感情の研究 -理想-
夢蒟蒻
感情の研究 -理想-
博士は喜んだ。
ついに研究が実り、人の感情の正体を明らかにすることに成功したのだ。
研究は苦難ばかりで、「感情」と一つに括ることはとてもじゃないが出来ない、そんな複雑な処理パターンの連続だった。
『こんなの、外の現象の把握の方がよっぽど簡単じゃないか』
それが博士の成功の鍵だった。
それから、感情の正体を明確にするために、それに纏わる現象を洗い出した。
脳以外全てを把握することで脳を理解する、そんなアプローチを続け、ついに、感情の正体を明らかにしたのだ。
とはいえ、まだ洗い出された現象は博士本人に関わるものだけ。一先ず自分の感情についての正体がわかっただけ。
しかし、博士の研究はこれで最後になる。
彼は明らかにした感情の正体を、つまり偽物の事実の記憶を、自分に植え付け、理想の感情を手に入れたのだ。
彼は、満たされた。
自分が長い間研究してきたという事実を手に入れ、彼は満足した。
彼の研究は終わる。
この研究に成功し、満足した人はこれで137人目だ。
感情の研究 -理想- 夢蒟蒻 @yume-kon-nyaku
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます