第236話 言葉は短くかっこよく

「あっ!うん!見たことありますよ!あります!あります!」


「確か彼らは・・・えっと・・・そう・・・アレですよ!アレ!いや~懐かしいな~!!」


「そうだ!彼らは山東へと向かったアレだ!モブキャラだから名前は知らん!それでいいじゃないか!!」


 近づいて来る二騎の正体に気付いて歓声を上げる帝一派。

 彼らに迎え入れられ、曹操の元から戻ってきた使者2人は帝の前で拝伏した。


「陛下!ただ今帰りました!!」


 余裕たっぷりドヤ顔で帝へと奏上した二人に、帝は感謝の意を述べる。


「おお!ご苦労であった!して、あの大軍は・・・。」


「あの大軍は曹操軍にございます。山東の曹将軍は我らを迎え入れ、その日の内に大軍を準備なさい、第一軍として五万の兵をこちらに差し向けられました。」


「おお!やはり味方か!それにしても何と迅速な対応!さすがは曹孟徳!噂通りの名将である!」


 使者2人の話を聞いた帝は、赤い水牛に翼を授けられたかの如く、舞い上がらんばかりに狂喜した。

 そんな彼の元に、大軍より放たれた、一隊の騎馬隊が近づいてきた。

 夏候惇、許褚、典韋などの猛将十数名である。

 彼らは御車の前で馬を降り、規律正しく整列すると、隊長である夏候惇が号令を下した。


「戦場故、甲冑を着た無礼な服装にて失礼いたします!・・・全員!気を付けーーーー!礼!!」


「「「ちゃーーっす!ちゃっちゃっちゃーーーっす!!」」」


 号令に合わせて頭を下げるマッスルマンたち。

 その迫力に帝がためらっていると、隊長である夏候惇が十歩ほど前へと進み出て、一同を代表して宣誓を述べた。


「宣誓!我々曹操軍一同は、軍の規律に則り、日頃の鍛錬の成果を十分に発揮し、帝を守護り抜くことを誓います!曹操軍代表代理、夏侯元譲!」


 ※夏候惇の字は元譲げんじょうです。書いてなかったのでここで書かせて頂きました。


 近年の長ったらしい媚を売るような宣誓ではなく、原点に立ち返ったかような気持ちの良い清々しい宣誓。

 戦場ゆえの無礼さも承知しての立派な態度。

 そんな優秀な彼らを見た帝は、


(流石は天下にその名を轟かす『曹孟徳』の部下たちである。)


 と、深く感心し、窮地に駆けつけてくれた彼らに対して、感謝の言葉を述べた。


「朕のことを思い、駆けつけて参った者の服装なぞ何故咎めようか?」


「今日、朕の危急に馳せ参った苦労は、後日、必ず重き恩賞によって応えようぞ。」


 その言葉を聞いた夏候惇隊は、一同全員、タイミングを計ったかのように一斉に頭を下げた。

 つくづく訓練された兵たちである。

 その後、夏候惇は曹操の件について述べた。


「我が主君曹操は大軍を調するため、数日遅れて此方にこられます。」


「うむ。それは致し方あるまい。その間は・・・。」


「はっ!先ほどの宣誓通り、我らが帝を御守り致しますので、大船に乗った気でご安心下さいませ!!」


「うむうむ。心強い限りである。」


 頼もしい曹操軍の力を得た帝一派は異口同音、万歳の音頭を取ったのであった。



 ※夏侯元譲の宣誓の感想についてですが、あくまでも個人の感想です。真に受けちゃだめよ?いいね?

  了解した人は次話をどうぞ。了解できない人はトラックへぶつかって異世界へどうぞ。

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