第十一章 江東の小覇王
第275話 条件には対価が必要
大河を眺める一人の青年がいる。
四年前、父を戦場で失った江東の麒麟児『
彼は今、南陽の袁術の元で
父である
成人にもなっていない十七歳の青年。
孫策は賢人を集め、兵を練り、家名の再興を計ろうとしていたのだが、逆境につぐ逆境により国を守ることが困難となり、遂に
「時機が来たら迎えに行きますので、しばらくは田舎暮らしでお願いします。」
彼は老母と一族を片田舎の身寄りに預け、十七歳のころより諸国を転々と彷徨い歩いた。
国の人情
地理
兵備
etc・・・
孫策は大志を胸に様々なモノを見て回り、それを糧にして生きていた。
そして二年前、
「――――今日も空しい一日であった。」
大河を前に、一人、自分の境遇を嘆く孫策。
そんな彼に従者の一人が歩み寄る。
「若殿。こんな所で嘆くにはまだ
声をかけたのは
「朱治か・・・。貴公の言うことは
「このまま彼の下でいくら手柄を立てようとも孫家を再興することは敵わん。『どうしたものか?』と女々しく嘆く自分の空しさもまた悔しい。」
「朱治よ。・・・俺はどうしたらよいのだ?」
孫策の意中を聞いた朱治もまた嘆いた。
「若殿・・・それほどお嘆きになるのでしたら、父上のように立ち上がられては如何でしょうか?」
「それも考えた。しかし、立ち上がりたくとも立ち上がれぬ。兵もいなければ兵を養う財もない。それに動機もない。動機が無ければ袁術の情けも裏切れない。」
孫策は内心では、傲慢な袁術の事を快く思っていなかった。
しかし、袁術には恩がある。
生半可な動機によって独り立ちを決行するのは義に反すると、孫策は気持ちの面でも動けずにいた。
そんな彼に朱治が進言する。
「・・・あなたの叔父様に不遇な方がおられるのをご存知でしょうか?」
「不遇な叔父?・・・
「左様です。呉景殿は今、丹陽の地を失い、落ちぶれてしまって非常に困っているとお聞きしております。それを利用するのです。」
「・・・なるほど。『叔父を助ける』という名目で俺に立ち上がれと。」
「それまた左様です。袁術殿に兵を借り、叔父を助け、孫家の再興を計るのです。」
「なるほど、それは素晴らしい考えである。・・・しかし、問題は・・・」
「『その理由で袁術が自分に兵を貸してくれるのか?』ということですね。」
「うむ。『叔父を助ける』という尤もらしい口実だが、あの猿が簡単に自分に兵を貸してくれるとは思えぬ。・・・どうしたものか?」
孫策は優秀である。
事実、彼は袁術の下で数々の武功を上げていた。
(優秀な自分を袁術は簡単には手放さないだろう。)
自惚れに聞こえるが、孫策はそう思っていた。
(・・・・・・・どうすっぺかな~?)
(条件には対価が必要だ。同情というタダ同然のモノでは猿は口説けん。価値のある対価でなければダメだ。では、俺がその対価を持っているのかというと・・・。)
(俺が持ってるモノと言えば、『自分』と『少数の家臣』と『父の名声』だけ。・・・とても話にならん。)
(・・・いや待て、もう一個あるぞ。・・・そうだ!これだ!これなら、あのツルピカ猿丸も動くはず!いける!いけるぞ!これで俺は自由だ!!)
袁術を動かす決め手を見つけた孫策は、喜び勇んで屋敷へと戻り、家臣たちに自分の考えを述べた。
瞬間、全員が反対の声を上げた。
「いやいやいやいやいや!それはダメでしょ!それを手放したら二度と手元には戻っては来ませんぞ!」
「そうですとも!それを一時的に貸すという契約でも絶対奴は返しませんぞ!奪われてお終いです!!」
「別案です!別案を要求します!今の殿の提案は『いや~ん!まいっちんぐ!』ですぞ!!」
ワオワオワーオ!と反論を述べる家臣たち。
しかし、孫策はそれらを一蹴して、『それ』を対価にすることに強引に決めたのであった。
はたして孫策が袁術に渡す『それ』とは一体何なのでしょうか?
気になる!気になる!気になるでしょうが、引き伸ばしのために次話に続きます!!
ばればれかもしれませんが、次話に続きます!!
読者の皆様!ごめんちゃい!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます