第11話

「まさに、悪魔のささやきじゃった」


 ユーリのことを聞きつけた教団幹部が、娘をめとりたい、という話が人づてにリュディウスに舞い込んできた。


 欲が出た。


 何より娘のためだ。高位の聖職者が相手ならば、苦労することはなかろう。学業も剣術も、もっと高みを目指すこともできる。


 もちろん、リュディウス自身の地位や名誉という打算はあった。


 ユーリとともに赴任していた辺境の街から、かつて学んだ都へ出ると、奇妙な話になってた。


 てっきり大聖堂で行われると思っていた結婚式は、郊外の施設で行われるという。少なくともリュディウスが都にいた頃には影も形もない建物だった。


 巨大なせんとうを抱えた石造りの建物は、華やかな教会建築と対照的に質素なものであった。周囲に三重の城壁が巡らされ、いくつものものやぐらが配置されている、物々しい建物であった。


 リュディウスはかつての部下を見つけ問いただすが、彼も訳知らぬまま警備に付いているだけであった。


 幾重に、しかも千鳥配置された城門。それをくぐり、建物の中へと案内される。


 そこは、とても結婚式が行われるような雰囲気ではなかった。血なまぐさい臭いが鼻につく。


 突然、リュディウスたちは拘束される。その時まで存在すら知らなかった「天使エンジェル」に。

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