第103話 手を抜くことも大事

 長安へと向かう董卓軍。


 帝の馬車を先頭に、洛陽からの難民たちは山を登り、川を渡り、荒野を歩き回り、道中を苦しみながら旅をしていた。

 そして、滎陽けいようという地の城で一息ついていた董卓軍の元に一報が届く。


「董卓様!曹操軍が追いかけて来ました!!」


「なにっ!あの小僧、わしが可愛がってやった恩を忘れおってからに!!」


 部下からの報告を受け、憤慨する董卓に李儒が策を進呈する。


「董卓様。お気を静めてください。私に考えがあります。」


「ぬぬぬ。何か策があるのか?」


「はい。董卓様。その策を説明しますのでこちらへ。」


 李儒はそう言って、城内の一室から城頭の見張り台の所まで董卓を案内した。

 案内した李儒は城のうしろの山岳を指さした。


「ご覧ください。滎陽城のうしろは天険(=自然の要害)です。兵を隠すには絶好の場所。そこに兵を伏せ、調子に乗って追撃してくる曹操に奇襲を仕掛ければ勝利は必然。バッチグーです。」


 親指を立て、自信満々に策を述べた腹心の姿を見て、董卓は気持ちを静め、安堵の表情を浮かべたのであった。



けよ!董卓はまだ遠くへは去っておらぬ!!」


 曹操の勇ましい掛け声と共に、曹操軍は董卓軍を追撃していた。

 そして、瞬く間に滎陽城に到着し、滎陽城を守護する少数の董卓兵たちと戦闘を開始した。

 必死に攻める曹操軍に対し、滎陽城の董卓兵たちはやる気なく、城壁にて適当に応戦していた。

 それもそのはず、滎陽城をわざと突破させ、伏兵にて曹操軍を叩くのが李儒の策である。

 そのため、彼らは本気で城を守護せず、チラチラと隙を見せ、曹操軍の城攻めを助勢していた。


 そんなことなど露知らず、曹操軍は滎陽城を攻め落とし、勢いそのままに逃げる董卓を追撃していった。

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