第五章 戦火の群雄

第82話 いなくなってしまった人たちのことを時々でいいから思い出そう

 曹操の檄は渤海ぼっかいの太守『袁紹』のもとにも届いた。

 袁紹は董卓に逆う態度を示したため、洛陽を追われ、渤海の太守となっていたのだ。

 袁紹は今、家臣一同を集めて、曹操の檄についての評議を開いていた。


「う~む。曹操の檄に応じるべきか?それとも無視するべきか?・・・諸君らはどう思う?」


「袁紹様。何を迷うことがありますか?すぐに檄に応じるべきでしょう。」


「左様です。これこそ、我らが待ち望んだ天の声でしょう。曹操と協力して董卓を討つべきです。」


 袁紹の家臣である『顔良がんりょう』、『文醜ぶんしゅう』の2人を筆頭に、家臣一同は曹操の檄に賛同の意思を示した。

 袁紹自身も同意見だったので、特に反対の意思を示さなかったが、彼には一つ気になることがあった。


「うむ。諸君らの言う通り、私も曹操の檄に応じるべきだと思っておる。・・・しかし、この檄に書いてある『天子の密詔を受けて』という言葉がどうにも引っかかる。曹操の奴が天子から密詔を受けるはずがないんだよなぁ。」


 曹操の幼馴染である袁紹は、曹操の性格と本質を良く知っており、彼の檄を文面通り受け取ることが出来ずにいた。

 そんな袁紹に家臣たちが「気にすんな!」と進言する。


「確かに袁紹様の言う通り、私もその言葉は気になります。しかし、ぶっちゃけそんなことはどうでもいいと思われます。すことが正しければ問題ないありませんよ。」


「そうですとも。『董卓は悪!そしてその悪を討つ!』。それだけで兵を動かすには十分な理由ですよ。」


 「そうだ!そうだ!」という意見も多数聞こえてきたので、袁紹は腹を決め、董卓討伐に参戦することにした。

 袁紹は名門の出身。また人望厚いということもあり、すぐに兵を集めることに成功して、河南の陳留へと歩を進めた。



 袁紹が陳留に着くと、そこには既に大勢の英雄たちが赴いていた。


冀州きしゅうの『韓馥かんふく

予州よしゅうの『孔伷こうちゅう

西涼せいりょう の『馬騰ばとう

北平ほくへいの『公孫瓚こうそんさん

etc・・・


 その他大勢の軍を見た袁紹は「早く決断を下して良かった~~!」と胸を撫で下ろしたのであった。



 話を進める前に、ここで読者の皆様に尋ねたいことがある。

 上記で記載した英雄たちの1人である『公孫瓚』という人物の名をどこかで見たことないだろうか?

 彼の名前は本小説で以前に一度だけ書いたことがあるのだが、その時書かれていた内容を覚えているだろうか?

 覚えている読者の方は筆者が何故このタイミングでこの質問をしたのか察しがつくだろう。



 今、公孫瓚なる人物のもとに3人の英雄たちがいる。


 彼らは美しい桃の花が咲き乱れる園でとある誓いを立てた英雄たち。

 彼らはとある村を視察に来た帝の使いに暴力を振るい、無職となった英雄たち。

 彼らは四十三話以降より完全に姿を消していた英雄たち。


 ここまで書けば公孫瓚の名を覚えていない読者の方々も筆者の質問の意図をご理解頂けただろう。



 そう!今、公孫瓚のもとで本小説の主人公+2名が世話になっているのだ!

 太平の世を築くために立ち上がった英雄たち!

 存在が忘れられていた英雄たち!

 どうせすぐに別の英雄たちに視点を移される、名ばかり主人公たち!

 彼らの名は・・・


劉備玄徳!

関羽雲長!

張飛翼徳!


 長い時を経て!主人公トリオ!ここに復活ッ!!

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