感情の研究 -後悔-

夢蒟蒻

感情の研究 -後悔-

博士は喜んだ。 

ついに研究が実り、人の感情の正体を明らかにすることに成功したのだ。 



研究は苦難ばかりで、「感情」と一つに括ることはとてもじゃないが出来ない、そんな複雑な処理パターンの連続だった。 

『こんなの、外の現象の把握の方がよっぽど簡単じゃないか』 

それが博士の成功の鍵だった。 


それから、感情の正体を明確にするために、それに纏わる現象を洗い出した。 

脳以外全てを把握することで脳を理解する、そんなアプローチを続け、ついに、感情の正体を明らかにしたのだ。 



とはいえ、まだ洗い出された現象は博士本人に関わるものだけ。一先ず自分の感情についての正体がわかっただけ。 



しかし、博士の研究はこれで最後になる。 





博士は自分が今、喜んでいるという、この感情の正体を見てしまったのだ。 


そこにあったのは、研究に対する真摯なものなど一つも無い、醜い醜い、見るに耐えない自分ばかりだった。 



次々と映し出される醜い自分。 




もう見たく無い!もう止めてくれ!! 



その感情の正体もまた、ハリボテだらけの醜い自分。


博士の感情など無視して姿を現す博士の感情。 


研究をしてきたことへの後悔と、自分の醜さへの絶望で満たされた博の感情の正体は、彼が放った火で焼けて見えなくなった。

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