第1話 五感を刺激する!
LARPといえば、五感で体験することだと筆者は感じている。
もし、演出に疑問が出てきたら、一度「五感で感じられているか、どうか」立ち返ってみると、良いシナリオができるものだ。
野外LARPをやってみて、私の認識は大きく変わった。木々の匂い。冷たい風が肌を吹き抜ける感触。土の感触。土の匂い。頭の上には空。それらを感じたまま、キャラクターとして発言し、行動する。それはなんと面白い事か!
日本ではまだまだ認知度が低いため、屋内でLARPゲームをすることが限度かもしれないが、やはり野外LARPが真骨頂なのだと感じる。野外LARPを体感してからは、五感で感じられるイベントが随所にあるようアイディアを練るようになった。
レイムーンLARPの実例としては、次の演出が挙げられる。
・真っ暗にし、参加者の明かりのみで部屋を探索してもらう。
・真っ暗の状態で、BGMを流す。例えば、洞窟内で響く水の滴りや、夜の森の音
・姿の見えない敵NPCを出し、肉眼ならぬ「肉耳」で直に足音を聞いて方向を示してもらう
・たくさん布を広げて床に置き、布を沼に見立てて実際にかぶって中に入り探索してもらう
・言葉の話せない元人間の小鳥とコミュニケーションをとるために工夫してもらう
・体力が回復するアイテムとして特別な干しリンゴを食べてもらう
・敵NPCかどうか分からない敵が注いだお茶を飲むかどうか判断してもらう
今の所、五感の内の視覚、聴覚、味覚は実際にゲームに取り入れた。嗅覚は施設で部屋を借りるゲームだと厳しいが、以下の演出でなんとかクリアーしたものもある。
冒険者の部屋という体裁で、椅子と机を使ってベッドや棚を作り出す。その際に、ベッドの場所に白い布を、シーツという体で置いておく。そのシーツに、こっそり練り香水を付けておくのだ。そうとも知らない冒険者たちは部屋を探索するのだが、シーツの横を通るとGMが隣で囁く。
「君は、何やらベッドの方向からふわっと香りがしたように感じたよ」
「え? ベッド?」
意外な顔をして、シーツに顔を押し付ける冒険者。くんかくんか。確かに香水のような、良い香りがするわけだ。そしてこのベッドは、「男性の」冒険者の寝ているベッドで…
他の冒険者たちが怪訝な顔をして、ベッドに集まってくる。
「どうしたんだ?」
「このベッド…いい香りがする…」
「なんだと…!?」(ざわっ)
「バートに女が…!?」(ざわっ)
「おいバート(ベッドの主の名前)、いつの間に女を連れ込んだんだ?」
「俺は知らん! 俺は無実だー!?」
こんなやり取りが繰り広げられたりする。これだけで1つのドラマが生まれるのだ。本当に香りがする、しかも練り香水だから、そこまで香りが広がらない。施設内でも使える良い手だったと思う。
施設の中だと言っても、五感を感じられないとは限らない。工夫次第で、そこには無限の可能性が秘められている。そう筆者は思うのだ。
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