第272話 協力関係を築き上げること

劉備玄徳、広陵こうりょうへ逃げた。

つ~かまえて、チョンチョンパ。

されば報酬与えよう。

出来なければ無しよ、無し。

約束御破算。即即御破算。

急ぎ、急いで、急げけり。

さっさと約束、果たしてちょんまげ。



 後日に届いた袁術から来た書簡を読み上げた呂布は、額に怒りマークを浮かび上がらせ、声を大にして叫んだ。


「なんたる無礼な奴!俺を子分とでも思っているのか!」


「自分から提示した条件なのに、欲しければ劉備の首を持って来いだと!アホか!!」


「許せん・・・許せんぞい!傲慢な袁術の顔を踏みつぶしてやる!!直ちに軍を準備するのだ!!!」


 怒りに任せ、またしても短絡的思考をする呂布。

 しかし、それも最早慣れたモノと、腹心の陳宮が彼の意見に釘をさす。


「STOP!STOP!STOP!STOP!STOP細謀さいぼうですぞ!呂布将軍!!」


「むっ!? 陳宮か!どうしたぁ~!!」


「詳細のあるはかりごとならいざ知らず、詳細のない謀は危険です。袁術は腐っても袁一門の者。彼の背後には董卓追討連合の総大将となった袁紹がいることを忘れてはなりません。」


「うっ!? た、確かにそうであったな。・・・袁術と争うとなると袁紹を敵に回すことになるのか・・・それはやっかいであるな。」


「YES。その通りです。」


「・・・では、陳宮よ。俺はどうすれば良いのだ?このまま黙っていては面目丸潰れだぞ。」


「それもまたYESです。・・・そこで将軍。私に一つ提案があります。」


「提案?・・・よし、言ってみろ。」


「はっ!・・・ではでは、これより話をさせて頂きます。将軍だけではなく、皆もご清聴願います。」


 陳宮は深呼吸をすると、諸将集まる皆の前で自分の考えを述べ始めた。


「ここは一つ、と手を結ばずにと手を結び直すべきです。」


「南陽軍十万を相手に一歩も引かず、戦を有利に進めた劉備。・・・恐ろしい。誠に恐るべき人物です。しかし、それが逆に良いのです。そんな彼を味方につければ頼もしい事この上なし。劉備を味方につけて時機を待ち、袁術と袁紹の両名を滅ぼせば、天下の半分は将軍のモノとなりましょう。」


「・・・どうでしょうか、将軍? 私の意見に不満があれば何なりと仰って下さいませ。」


『袁術ではなく、劉備と仲良くすべし。』


 陳宮の話を聞いた呂布は顎に手を当て、少しばかり考えた。

 そして、気になる点を尋ねた。


「・・・確かにお前の考えは良いと思うが・・・俺は劉備の留守を狙って徐州を奪い・・・もとい、徐州を手に入れたのだぞ。劉備が応じるとは思えんが・・・。」


「その点はご安心下され。劉備は必ず応じます。何故なら、今、彼は苦しんでいるはずですから。」


「劉備が苦しんでいるだと?・・・そうか・・・なるほど。劉備は一昔前の俺と同じ状況に陥っているというわけか。」


「はい。将軍も流軍るぐんの辛さを嫌と言うほど味わった身でございます。兵は逃げ出し、いつ自分が敵国から命を狙われるか分からぬ恐怖。これを今、劉備は嫌と言うほど味わっているに違いありません。こちらが手を差し伸べれば、彼は必ず握り返すでしょう。」


 陳宮の答えを聞いた呂布は数度頷き、完全に納得したようで、


「時が来るまでは互いに利用し合う関係か・・・よし!その工作でいくとしよう!陳宮よ!本工作はまかせたぞ!」


 と、彼に本工作の全権を任せ、劉備と手を組み直すことにしたのであった。

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