第41話 社畜生活はお断り

 劉備署長と関羽部長が駆けつけた現場ですが、被害者の督郵は木に縛りつけられており、加害者の張飛容疑者が太い木の枝で複数にわたって殴りつけていたとのことです。


 劉備署長は凄惨な現場を見て、重苦しい口調で張飛容疑者に事情聴取を行いました。


「張飛・・・お前なんてことをしたんだ。何故このようなことをした?」


 劉備署長から事情聴取を受けた張飛容疑者は次のように述べました。


「あ、兄者。これは・・・その・・・あれです。コイツの村に来てからの態度がどうにも気に入らなくて・・・ついカッとなってやってしまったんです。はい。」


 張飛容疑者は今回の件は出来心だったと容疑を認めており、暴れることなく黙って劉備署長の問いかけに答えました。

 そしてまた、次のようにも述べました。


「それにですね。この野郎は劉備の兄貴を陥れるために、嘘ばかりを書いた訴訟を都に送ったんです。そのことに我慢できずに犯行に及んでしまったのも今回の件を起こした要因の1つです。はい。」


 以上が張飛容疑者の言い分となります。

 続きまして、張飛容疑者の事をよく知る村の酒場の店主は、後に訪れた都の警官たちにこう話していました。


「そうですね。村では普段から気性が荒い人で知られていましたね。決して悪い人ではないんですけど・・・その・・・酒癖が非常に悪くてですね、酒を飲むと手をつけられなくなる人でしたね。はい。・・・正直いつか、こういうことをやっちゃう人だなぁーとは思っていましたねぇー。はい。」


 はい。ではもう飽きてきたんで、いつもの文章スタイルに戻させて頂きます。

 読者の皆様、つまらない子芝居を書いてすみませんでした。



「そうか・・・理由はわかった。張飛。お前の気持ちはよくわかる。しかし、早まった真似をしてくれたな。これで我らは国から追われる立場となってしまった。」


「兄貴・・・すみません」


 劉備は張飛を責め立てていたが、実は内心は違った。


(よくやった張飛!もっとコテンパンにしといてもよかったぞ!!)


 劉備は顔には出さなかったが、督郵にキレていたのだ。

 せっかく出迎えの準備をしてやったのに、訳のわからんいちゃもんをつけられ、賄賂まで要求されたのだ。怒らない方が異常と言えるだろう。

 しかし、劉備は督郵に手を出すことが出来ずにいた。

 仮にも村の警察署長である。警察官が人を殴る蹴るなど出来るはずがなかった。

 そのため、劉備は悶々としたやるせない気持ちで日々を過ごしていたのだ。

 しかし今日、そのやるせない気持ちを張飛が晴らしてくれた。

 劉備は手を叩いて張飛のしたことを褒め称えたかったが、立場上それはできずにいた。


「張飛。とりあえず督郵殿を解放してやれ。」


「・・・わかりました。」


 張飛は劉備の言う通りに、督郵を縛っていた縄を解こうとしたが、関羽がそれを制した。


「張飛よ。その男を解放する必要はない。」


「えっ?」


 張飛は驚いて関羽の方を向き、劉備もまた関羽の方へと顔を向けた。

 関羽は劉備と張飛に自分の考えを述べた。


「この男は権力をたてに我らを脅迫し、応じなければ陥れる策を講じた下種野郎です。このような男を助ける必要などありますまい。」


「しかし、それは・・・」


「ならば兄者に尋ねましょう。兄者はこのような下種野郎どもに頭を下げるために命がけで頑張ってこられたのですかな?」



 劉備は関羽の問いにはすぐには答えずに、頭の中で整理をした。

 考えに考え、そして一つの結論に至った。


(あれ?もしかして私だけじゃなくて、2人とも同じことを思っていたのか?)


 それは劉備が前々から思っていたことだった。

 退屈で仕方なった日常を抜け出すために日々思っていたことだった。

 劉備が思っていたこと。それはこうであった。


(この会社辞めようかな?)

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