ぼっちの引っ越し
住所的な引っ越しと同時に自分の荷物も移動させなければならない。イギリスでは大きめの自動車を借りて友人や家族に手伝ってもらって自力で引っ越しすることが多いらしい。
しかし、悲しいことに私には友達と呼べる現地人もいなければ、気軽に連絡が取れる日本人もいない。いわゆる、ぼっち。悲しいね、ぼっち。
しかも、現地の免許証は持っているけれどもペーパードライバーだから自分で運転することも難しい。それに、イギリスではほぼマニュアル車しか走っていない。
オートマなら運転できたかもしれないが、マニュアルなんて運転することになったら、久しぶりすぎてペダルを踏み間違えてしまうに決まっている。命が危ない。
という理由から引っ越し業者に頼む以外の選択肢はなかった。家具やら荷物やら重いというのも理由の一つだ。
最初に見積もりの人が家にやってきて、荷物の量から見積もりが提示され、それに納得出来たら引っ越しをお願いする仕組み。合い見積もりを取るのが一般的だ。
今回は梱包は自分で終わらせて、荷物を運ぶだけ運んでもらうだけの作業をお願いした。段ボールや緩衝材なども含めた料金設定であった。
見積もりは白人男性が早口の英語で(もちろん全部は聞き取れない)いろいろと説明してくれた。そして、引っ越し当日には移民と思われるガッチリ体系の男性2名が汗を流しながら真面目に作業にあたってくれた。
勝手な見解だけれど、ホワイトカラーっぽい白人男性ががっぽり儲けて、下っ端の作業員は安く使われてるのかな・・・と想像してしまった。作業員も体力勝負の仕事であるからには給料もそれなりに設定されていてほしい。と、蚊帳の外から思う私であった。
ところで、なぜ移民だと分かったかというと、作業員の人は私とは英語で、同僚とは英語ではない言葉で話していたからである。英語もネイティブのアクセントとは違っていて、早口すぎずに聞き取りやすかった。
引っ越しの日は土曜日だった。作業員の二人は非常にテキパキと猛スピードで荷物を運んでくれて、予想よりも大分早く引っ越しが完了した。「家で子供が待ってるからね。早く終わらせよう!」という家族思いのセリフを聞いてしまい、土曜日にわざわざすみません、と心の中で謝ったのはここだけの話だ。
さて、引っ越しの時に日本人として頭を悩ませていたのがご近所への挨拶だった。日本だと隣近所にちょっとした手土産を持参してナニトゾヨロシクという感じだが、果たしてイギリスはどうなんだろう、と。インターネットで調べたところによると、挨拶をする人しない人、両方いるらしい。そして、手土産という習慣はなさそうであった。
悩んだ結果、隣の家にグリーティングカードを入れようという結論に至ったのだが、引っ越し中になんとお隣さんが声をかけてくれたのである。
しかも、だ。声をかけてくれたのは正確にはお隣さんではなく、お隣さんの家に遊びに来ていたおばちゃんだった。
荷物運びの途中で、おばちゃんの挨拶から始まり、「ちょっと待って、呼んでくるワ」と実際の住人の男性を引っ張り出してきてくれたのだ。おかげで自己紹介も軽くできたし、お互いの顔とさらにはお隣さんの友人(おばちゃん)の顔まで確認できた。
これで引っ越し完了。めでたしめでたしである。と、なるはずであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます