第40話 嘘つきは政治家の始まり

「ふざけやがってーー!」 .


 張飛は怒りを爆発させて、タアッ!トウッ!と拳を振り上げ、門をぶち破った。

 そして、デェェェェェン!!という効果音とともに張飛は督郵の宿に侵入した。


「督郵!出てこい!ぶっ殺してやらぁ!!」


 張飛の怒りはピークに達しており、ドシンドシンという足音を響かせ、督郵を探し出すべく、宿内を歩き回った。

 あまりにも派手な侵入のため、宿の警備員がすぐに駆け付けた。

 そして、宿の警備員たちは張飛の姿を見て驚いた。


「止まれ!・・・ってあなたは張飛様!あなたが侵入者なのですか!事情は知りませんが落ち着いてください!止まってください!」


「おうおう!お前らには用はねぇ!引っ込んでな!」


「駄目ですよ!待って!止まって!うぁあああーーー!」


 張飛は警備員たちをものともせず、彼らを振り払うと張飛は宿の奥へ奥へと進行した。

 そうこうしている内に、今度は督郵の護衛たちが張飛の前に姿を現した。


「今度は督郵の護衛たちか・・・ということは督郵の奴の棺桶はすぐそこだな。」


「督郵様の寝床を棺桶扱いするとは許せん!田舎の一役人風情が調子に乗るなよ!!」


 督郵の護衛たちは獲物を手に一斉に飛び掛かった。

 しかし、酒に酔っているとはいえ、張飛は天下屈指の豪傑。

 督郵の護衛ごときが相手になるはずもなかった。

 飛び掛かる護衛たちに拳の雨を浴びせ、彼らを壁に吹っ飛ばした。


「この命知らず共が・・・お前たち用はねぇんだよ!!」



 張飛はさらに奥へと進むと、他の部屋に比べて意匠が豪勢な寝室を見つけた。


「ここだな!ぬぅおりゃーーー!!」


 張飛は寝室の入り口を思い切り蹴とばして、寝室の中へと侵入した。

 寝室には督郵がおり、美女と一夜を共にしたようだった。


「ほう!随分とお楽しみだったようじゃねぇかこの野郎!」


「き、貴様は劉備の子分の張飛!何故このような無礼な真似を働いておる!者どもであぇーーー!!」


 督郵の叫びも空しく、彼の部下たちはその場には誰も現れなかった。

 戸惑う督郵に対して張飛は大笑いで答えを述べる。


「残念だったなぁ~~!お前の部下たちはさっき、俺がけちょんけちょんにしてやったぜ!!」


 この張飛の発言で督郵の顔は真っ青になった。

 真っ青顔の督郵に近づき、彼を捕まえると、宿の庭へと放り投げた。

 そして、庭にあった縄を手に取ると、督郵を近くの木に括り付けた。


「何をする!縄を解かんか!帝の使いのわしにこんな事をしてただで済むと思うなよ!!」


「黙れっ!お前たち都の役人どもはペテン師の集まりだ!泥棒、人間のクズ、チンピラ、ゴロツキ、犯罪者だ!そんな糞虫どもは俺が粛清してやる!」


 張飛は督郵にあらん限りの罵詈雑言を浴びせかけると、近くにあった太い木の枝を手に取り、枝で督郵をピシリッ!と一発叩いた。


「わーーーお!!」


 督郵は張飛の強烈な一撃で叫び声を上げた。


「まだだ!まだまだこんなもので済むと思うなよ!!」


 そう言って張飛は何度も何度も督郵を木の枝で叩いた。

 督郵の懇願を無視して、何度も何度も叩いた。

 そして、督郵の声が枯れ果て、物も言えぬぐらいに弱った時にようやく彼らが到着した。


「止めるんだ張飛!!」


 劉備はすぐに止めるように叫んだが、時はすでに遅し。

 あまりにも遅い劉備と関羽の到着であった。

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