第273話 何となくわかることもある

 陳宮の読みは当たっていた。


 国を失った劉備軍は崩壊しており、主君を見限った兵たちは劉備の元を去っていき、家来の数は五十名足らずの流軍となっていた。

 そんな彼らは、今、広陵の山寺に隠れており、行く当てのない絶望的な状況下におかれていた。

 そこへ、呂布からの使者がやって来た。


「――――私を徐州に招き入れたいと?」


「はっ!私も詳細は知らされておりませんが、そのような内容の手紙であるとは存じております。」


「・・・わかった。読んだ後に回答させて頂くので少々お待ち下され。」


「かしこまりました。」


 そう言って使者はスススッ!とその場から下がった。


「・・・よし。では読むとしよう。」


 劉備は使者から渡された手紙を読んだ。



お久しぶりでござる劉備殿。(辞儀)

元気でやっていますでしょうか?(質問)

ちなみに私は元気です。(笑顔)

・・・さてはて、手紙での挨拶はこの辺にして本題に入らせて頂きます。(真剣)

此度の徐州の件ですが・・・本件は劉備殿の恩を忘れた行為ではありません。(恩義)

城中では派閥争いが起きており、私はそれを治めるために動いたにすぎません。(善行)

そして今は、その後始末として徐州を守っている状態なのです。(守護)

本当です。嘘偽りではございません。(真実)

と、まぁそういうわけですので、徐州に戻って来ては頂けませんでしょうか?(懇願)

前のように互いに手を取り合い、袁術他、諸侯の連中から徐州を守ろうじゃありませんか!(提案)

簡潔ですが、以上が私からの此度の件の言い訳となります。(簡略)

劉備殿。貴殿の帰還、心よりお待ちしております。(完結)



 手紙を読んだ劉備、そしてその他の将たちは、皆、こう思った。


((超うさんくせぇ~~~!!))


 当然、関羽と張飛の両名は、


「兄者!これは罠です!超しょうもない罠です!行ってはなりませんぞ!!」


「関羽の兄貴の言う通りです!使者を斬ってその手紙の返答としましょう!!」


 と、即座に反対意見を劉備に述べた。が、これまた当然と言うか何というか劉備はというと・・・


「いや、呂布の招きに応じよう。それ以外に道はない。時機を得んために、今は恥を忍んで応じるしかない。・・・準備に移るぞ。」


 彼の答えに将たちは皆、


((知ってた。))


 と、反論をするのも諦め、すぐに移動の準備に取り掛かったのであった。

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