第300話 汚名を返上すること

 呂布の奇抜な案により小沛を略奪することに失敗した袁術は頭を抱えていた。


「呂布は武だけを頼りにしている猪野郎だと思っていたのに・・・これはどういうことだ!意外に知もあるではないか!!」


 武と知才を持ち、徐州という豊かな地の利を得ている狼。

 そんな狼にうかつに手は出せないと、袁術は徐州・小沛制圧作戦を白紙に戻すしかなかった。


「ええい!わしはどうしればよいのだ!おんっ!紀霊よ!!」


「それは・・・その・・・こうなれば、違う形で北方(=徐州・小沛地方)の憂いを除いては如何でしょうか?」


「おおんっ!違う形だと!どういうことだ!詳細を言え!この無能野郎が!!」


 小沛攻略を失敗した紀霊を責め立てるように、袁術は暴言まがいに策を尋ねた。


 この答えに失敗すれば死ぬかもしれない。


 紀霊は心臓をバクバクと鳴らしながら、震える声で袁術に策を述べる。


「ええと・・・その・・・縁談による呂布との同盟とか如何でしょうか?」


「縁談!縁談だと!!・・・縁談・・・縁談・・・ええやん・・・それ、ええやん!政略結婚か!!」


「はい。・・・聞くところによると、呂布には年頃の美しい娘がいるそうです。」


「ほほう。・・・妾の子か?妻女の子か?」


「妻女の『厳氏げんし』が生んだ愛娘とのことです。なおさら条件は良いかと・・・。」


「ふむふむ、確かにお前の言う通り条件は良い。わしにも年頃の息子がおるので、アレと結婚させるのには何の問題もない。・・・婚を通じて、呂布の心を籠絡するか・・・。」


「はい。この策でしたら血を流すことなく、北方の憂いを除くことが出来ます。」


「ふむ・・・この縁談を受けるか受けないかで奴の心の内を知ることも出来るな。・・・うむ!物は試しだ!縁談話を持ち掛けるとしよう!紀霊!褒めてつかわす!!」


「はっ!ありがとうございます!!」


 良策を案じたことにより紀霊は失態を許され、その命を先へと繋ぐことが出来たのであった。

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