第81話 覇王の檄

 衛弘からの軍費を得た曹操は湯水のごとく金を使い始めた。


 彼はまず2つの白い旗を作った。

 そして、1つの旗には『忠』、もう1つの旗には『義』という文字を大きく書いた。


(よし。これで何后の悲歌の歌詞にあった「忠と義を持つ人」が私のことだと喧伝けんでんできる。)


 何后の歌った悲歌は世間にひっそりと知れ渡っており、曹操はその悲歌を利用することにしたのだ。

 もちろん何后は曹操のことを思って悲歌を作り、歌ったわけではない。

 しかし曹操は、「何后様は私に董卓討伐を託したのだ!」と、世間にハッタリをかましてまわった。


 旗を作った曹操は次に世間にこう喧伝してまわった。


「私は朝廷から密命を受けてこの地に下った者である!」


 もちろんこれもハッタリである。

 曹操は朝廷からの密命を受けておらず、董卓からスタコラサッサと逃げてきただけである。

 しかし曹操は、「私は朝廷から密命を受けた!」とハッタリをかまして、自分の存在を世間にアピールしてまわった。


(人を動かすには少々のハッタリが必要だ。・・・さて、『旗』と『密命』。この2つのハッタリでどこまで人を動かせるか・・・。)


 曹操は期待と不安を胸に募らせ、事の成り行きを見守った。



 曹家は名家。また曹操自身も才ある者と世間ではもっぱらの噂である。

 さらに、彼自身がついた2つのハッタリにより、近くの村や町から若者や無職の者たちが彼のもとに集まった。

 彼らを見た曹操は満足げに頷き、次の段階へと策を進めた。


 曹操は全国の英雄たちに董卓討伐のための檄を飛ばした。

 檄の内容は以下の通りである。


大義を持って天下に告ぐ!

董卓、天を欺き君を殺して国を亡ぼす!

そのため宮中は乱れ、ダークサイドで満ち溢れている!

今!

天子の密詔を受けて義兵を集め、この巨悪を殲滅せんとす!

王室を助け、民を救われよ!

フォースと共にあらんことを!



 動かない英雄はただの英雄である。

 覇業を成した者は、常に3つのモノに恵まれていたという。


天の時(=オーダー66)と

地の利(=オビワン)と

人の和(=共和国)である


 まさに、曹操の檄は、この時を得ていた。


 国を憂いていた各地の英雄たちは、曹操の檄を見て、続々と河南へと駆けつけてきた。


 今まさに漢王朝は風雲急を告げようとしていた。


第四章 完

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