第8話 使えるモノは仕えるべし

 劉備玄徳、関羽雲長、張飛翼徳の3人は意気投合していた。

 張世平の策が見事に決まったのだ。


 劉備が義勇兵の部隊を立ち上げようとしていること。その資金源が確保できていること。

 この2つの事は関羽と張飛の両名に衝撃を与えることができた。

 驚く2人に劉備は母から教えられたばかりの自分の家系のことを述べた。


『使えるモノは何でも使う。』

『利用できるモノは何でも利用する。』


 劉備はこれらをモットーに生きてきた。

 そんなモットーを基に生きている劉備が自分が漢の皇帝の血を引く者だという最高の素材を使わないはずがなった。


 劉備が帝王の血を引く者だと聞いて関羽はこう思った。


(『秀才で人徳ある人物である』ということは知っていたが、帝王の血を引く者だとは知らなんだ。確かにこうして目の前で劉備玄徳という人物を見て、その話を聞けばそれも頷ける。偽物である可能性はまずないだろう。それに、もし万が一にも偽物だったとしても、この人物に仕えて民を救うことが出来るなら後悔はない。・・・これは決まりだな。)


 一方、張飛はこう思った。


(こいつは凄ぇ男だ!ただの情けない男だと思っていたが、とんでもない人物だった!こいつに・・・いや、この方に力を貸す以外の選択肢はなしだ!決まりだぜ!)


 関羽は少し考えてから、張飛は即座に結論を出した。

 時間は違ったが結論は一緒だった。

 2人は互いに顔を見合わせて頷くと関羽は劉備にこう言った。


「劉備殿。我らの主君になって下さらぬか?」


「主君にですか?」


 今度は劉備が驚きの声をあげた。

 劉備は「2人から力を借りられれば良い。」その程度の事しか考えていなかった。

 そのため、2人と主従の関係になるなど思ってもみなかったのだ。


「左様。我ら2人は以前より、あなたの様な人物に仕えたいと常々思っておりましたのでな。劉備殿。我らの主君になって下さらぬかな?」


「し、しかし、私はまだ何も成し遂げていない人物です。いきなりあなた方の主になるなど、話が飛躍し過ぎですよ。」


 劉備がそう言うと張飛が少しれったそうにした。

 張飛が焦れったさのあまり劉備に話かけようとしたが、関羽がそれを制した。


「まぁ落ち着け張飛。・・・劉備殿。確かにいきなり我らの主になってくれなど無茶振りが過ぎましたな。それでは我らと『義兄弟の盃をくみかわす』というのはいかがかな?」


「主従の誓いではなく義兄弟の誓いですか?」


「左様。とりあえず今は義兄弟の盃をくみかわし、劉備殿を長兄として我らが付き従う。そしてあなたが一国一城の主になった時に改めて主従の誓いを結ぶ。これではいかがかな?」


「それならばよろこんで。」


「では決まりですな。盃をくみかわすのは後日として、今日は互いの親交を深めるために酒を飲むとしましょう。」


 関羽はそう言うと張飛に目配せをして、大量の酒を奥から持ってこさせた。

 そして、酒をさかなに皆で朝まで話をしたのであった。

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