第407話 何でもかんでも禁止しない

水面に映ったその顔は~♪

精なく、切なく、情けなく♪

髪は灰色、目の下くまくま♪

顔色悪くて老け面よん♪



「―――何と酷い顔だ・・・作者の顔に匹敵するほど酷い。」


呂布は水面に映った自身の顔を見て愕然としてしまった。


「俺はいつの間にこんなに老けてしまったのか? 眼のまわりは青黒く、しわも増えてしまっている。」


彼はうめいた。

マッチョでタフガイでボディビルダーでムキムキでガチムチでコマンドーである男の顔とは到底思えないほどの酷い顔。


「何故このようなダメ人間の顔となってしまった?」


彼は唸りながら考えた。自身の日頃の行いを。

そして、一通り考えた後、彼は一つの結論に達した。


「そうだ!酒だ!酒のせいだ!酒の毒にやられたのだ!」


「酒は百薬の長でもあるが、飲み過ぎればポイズンになる!暴酒が俺の肉体を蝕んだのだ!」


「断然!酒を断つ!!」


単純。すごく単純である。

酒が悪いと決めつけた彼は禁酒を誓った。

しかも、


「俺だけではない!城内にいる全ての人間は今日より禁酒だ!」

「酒を一滴でも飲んだ者は打ち首、獄門、腹切り、切腹だ!」


「全兵に伝えい!『禁酒開始ッッッッッ!』とな!!」


他人を巻き込むという暴挙に彼は出てしまった。


「「「はぁ~~~??? そりゃないってばよ!!!」」」


当然、命を受けた将兵たちからは不満の声が上がった。

しかし、命を下した大将である呂布に文句が言えたのかと言うと・・・言えなかった。


「なんや!文句あるんか?オォン!!」


と彼が睨みを利かせて凄むと、皆、怯えた子犬のように縮こまってしまった。


「コレで良し!酒を断てば元気百倍!勇気凛凛!1000000%の力が発揮できるようになる!・・・はずだ!!これで城内の士気も上がろう!!!」


禁制による肉体と士気の向上。

禁制を布くことで、彼は物事の全てがプラスに働くと思った。

マイナスがゼロに近づき、ゼロを超えてプラスになると彼は思った。

しかし、それは甘い考えである。


『禁することはマイナスを生む。』


禁制により生まれたプラスよりも、禁制により生まれたマイナスの方が大きかったことを、この時の彼は知る由もなかった。

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