第284話 最後まで諦めない

 劉繇は荊州へと落ち延びたが、彼の配下にはこれを『良し』としない、張英を含む一部の残党たちがいた。

 彼らは秣陵城へと立てこもり、


「華々しく一戦せん!!」


 と、玉砕覚悟で孫策軍に戦いを挑むのであった。



 孫策軍は沿岸の敗残兵を駆逐しながら秣陵城へと押し迫った。

 その軍を張英が見るに、


「・・・いかんな。敵兵が増えちょる。降伏した我が軍の兵も多くいるのだろうな・・・。」


 と、彼は呟いた。


『戦に勝てば兵は増え、負ければ兵は減る。』


 当然のことだが、張英はそれを目の当たりにし、思わず嘆いてしまったのであった。



 そうこうしている内に、孫策軍は秣陵城への城攻めを開始した。

 門下まで迫り来た敵軍に対し、張英はやぐらの上より全軍の指揮を執る。


「石を転がせ!矢を放て!城内への侵入を許すな!!」


 玉砕覚悟で戦いを挑む張英軍の士気の高さは、連勝を重ねた孫策軍の士気の高さに引けを取らなかった。


「わーーーーーーー!!」


「うおーーーーーー!!」


「きゃあーーーーー!!」


 兵たちは良く守り、孫策軍の城内侵攻を許さなかった。

 すると、・・・


「むっ!? あれは孫策ではないか!!」


 張英は敵勢の中に、ひときわ目立つ若い将軍が指揮している雄姿を見つけた。


「絶好のチャンスだ!弓をよこせ!!」


 敵の総大将を倒せば戦に勝利できる。

 彼は周囲にいた兵に弓を催促し、渡された弓を構えて弦を引き絞った。


「くたばれ!!」


 若い将軍に向かい矢を放つ張英。

 その矢は将の左足に刺さり、将は馬より勢いよく転げ落ちた。


「ああっ!? 将軍!大変だ~~~!!」


 孫策の兵たちは慌てて若い将軍の元へと駆け寄って行く。


 若い将軍は孫策であった。


 孫策はピクリとも動かない。

 彼は大勢の兵に担ぎ上げられ、味方の陣へと逃げ込んだのであった。

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