(II)

第7話

 再び道なき道を進むファルラたちを、明け方近くに急な雨が襲う。


「くそっ」


 やつらなんかの相手をしたのが悪かったか。目標としていた村までは遠く及ばない。


 リサに飛んでもらうという手も、れた翼には通用しない。彼女の靴底は今、大地を踏みしめている。


「リサ、周囲は?」


 彼女は首を横に振る。


 雨粒のせいか湿気のせいか、飛行のみならず探知能力においても、天使は雨に弱い。今日のような日は人間並か、それ以下でしかなかった。


「マスター、風邪、ヒク」


「リサもだろ」


 れたがいとうの下にリサを押し込めようとするも、翼は雨にさらされたまま。


「ごめんな、リサ」


 ぬかるんだ大地は、真っ白なリサのブーツを泥で染め上げていた。


 それでも、雨宿りできる場所を探すため、二人は歩き続ける。


 時々、翼を震わせるリサ。


「もうすぐ、もうすぐだから」


 人間と比べれば圧倒的な力を持った天使が、この時ばかりは弱々しく見えた。

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