第271話 適当には答えない
天は劉備に味方した。
逃亡を決意した明くる日の夜に大雨が降った。
劉備軍は「これ幸い」にと、すぐに全軍で河を渡った。
その後、
さらに明くる日、高順率いる三万の呂布軍がこの地にやって来た。
「おやおや?劉備軍がおらぬぞ?一体どこへいったのだ?」
高順が見るに、その地は風雨により草木は折れ、河は氾濫しており、人馬はおろか、陣地の跡に馬糞もなかった。
「・・・将軍。どうやら敵は昨夜の雨に紛れて逃げてしまったようですね。」
「うむ、そのようだな。・・・しかし、何はともあれ、我らが背後を攻めたおかげで、敵が逃げることになったのは間違いない。報酬の件を相談するとしよう。」
高順は早速、紀霊の陣へと赴いて、紀霊と面会をした。
「やあやあ、紀霊殿。お疲れ様です。」
「どうもどうも、高順殿。そちらこそお疲れ様です。」
「「ペラペラペラペラ」」
高順は紀霊と軽い挨拶を交わした後、すぐに報酬の件を尋ねた。
「――――ところで、紀霊殿。劉備軍を追い散らしたので、約束の報酬を頂きたいのだが・・・今ここでそれらは貰えるのかな?」
高順の問いに対して、紀霊は、
「??? 何のことでござるかな?」
と、首を傾げて言葉を返した。
この知らぬ存ぜぬの紀霊の失礼な態度に高順は眉をひそめた。
「知らない?知らないとはどういうことであるか?我らがここに来たのは袁術殿との密約を果たすためであるぞ。」
「えっ!? それは・・・その・・・申し訳ない。その件に関しては、拙者は本当に知らぬ。恐らく我が主である袁術様が呂布殿と勝手に交わした密約なのだろう。申し訳ないが。私に尋ねられても何も答えることが出来ないし、応じることが出来ない。」
「むむむ・・・。」
「この件に関しては一旦国に帰り、双方共に主に尋ね、対応するほかないと思われるが・・・。」
紀霊の答えに高順は、
「やむ得ない。」
と、その場での回答は諦め、徐州へ戻り、呂布に事情を説明することにしたのであった。
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