第102話 燃える洛陽

 数日間敵軍に動きが見られない。

 これに不信を抱いた連合軍は虎牢関と汜水関の両関門に物見をやった。

 そして・・・


「なにっ!虎牢関と汜水関の両関門とも、もぬけの殻だったと!」


「はっ!人っ子一人いませんでした!」


「ぬぬぬ。一体どういうことだ?」


 物見からの報告を受けた袁紹および諸侯一同は動揺を隠せなかった。

 そして、皆で協議を行ったが、連合軍は董卓軍がいなくなった理由がわからなかった。

 しかし、理由がわからないとはいえ、敵がいないのは絶好の機会。

 袁紹はすぐに出陣命令を下し、連合軍は虎牢関と汜水関へと攻め入った。


 汜水関は前回の復讐とばかりに孫堅軍が押し入り、虎牢関は劉備らを含んだ公孫瓚軍が乗り込んだ。

 両関門とも物見の報告通り、兵1人おらず、もぬけの殻であった。

 虎牢関へと一番乗りした劉備ら3兄弟は城門の上に立って名乗りを上げた。

 そして彼らは見た。はるか遠くに燃え盛る天下の都の有様を。


「あれを見よ!洛陽が火の海だ!!」


 劉備の叫びと共に連合軍諸侯が火の海の洛陽を見る。

 彼らが見た先には数十里にも広がる火の海があった。

 そして天の光を遮るほどの黒煙が舞い上がっていた。


「この世の終わりか」


 そう思うほどの凄愴せいそうさに心打たれていた諸侯たちであったが、すぐに皆、燃える洛陽へと急いだ。



 洛陽へと乗り込んだ連合軍はすぐに市中を巡回し、消火活動を行った。


「火を消せ!消火に努めろ!略奪は許さん!逃げのびた民たちの救出を第一とせよ!!」


 袁紹の号令に従い、兵たちは懸命な消火活動を行った。


 諸侯一同が懸命に消火活動をする中、曹操は情報収集を行い、董卓軍の行方を探っていた。

 そして、董卓軍が長安へと向かったとの部下からの報告を受け、曹操はすぐに袁紹に追撃を出すよう提案した。


「袁紹!董卓は長安へと向かったようだ!すぐに奴らを追いかけるぞ!」


「いや、それは出来ん。戦場での日々、そしてこの消火活動で兵たちは皆疲れ果てている。すでに洛陽は占領したのだから、ここで2、3日兵馬を休ませるべきだ。」


「な、なにを悠長なことを言っている!こんな焼野原を占領して何の益がある!それよりも董卓軍が体勢を立て直す前に奴らを根絶やしにすべきだ!!」


「だまらっしゃい!私は総大将だ!君が推挙した総大将だぞ!私の命令を聞け!!」


「くっ!ここに来て権力を振いかざすとは・・・もうよい!私の軍だけで董卓軍を追撃する!!」


 袁紹と真っ二つに意見の分かれた曹操は、彼の配下の『夏侯淵かこうえん』、『曹仁そうじん』、『曹洪そうこう』をはじめとして、1万余名の兵を引き連れ、董卓追撃を開始したのであった。

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