第354話 大事の前では真面目でいよう

 上手に敗れました~~!


 と言う感じで、張繍軍は曹操軍に敗れ、宛城へ引き返すと、防備を固めて籠城の構えを取った。

 曹操側はすかさず城攻めを開始したので、これにて攻城と籠城の形態に入ったわけである。


 ここで、籠城側は新手の戦術を披露した。

 城壁を登り来る寄手に対し、煮えたぎった熔鉄ようてつを振りまく。


「うぎゃあああああぁぁぁぁぁぁぁ!あちいいいいぃぃぃぃぃぃ!死ぬぅぅぅぅぅ!」


「溶けるぅぅぅぅぅ!溶けちゃうのぉぉぉぉぉ!も、燃えぇぇぇぇぇ!」


「いやぁぁぁぁぁぁ!熔鉄をかけないでぇぇぇぇぇ!かけるならぁぁぁぁお湯で薄めたローションにしてぇぇぇぇぇ!!」


 溶鉄か人間かも判断できぬ死骸が、バラバラに落ちては壁下の空濠からぼりを埋めていく。


 しかし、曹操軍は怯まない。


 「攻めていくんだピョン!」と、曹操の部下たちは次々と壁に駆けて行き、曹操も自ら、


「ここを突破して見せん!!」


 と、西門に兵を集中させ、徹底的に城を攻めた。


 その西門攻めは三日三晩に続いた。


 梯子を駆けては登り行き!

 壁上に向かい矢を放ち!

 油の投げ柴!炎の投げ松明!・・・炎の投げ松明!


 あらゆる戦術をもって仕掛けてくる怒涛の攻城により、張繍の防ぐ力が緩んでいく。


「いかん!いかんぞ、賈詡!何とかしてくれぃ!!」


 軍師たる賈詡に名案を乞う張繍。

 そんな慌てる張繍とは違い、賈詡は至って冷静で、


「テハハハハ。ご安心めされよ、張繍様。この戦・・・勝てますよ。しかも、余裕で。」


「なにっ!? 余裕で勝てるだと!!」


「はい。私の頭の中には既にゴールへの道が描かれております。この戦、必ず勝てます。」


「・・・本当か?」


「テハハ、張繍様は私を疑うのがお好きなようですね。・・・まぁ、その理由は良くわかりますが・・・テハハハハ~ン!!」


 大事においても、いつもと変わらぬ妙な笑い声を上げる賈詡。


 彼の言葉は偽りか真か?


 賈詡の真意が分からぬ張繍は、疑いの眼で彼を見つめるのであった。

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