第17話
リュディウスは近くの河で魚を釣っていた。
今頃、娘が客人ファルラと懇ろになっていることだろう。
あの男なら娘を人として添いとげるだろう。
元の人間に戻すことが出来るとは思わないが、それでも、あの男となら娘も幸せだろう。
「ねえねえ、おじいさん。
不意に声をかけられて、振り向くと少女がいた。
しかし、そのスィールの顔には悪魔のような笑みを浮かべていた。
リュディウスには、そんな表情のある
「リュディウス殿ではありませんか?」
かつて、リュディウスの部下として働いていたヤディオスであった。
「おお、ヤディオスではないか」
「お久しぶりです、先輩。急用なので失礼ですが、このあたりに天使が……」
「儂のユーリじゃ。お主も知っておろう」
「いえ、そうではなく、我々教団に害をなす野良天使がこのあたりに逃げ込んだという一方がもたらされ、掃討の最中であります」
敬礼したまま、淡々とヤディオスは語る。
「よろしければ先輩にも御足労願えれば」
「断る。儂はもう引退した身じゃ。関係ない」
「そうはいっても」
「うるさい。帰れ」
凄みのある言葉に屈強なヤディオスも後ずさりする。
「スィール、引くぞ」
「はぁーい。この近くに
「それは先輩のユーリ号だ」
そんな彼らの前に、二体の天使を引き連れた男が現れたのだった。
「貴様か」
「ユーリ、ファルラ殿を連れて逃げろ」
「承知イタシマシタ」
ユーリは突然背中に翼を生やし、ファルラを抱きかかえて飛び上がった。リサも続く。
「先輩!」
「お前に、ユーリ殿は渡さん」
リュディウスは力の限り、ヤディオスの腕をつかみ引き留める。それは、老人と思えないほどに力強しものであった。
「ユーリ殿は儂の希望じゃ。お前なん……」
「ジャマ」
リュディウスはあっさりと事切れた。
スィールの振るった鞭が、リュディウスの身体を粉砕したのだった。
「なんてことをするんだ」
「だって、ジャマでしょ。早く男と天使を追うわよ」
「少し待ってろ」
ヤディオスは深くこうべを垂れる。そして、切り刻まれた死体の前に膝をつき、三度頭を下げた後、地面をはぎ取って死体に撒く。
それが教会における死者の弔い方であった。
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