第274話 断る時は三度ほど

 日を改めて、劉備は徐州の国境に赴いた。

 呂布は疑いを解くために、自ら国境まで出向き、彼を出迎えた。

 また、その際に劉備の母と妻を同行させ真っ先に彼と対面させた。


「ああ、母上!それにお前!よく無事で!!」


 劉備は声を上げ、母と妻の二人に近づいた。

 二人の話を聞くに、呂布は二人を良く待遇したらしく、彼女たちはそれほど呂布への不満を述べなかった。


 その後、呂布本人が劉備の元に近づき、挨拶を交わした。


「やあやあ、劉備殿。お久しぶりでござる。お元気そうでなにより。」


「これはこれは、呂布将軍。そちらこそ元気そうで何よりでござる。」


「「ハハハのハーーー!!」」


 二人は作り笑いも作り笑い。

 互いの本心をひた隠しにして、互いの利のために笑顔を振りまいた。


「劉備殿。手紙にて述べたように、拙者はこの国を奪ったつもりはありません。この国を貴殿にお返しいたしますぞ。」


 言い訳を述べる呂布。

 すると、劉備はすかさず、


「いえ、それは結構です。私のような若輩者が徐州を治めるよりも、人生経験豊富(笑)な呂布殿が治められた方がよいでしょう。」


 と、呂布を刺激しないように下手に出た。


「いえいえ、某の方こそ荷が重い。やはり劉備殿の方が・・・」


「いえいえいえ、某の方が荷が重いです。やはり呂布殿が治めるべきかと・・・」


「いえいえいえいえ、人望の厚い劉備殿の方がふさわしいかと・・・」


「いえいえいえいえいえ、無敵の力を持つ呂布殿の方が盤石かと・・・」


「いえいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえ・・・・・・」


 呂布は心とは裏腹に再三辞退したが、劉備は彼の野望を満足させるべく身を退いて、その後、小沛の田舎城に引きこもってしまった。

 当然、彼の左右の者からの反発があったが、


蛟龍こうりゅうふちに潜むのは、時機を待ち、天に昇らんがためである。」


 と、左右の者を説き伏せた。


 こうして徐州は呂布のモノとなり、劉備は小沛の田舎城に追い込まれる形となった。


 曹操が恐れた劉備と呂布。


 曹操は、『二虎競食の計』と『駆虎呑狼の計』にて二人の仲を裂こうとしたが、紆余曲折あって、その二人が変な形でまたくっついてしまったのであった。


第十章 完

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