簡単な真実

夢蒟蒻

簡単な真実

ソレはとても簡単なこと。 

子供がクリスマス前に、ほしいプレゼントを母親にではなく、サンタクロースにお願いするように。 

それでも人々はソレを実現不可能な幻想ととらえている。 

サンタクロースへのお願いは、母親にも届いているというのに。 





ある日、友人が犬の散歩中に空からビー玉が落ちてくるのを見たらしい。一つや二つではなく、なんと全部で48個。 

彼は驚いて呆然とその様子を眺めていたが、散歩していた犬はというと、すぐにビー玉に近づいて、その中から一つを選び出したかのようにくわえて持ってきたのだと言う。 


その持ち帰ったビー玉による不思議体験は、彼と酒を飲む毎に聞かされる。最近は作り話も交えてきたのではと思うほど、とんでもない話が飛び出す。 

一昨日聞いたのは、ビー玉が梟に姿を変え、その背中に乗り宇宙を飛び回ったという話だ。 


それでも、彼の話は信じることにしている。 

本当はどうだったかなんてことにはあまり意味がないだろうし、 

それになにより、はじめて逢った彼は、ビー玉を握り締め、泣いていたのだ。 

小学2年生のときだったか。溺愛していた犬が死んだのだと言う。 

そのビー玉は何か、と泣いている少年に聞いたのだ。


彼はそれから25年、いつもビー玉の不思議な話をする。犬への愛が行き場をなくしたのだ。 

それでも、彼の話は信じることにしている。 






ビー玉の不思議な話を聞くたびに思い出す。 

あの日は、プレゼント袋からいくつかビー玉を落としてしまってね。 


なんて言うとあなたはどう思うだろう。 

ソレは、とても簡単なこと。

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