第12話

 翼の生えた少女たちは、ユーリを引き離し、建物の中央にある、まるで処刑台のようなものに彼女を固定していく。

 淡々と、虚ろな表情で。

「お父さん……」

 ユーリの叫びは、男たちの野太い声に掻き消された。

 闇色のローブを纏ったものたちが、円形に取り囲み、口々に呪文を唱える。

 その声がまるで呪詛のようにユーリの身体を蝕む。

 彼女のうめく声も、もはやリュディウスには届かない。

 ただただ、男たちのボソボソという呪文が場を支配する。

 そして、ユーリはまるで死んだように動かなくなった。

 「ユーリ!」

 天使エンジェルたちに捕らえられたリュディウスには、近付くことさえ許されなかった。ただただ、その痛ましい姿を晒し続けていた。

 しかし……。

 突然、リュディウスは解放された。

 両脇にいた二体の天使。その頭部が消し飛び、身体は地に崩れ落ちていた。

 目の前には、拘束具も、着ていたものさえない、全裸のユーリがいた。

 ただし、翼を背負って。

主人マスター刷り込みイン・プリンティング

 抑揚のない声で。

 そして、彼女の姿は変化していく。あおい鎧を纏い、抜き身の長剣を手にしていた。露出した顔と太腿、二の腕には細かな文様と文字が刻まれていた。

主人マスター。命令ヲ」

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