第132話 兄弟は仲良くあるべき

 袁術は袁紹からの恩賞についての返答を受けて以来、すこぶる機嫌が悪かった。


「兄者め、ふざけおって。一体誰のおかげでブツブツブツ・・・。」


 袁術は兄を大いに怨み、兄弟不仲になってしまっていた。


 機嫌が悪い袁術に側近が新たな問題を提示する。


「え、袁術様。あの~大変申し上げにくいのですが・・・新たな問題が発生しました。」


「・・・何じゃと?恩賞以上の問題があるというのか?」


「はい。あの・・・その・・・兵糧が足りなくなって」


「やかましい!!」


「ムギュギュギュ!!」


 袁術は側近に杯をスライダー気味に投げつけ、八つ当たりをしたのであった。


 前話でも書いたが、南陽は豊かな土地ではない。

 そのため、経済は袁紹からの援助に頼る所が大きかった。

 しかし今、袁術と袁紹は不仲である。

 これにより、南陽はたちまち経済危機に陥ってしまったのだ。


(むむむ。いかん、いかんぞ。これはマズイ。どうするべきか?)


 袁術は目を瞑り、ウンウンと唸りながら打開策を考えた。


(あ~でもない。こ~でもない。そ~でもない。ど~でもない。ないないないない、なかばい。・・・・・・・そうだっ!)


 袁術はカッ!と目を開き、手を打って、打開策を側近に話した。


「そうだ。劉表りゅうひょうだ。荊州の劉表に兵糧を借りるとしよう。あやつとは親しい付き合いをしておる。きっと兵糧を貸してくれるはずじゃ。」


「・・・そう上手く」


「やかましい!!」


「ムギュギュのギュ~!!」


 袁術はいつもの如く側近に杯を投げつけると、一筆したため、荊州の劉表に使者を送ったのであった。



 それから数日後。

 荊州に送った使者が帰還し、袁術に事の次第を報告していた。


「袁術様。兵糧の件で劉表殿から手紙を頂きました。こちらにございます。」


「うむ。どれどれ。読み読み。」


 袁術は使者から手紙を受け取ると、ウキウキとした表情で内容を確認した。

 劉表からの手紙にはこう書かれていた。



『断る。』



 簡潔かつ分かり易い劉表の返事に袁術は愕然とした。


「えっ?はっ?なにこれ?どういうこと?ふざけてんの?ねぇ?ふざけてんのこれ?側近君。これどういうこと?」


「・・・そのままの意味かと思われ」


「やかましい!!やかましい!やかましい!やかましい!やかましい!やかましーーーい!!!」


「ぐわああぁぁぁぁぁぁぁ!・・・・・・ムギュ。」


 劉表に兵糧の件を断られた袁術は側近にありとあらゆる杯を投げつけ、側近をズタボロにしたのであった。

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