第128話 喧嘩は止めさせよう

 場面は変わり長安の都にて。

 長安の都は遷都以来、洛陽の都に負けぬ賑わいを見せていた!

 そんな長安を治めているのはもちろんこの人!

 董卓将軍で~~す!!

 ワ~!ドンドン!パフパフ~ン!!


 ・・・はい。長安へと移動した董卓は、諸大臣の上の位の『太政相国だいじょうしょうこく』を自ら名乗り、国内外にその権力を誇示していた。

 また、董卓は相変わらずの酒池肉林の生活をしており、以前に増して体格が肥え太り、まん丸となっていた。

 そんな楽しい日々を過ごす彼のもとに一報が届く。


「むっ。李儒よ。何かあったのか?」


「はい。董卓様。先頃から袁紹と公孫瓚が盤河を挟んで戦っているようです。」


「そうらしいな。・・・して戦況はどうなっておる。」


「袁紹の方が旗色が悪い状況です。なお戦い始めてから一ヶ月が経とうとしており、双方ともに大勢の負傷者が出ております。」


「ぬははははは!それは良い!もっとだ!もっともっと殺し合うが良い!!わしに背いた報いじゃ!!」


 董卓は笑いが止まらなかった。

 連合軍なる組織を結成し、自分に刃を向けた者たちが殺し合いを演じているのだ。

 楽しく、愉快で、素敵過ぎる殺し合いに董卓は大満足であった。

 しかし、そんな董卓に対して、李儒はとある進言をする。


「董卓様。喜んでいるところ申し訳ありませんが、その考えを改める必要があります。・・・董卓様。彼らを和睦させるべきです。」


「なにっ!和睦させよだと!どういうことじゃ!!」


「ご存じだと思われますが、朝廷の内政が遷都したばかりとあって、仕事が超忙しい日々が続いております。そのため、天下の事が放置プレイ状態なのです。この状況下での今回の争い。これを鎮めておかねば、漢室の威光が無いように思われてしまいます。」


「むむむ。確かにそうであるな。」


「それだけではありません。袁紹と公孫瓚は共に強大な勢力。このまま戦いどちらかが敗れれば、勝者は敗者の勢力をそのまま取り入れることになります。そうなれば勝者の勢力は膨れ上がり、董卓様を脅かす存在になるかもしれません。そうさせないためにも彼らを和睦させるべきなのです。」


「ぬぬぬ。言われてみればその通り。・・・しかし、奴らが和睦の提案を受け入れるのか?」


「受け入れるに違いありません。先ほども申しましたように、彼らは一ヶ月も戦い、死傷者の数は数えきれぬほどになっております。帝の名において和睦するよう勅使を下せば、彼らはよろこんで承知するでしょう。そして、その仲介人たる董卓様に恩義を感じるはずです。」


「なるほどなるほど。・・・さすがは我が腹心。見事な考えよ。褒めてつかわす。」


「ありがとうございます。」


 頼れる腹心の進言を聞き入れた董卓は、早速、帝に和睦についてを上奏して、みことのりを頂き、勅使を冀州に遣わしたのであった。

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