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