太陽王の想区
「……濃ゆい沈黙の霧でしたね、レイナの姉御」
「まったくね。エクス、ついて来てる?」
「僕は大丈夫だよ。でも、タオが見当たらないんだ」
周りを見渡すエクスとシェイン。霧がかかっているが、周りは森と、正面には石でできている三角の建造物がちらほらあると分かる。
「タオ兄、何処に行ったのでしょう?」
「うるさいのがいないと、静かでいいわね」
レイナの言葉に苦笑するエクス。霧が晴れてきた。
森から叫ぶ声が聞こえる。
「聞こえてるぞ!ここに倒れてる人がいるんだ、すぐ加勢しろ!」
「クル、クル!クルルルアアアア!!」
「ヴィランが来た!大変だ、助けなくちゃ!」
エクスは剣を抜き放って駆け出した。
「あの人を助けるわよ、シェイン」
「了解です、姉御」
ぐったりした少女を庇って戦闘が始まった。
「これで、全部かしら」
「強かったけれど、意外と少なかったですね。この人がヴィランを巻きながら逃げたのでしょう」
大きな剣を握りしめたまま木にもたれかかった少女を見た。
「君、大丈夫?」
「お、気付いたみたいだな」
「私は月の国の王女。助けてくれてありがとう、しかし私は魔女から呪われた王子と戦士を助けなければなりません。早く祭壇へ行かないと!」
フラフラとしているが確かな足取りで進む。
「一人じゃ危ないぜ」
「これだけはタオに同意よ。同行するわ」
「僕も助けに行くよ」
「シェインもちょうど、女性が振り回せる大剣に興味があります」
「重ねて感謝いたします。目指すのはあの建造物です」
「あの包囲網を突破するわよ!」
五人は一丸となって、戦士とヴィランを退けて進む。
正午が迫っていた。
王女の剣は月の光を帯び、ちからを貯めて放った光は、
王女の性格らしく、戦う者を見守り、共に進むための力を持っていた。
共に戦う者が王子であったなら、どんなに健気なことであっただろう。
太陽王伝承 登月才媛(ノボリツキ サキ) @memobata-41
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