第237話 現実世界で頑張ること

 夏候惇隊が帝の元に馳せ参じてからしばらくすると、曹操の弟である曹洪そうこう李典りてん楽進がくしんを副将として三万の兵を連れてやって来た。


 彼らの登場に場が一瞬ざわめいたが、夏候惇が、「あれも味方です。」と説明すると、「あれも味方か!これはたまげた!」と、帝は増々安堵の声を上げた。


 こうして頼れる味方を得た帝は、八万の精兵に護られて、洛陽へと引き返し始めた。


 そんなことが起こっているとは露知らず、洛陽を突破した李傕軍と郭汜軍の連合軍は勢いに乗り、帝の元へ殺到しようとした。

 すると・・・


「あらららららら!あれは何ぞや!前方に大軍が見えるぞ!目の錯覚か!」


 前方に思わぬ大軍が上って来ているのを見て、李傕は思わず声を上げた。

 帝を護る兵の数は少数。これは彼らもよく知る所であった。

 しかし今、彼らの前方にいる兵の数は少数どころではない。

 自分たちの持つ兵数と同等の数のように見える。


  (つд⊂)ゴシゴシ→(`ФωФ') カッ!→( ゜A゜;)マジ?


 目をゴシゴシと擦り、目をカッ!と開いても、前方にいる大軍の幻が消えない。


 このあり得ない事態に、彼らは驚き、現実が受け入れられずにいた。


「不思議じゃ!何と奇怪な!いるはずのない大軍が見える!敵の妖術か!!」


「天狗じゃ・・・天狗の仕業じゃ!間違いない!これは天狗の仕業じゃ!!」


「ゲゲゲのゲーーー!誰か急いで鬼〇郎を呼んで来てくれ!出来れば妖怪チ〇ポも!早くしないと手遅れになるぞ!!」


 思わぬ事態にワーワーと騒ぎ立てる兵たちに対し、大将である郭汜が声を荒げる。


「くっ!なんといぶかしい!・・・しかし、皆、騙されるな!あれは、妖術・技神術・呪法・咒法・幻術・呪術・術・呪い・法術・神通力・方術・魔術・マジック・魔法・咒術のいずれかを用いた幻の兵だ!幻の兵など恐るるに足らず!奴らを突き破るのだ!!」


 郭汜の言葉に従い、連合軍は恐れながらも曹操軍に当たってきた。

 それを見た夏候惇もまた、兵を鼓舞して、彼らに向かい突撃命令を下した。


「ようし!皆!帝を御守りするのだ!斬って斬って蹴散らし殺して賊を壊滅させよ!」


「「おおう!やってやるってばよ!!」」


 両軍は荒野の中央で激突した。


「あれれ~~?おかしいぞ?幻の兵のはずなのに、自分、斬られたんですけど?なんで~~?」


「幻術か?いや・・・幻術ではない。・・・いや・・・幻術なのか?幻術・・・ではない?・・・いや・・・幻術・・・と見せかけた現実で幻術の現実だ。」


「幻術だろが現実だろうが、どちらでも構わない!大切なことは一つ!剣で斬られた俺は今から死ぬっちゅうことだ!それさえ分かれば十分!ワハハハハハハ!・・・無念。」


 幻の兵は強かった。

 曹操軍は戦につぐ戦により鍛え上げられた精兵軍。

 かたや、都で好き勝手に暴れていた雑軍に等しい李傕軍と郭汜軍の連合軍。

 両軍の戦いの結末は言うまでもないだろう。


 血、血、血。

 大地は血に染まった。

 その日、半日だけで李傕軍と郭汜軍は徹底的に討ちのめされた。

 地面に転がった死体は一万余名を越えた。

 その血は戦場から洛陽まで続いたと伝えられている。

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