第321話 先の道は見えない

溜まりに溜まったうっぷんを!

晴らしに晴らしてハラスメント!

復讐、リベンジ、アベンジャー!

張繍一味が御成敗!!



 張繍軍は曹操軍を徹底的に叩きのめした。

 この戦いにて典韋は戦死。

 張繍軍は勢いに乗って曹操のいる屋敷へと侵攻した。


「――――曹操がおらぬ!!」


 曹操はすでに屋敷にはいなかった。

 彼の部屋には鄒氏だけがおり、他には姿なく、もぬけの殻であった。


「典韋を仕留めるのに手こずり過ぎたか・・・すぐに追いかけるぞ!!」


 兵たちは機敏に動き、逃げる曹操を追いかけて行った。



「――――空しくこんな所で私は死なぬ・・・。」


 甥の曹安眠との二人で逃げる曹操。

 あまりにも急ぎで逃げたため、彼の傍には甥以外の人間はおらず、馬の足音以外の音は聞こえなかった。

 しかし、・・・


「・・・足音が増えた・・・これまでか・・・」


 背後より敵の騎馬兵が迫りくる。

 追いかけながらピュンピュン矢を放ってくる。

 その矢は曹安眠の乗っている馬に当たり、馬は転倒、彼は落馬して地に強く叩きつけられた。



「うっひょーーー!獲物じゃ!獲物じゃ!えもももも!!」


「叩け!叩け!殺せ!殺せ!ピョンキレ!ピョンキレ!!」


「現世は終了!来世にご期待!円環の理に逝ってらっしゃ~~~い!!」


 憐れ安眠。

 彼は逃げきれず、大勢の敵の手にかかって、なぶり殺されたのであった。


「安眠・・・くっ!!」


 安眠を憐れむ余裕も今の彼には無い。

 三本の矢が馬の尻に刺さり、彼の左肘にも一本の矢が刺さっている。

 それでも無理に腕を動かし、馬の尻に必死に鞭打つ。

 そんな彼の目の前に淯水(いくすい)の河が広がっていた。


「河か!・・・ええい!ままよ!!」


 淯水の河にザブンッ!と大きな波が打つ。


「頑張れ!頑張れ!出来る!出来る!進め!進め!行け!行け!」


 馬を鼓舞して彼方の岸へと進む曹操。

 そんな彼の激励が功を奏したのか、彼は無事に岸へとたどり着くことが出来た。


「はぁはぁ・・・何とかたどり着いた・・・しかし・・・」


 辺りは暗闇。

 光の導は一つも見えない。

 一人孤独で血みどろドロドロ。


「これが今の私の道か・・・。」


 そう呟いた彼は、歯を食いしばり、先の見えない暗闇を進むのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る