第133話 被害妄想をしてはいけない
南陽の袁術は大変に困っていた。
兄の袁紹と荊州の劉表からの援助が断ち切られたからである。
「ぬぬぬぬ。兄者も劉表もどういうつもりだ。この私をコケにするつもりか!・・・・・・いや、まてよ。・・・何かおかしい。」
憤慨していた袁術であったが、彼は心を落ち着かせ、冷静に今回の出来事を考え直した。
「両名から援助が断ち切られた。・・・おかしい。これはおかしいぞ。兄者はともかく、劉表は今まで仲良くしていたはず。それなのに援助を断られた。」
「・・・ひょっとすると兄者が裏から手を回して劉表に兵糧を出させなかったのでは?それだと全てに説明がつく。そうに違いない。きっとそうだ。」
「・・・兄者め・・・許さんぞい!!」
袁紹と劉表が手を組んでいるという証拠もないのに、そう決めつけるという超理論により、袁術は自分を納得させた。
そして、その考えに至った袁術は怒り狂った。
地団太を踏みながら、訳の分からないことを叫び続けた。
「兄者も劉表も、わしを困らせようとしておる!違いない!そうに違いないんじゃーーー!間違いないんじゃーーーい!」
その様子を見ている家臣たちの表情は、本小説を書くに当たり、参考にしている横山光輝『三国志』の第7巻25ページの4コマ目の隅に描かれている使者の表情を見れば一目瞭然であろう。(=ドン引き)
しばらくすると彼は落ち着いたのか、息を切らせながら、とある策を思いついていた。
(・・・孫堅だ。この恨みを孫堅に晴らさせる!奴は兄者と劉表の両名に恨みを持っておる!孫堅の奴に劉表を成敗するよう密書を送るのだ!!)
そう考えた袁術は側近に紙と
袁術が密書の作成を行っている間に、何故孫堅が劉表に恨みを持っているのか説明しておく。
先の戦いにおいて、孫堅が玉璽を手中に収めたことで仲間からの追撃を受けたことは記憶に新しいことであろう。
その追撃において、孫堅軍を徹底的に追い詰めたのは劉表軍であった。
そのため、孫堅は劉表に深い恨みを抱いているのであった。
「・・・よし!出来たぞ!これを孫堅に秘密裏に渡すのだ!!」
「ははぁ!」
袁術は作成した密書を部下に渡して孫堅の元に届けさせた。
「見てろよ兄者。私はいつまでも兄者に従っているだけの男ではないのだぞ。」
そう呟き袁術は声高々に笑ったのであった。
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