第2話 集る生徒会
小春が生徒会に入ると話して数日が経った。
会長に小春のことを聞くと、まだそのような話しは来ていないらしい。
あの時のことは、ただの冗談だったのだろうか?冗談って態度でもなかったから、今に来るだろ。奈瑠のことは、小春に頼めば安心だと思っていたけど……
小春なら「はいはい。いいですよ」くらいでOKしてくれると思ってた。
小春が生徒会に入るなんて、奈瑠が一人で料理して出迎えてくれるくらいの驚きだった。
「東城君、手が止まってるわよ。仕事は、まだまだあるんだからね」
未琴が、後ろから書類の山を俺の目の前に積み上げた。
生徒会の活動時間、放課後はいつも生徒からの要望や先生からの雑務等に追われる。
4月は、新たな部の申請やら備品購入の申請が多く、猫の手も借りたい忙しさだ。
「悪い悪い、考え事してたから。そっちは終わったのか?」
未琴の方を見ると書類は綺麗にまとめられ、机の上に鎮座している。
「あなたがぼーっとしているしてる間に終わっちゃったわよ。その書類そんなに手間じゃないんだからさっさと終わらせるわよ」
山になった書類を指差すと、俺の横に腰掛け書類を淡々と処理して行く。
俺も書類に手を掛ける。ペースも速くこの調子ならすぐに終わるだろう。
30分後、書類は事無く終わる……はずだった。最後の1枚の申請書を除き、他は綺麗に終わった。
「こ、これは……」
俺は一枚の申請書を見つけていた。申請内容は、生徒会加入申請書。
書いてある名前は、よく知ったものだった。
『宮野小春』
なんでこれがこんなところにあるのか、この手の申請書は直接会長の渡るか、先生から会長に渡されるはずなのだが、未処理であるということは、会長も目を通していないだろう。
「か、会長。生徒会加入申請書が混ざってるんですけど……しかも、申請日先週なんですけど」
申請書は、小春が生徒会入会宣言の翌日、約1週間弱、放置されていたようだ。
「えぇ!!私みてないよ~」
あわあわと慌てふためいて申請書を手に取る。そのタイミングとほぼ同時に、生徒会室のドアが開いた。
「邪魔するぞー、望月いるか?」
ドアの方を見ると、生徒会顧問の
先生は、20代後半でまだまだ新人だと言い張る、学園のOGらしい。口調は少々荒いが悪い人ではない。まぁ性格も多少荒いけど……
「はい、いますよ。どうしました?」
会長は、申請書を持ったまま先生に近づくと
「あぁ、それそれ。この前、申請書持ってきたんだけど誰も居なかったから置いておいたんだけど、申請結果が出てないって宮野から聞いたんだが?」
先生は、申請書をホイっと回収し申請書の印と書いてある部分を指差す。
「望月、ここに判子くれ、押したら貰っていくから」
会長はばたばたと判子を取り申請書に押した。
とりあえず、これで問題は一つ解決と息をついた時、鏡先生が
「あっ、そうそう、申請結果遅いからって、宮野今来てるんだわ。あいさつもしたいからって」
廊下で待っていた、小春がひょっこり顔を出し入ってくる。
「1年2組の宮野小春です。この度は、生徒会に入らせて頂くことになりました。 先輩方のお力になるよう頑張って行きます」
いつもになく真剣で、ぎこちない雰囲気で挨拶を済ます。
「そ、そんなに固くならなくていいよ~明人君から話は聞いてたから」
会長が小春の緊張を解こうと優しく声を掛ける。
「あっそうですか?なら、普段通りにしますね。あぁ、なんか堅苦しいのは嫌ですね。先輩、せっかく顔まで出した後輩にお茶くらいないんですか?」
小春は気楽になったと言わんばかり体の力を抜き柔らかい表情になって、俺のことを先輩扱いすることも無く、お茶を要求してくる。会長と未琴は小春の変貌に言葉を無くし固まった。
「宮野、ほどほどにしておけよ。私は生徒会顧問だが生徒会の人間関係には口出さんからな」
鏡先生は、そういい残すと申請書を持って去って行った。
「あ、明人君、小春ちゃんっていつもはこうなの?」
「そうですよ、あれが普段の宮野小春って人間ですよ。心配しないでください。俺に対してはあんなんですけど、根はいいやつなんで」
会長がおろおろと俺に近づき聞いてくるのを軽く返した。
「ではでは、改めまして宮野小春です。えーっと奏さんと未琴さん、これからよろしくお願いします」
ぺこっと頭を下げ普段の小春が挨拶をした。あんなにおろおろしていた会長は、落ち着きを取り戻し
「うん、よろしくね。小春ちゃん」
未琴は……まだ固まっていた。
それから、未琴が遠いところから帰ってくるのにしばらくかかった。
未琴には一応、小春のことを再度説明したら落ち着いたらしい。
これで、会長と未琴が小春のことを少しは分かってくれたみたいだ。
まぁ小春のことは、知らない仲でもないし、これからの生徒会で、助けることも助けられることもあるだろう。小春は、あんな性格だし会長や未琴ともすぐに馴染んでいけるだろう。
生徒会の仕事が終わりみんなで帰路に就く。いつもは、3人で帰っていた。会長と未琴は駅から少し行ったところに住んでいるらしい。俺はその駅から会長たちとは別方向に15分くらい歩いたところである。今日は、小春も加わり4人で駅まで歩き、そこで別れた。小春はそこからバスで自宅まで向かい、そこからは俺は一人で歩く。少し寂しい感じもあるが、もう1年以上歩いていると慣れてきた。
ふと思う。奈瑠は、いつもどうなのだろうか。駅まではそこそこの生徒が来るため友達と帰ることもあるだろう。しかし、その後は、一人なのかはたまた同じ方向の友達がいるのだろうか。日も沈みかけ夜を迎えようとしている空の下をとぼとぼ一人歩く。奈瑠のことを考えながら。
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