最終話

 魔王だけど彼女ができた。

 特別な実感なんてものはないが、浮足立ったような感覚が今一度それを確認させる。


 彼女とは、恋人とはなんだろう。

 常に隣にいてくれる女性、俺を立ててくれる女性。そういう意味では間違いなくガーネットちゃんは俺の彼女である。だがそれは魔王とその従者という立場がもたらすただの世辞であり、恋人同士になったからと言って変化があるものではない。

 男女交際と言えばもっと明確な何かがあるような気もするが、彼女も居ないまま魔王になってしまった俺に察するあてはなかった。それは同様に、彼氏、改めこの魔王のため盲目にその天命を捧げてきたガーネットちゃんにも知る術はないだろう。


 だからこそ魔王とその従者という立場や関係が変わるでもなく、一人ソワソワしている俺が馬鹿らしくもある。

 これから迎える決戦に備えるにおいて余計な緊張が邪魔でしかないというのは、しかし守るべきものがある心強さに勝ることはない。守るべきものがある、その使命感こそ彼の者の強さを引き出す要因であるならば、魔王として配下の彼らから授かる忠誠の重みも、ガーネットちゃんの存在も、俺は十分に守るべきものがある強さを得た。その上で脅威を削ぐ理屈的な策の数々、多少良心が傷付こうともはや負ける要素はない。


 これまで恐れ、危惧してきた結果が今、形となって覚悟に変わる。

 これまで蓄えてきた力に後ろめたいものなんて一つもない。全てが勝つための最善の策であり、彼女の存在が俺を後押ししてくれることだろう。そのためにこの日まで、恐れながら手段を模索してきたのだ。


 負けるはずはないと心の中で自分に言い聞かせながら、豪奢な扉を潜り抜けてくる者の登場を静かに待ちわびる。

 きっと、配下の彼らがその身を賭して彼の者の体力を削り、この魔王のためお膳立てしてくれているはずだ。ならば彼らの王として、俺はただ勇者を倒す。善や悪も関係ない、勝利こそ不甲斐ない王に付き合ってくれた彼らへの唯一の恩返しであろう。


 魔王として生きる以上不条理に恐れられ命を狙われる立場だ。あるいは義務的に力を蓄えてきた側面もある中、配下の彼らの忠誠が後押しとなってくれる。

 浮足立ったこの感覚さえも、過度な緊張で足元を救われないための余裕だとも思えば幾分か気も楽になった。

 愛すべき彼女が居るという、勝ち組ならではの心の余裕ともいうべき優越感は俺に根拠のない自信を持たせた。ただそれに溺れることのない更なる自信は勝利のみを確信させる。


 魔王として生まれ変わったその瞬間から得た自信ではない。魔王として培ってきた日々が与えてくれた自信、配下の彼らが忠義を尽くしてくれたからこその自信だ。そして何よりも、傍らの彼女が居てくれたからこそ守るべきものがある強さを得た。


 ならば、この空間の唯一設けられた扉が、配下の彼らから聞かせられるノックの音も無く悠然と開こうとも、もはや恐れる必要はない。


「――待ちわびたぞ、勇者ユーリ」


 先ほどまでの緊張が嘘のように、不思議と穏やかな心地で俺は歓迎する。

 玉座から扉にかける距離に響いた歓迎の声は一言一句が反響して彼の者の耳に届いた。緊迫感が飲み込んだ空間に遮る壁や声も無く、俺の声が途切れると余韻ばかりが耳に残る。ただ静かに、その強者ともつかぬ青年が佇んでいた。


 見た印象で言えば幼げでもある。この世界の命運がよもや彼の肩にかかっていようとは思えないほど、少なくとも俺の目には年若く見えた。だが彼こそが勇者なのだと、言葉や印象ではない説得力がその佇まいには秘められている。


 背に提げられた一振りの剣。

 この魔王自らの手で奪い、今もこの地下深くに眠る聖剣ほど存在感は感じられない。勿論、勇者ともある存在に相応しい代物ではあるのだろうが、勇者が聖剣を手にした時ほどの威力は持たないだろう。彼の手に剣が収まるだけで威圧感があり、されど聖剣ではない安堵感でプレッシャーは軽くなる。


 未だ玉座に座ったまま片肘を着く余裕を見せるのも魔王としての演技であれど、心の内にある絶対の自信が多少はそれらしくも見せてるのかもしれない。

 当然、本物の俺のことなど知るはずもない勇者が、魔王然とした俺に憤怒を見せるのは仕方がないことだった。


「――村のみんなを返せ……!」


 彼の言葉もまた同じく、扉から玉座まで遮るようなノイズも無く俺の耳に届いた。その怒りは彼を衝き動かした大きな要因だ。

 彼の怒りとは他でもない、彼の故郷のことである。この魔王自らの手で滅ぼしてみせた。怒りの矛先が魔王へと向かうことは必然であり、多くを語ることさえも不要なほど怒りの全容は垣間見える。


 勇者と魔王、その極限の戦いを終えた暁に帰るべき場所を失った喪失感とは、何物にも言い難い。

 その心情は存分に共感できる。謂わば前世に二度と帰ることは出来ない俺と似たようなものだ。否、失ったものと奪われたものの差とは、比較にならないほどの怒りや失意が付きまとうだろう。

 ただ、後戻りができない状況というのは勇者も魔王も違いはない。彼の盲目な怒りや悲壮な失意に付け込むこともまた俺が企てた一つの策だ。

 俺の前世の意思がどんなに俺自身を非道と責め立てようと、魔王としてあり続けた覚悟に誓って決めた道を曲げたりはしない。

 未熟な俺を魔王として支えてきてくれた忠誠に誓って、この戦いの勝利を必ずやものにして見せる。


 この期に及んで俺の良心が顔を出すことはない。非道な虚偽や誇張でさえ貪欲な勝利への策略と割り切れた。


「ああ、いいとも。返してやろう。返してやるさ」


 俺は勇者の言葉を待っていたかのように、手振りを加えながら大げさに話を進めた。勇者にはこれまでの旅路に募らせた怒りと苦悩もあり俺の答えが随分と淡白に見えたことだろう。

 あくまでも俺の優位を見せつけるように玉座からは離れず、敢えて勇者の望みどおりに筋書きを立てた。


 ガーネット、と一言命じれば彼女は話を合わせたとおりに魔法を唱え始める。勇者はこの魔王の口ぶりもその側近の行動も訳も分からず訝しげな視線で見届ける。彼からしてみれば想像もしていなかった展開で呆気に取られてしまうのは致し方ない。

 よもや忌むべき魔王が簡単に要求を呑むとは想定できるはずも無く、あからさまに裏があるとも取れる行動を容易くさせてしまうのは勇者が勇者たる所以とでも言えるのだろうか。要求をのみ込むという行為に誠実さを見てしまうのは勇者という存在の良心によるところなのだろう。俺ならば不審に見える行動が見受けられれば制止、もしくは妨害も辞さない。


 無論、俺も簡単な事運び以上のことを求めてはいない。今更勇者の良心的な部分を垣間見たところでこの後の決着が変わることはないはずだ。性格的な部分を探るのであれば、奇襲も無くこの玉座の間に正面から挑んだ実直な意思はいかにも勇者らしい。

 仲間を取り戻そうという正義感もエリスに聞きおよんだ以上でも以下でもなく、所謂勇者たる存在として俺の想像の中とそれほどの相違はなかった。

 ともすれば、この策略が支障をきたすことは少ないという安堵感も少なからず浮かんでくるが、絶対に負けられない戦いを前に一片の油断も無い賢明な思考を研ぎ澄ます。


 敗北は許されない、敗北してやるつもりもない。その意志はこの魔王の配下すべての者が掲げてきた。勇者と魔王が引き合う、その必然の運命を迎えるためにこの手を汚してきたのだ。

 ガーネットちゃんは用意ができたと目配せして、俺は何も言わず頷いて答える。勇者を中心として小脇に魔法が展開され、貧相な衣服を纏った人間たちが怯えた様相で立ち並んだ。


「み、みんな……! エリス……!」

「ユーリ!」


 それぞれ互いの確認をすると声を明るくし、存在を確かめるように駆け寄りあった。ガーネットちゃんに呼ばせたのは勇者の故郷の者たちだ。その中には彼の恋人のエリスも居る。

 感動の再会といったところか。この魔王を見ることも無く笑みを零す者さえ居た。夫婦、あるいは親子たちが身を寄せ合い抱き合っている。勿論恋人同士も例外ではなく、勇者とエリスも肩を抱く。

 俺からすれば、等しく空しい喜びだ。


「どうだね、久し振りの再会は?」


 俺は一人彼らを拍手で迎え、再会の味を聞いて見せる。喜んでいたのも束の間、わざとらしく目を引くような歓迎をするこの魔王の存在を見て喜々とした者は居なくなった。

 畏怖、もしくは狼狽した表情の通り、彼らの疑問を表すのは一つだけである。

 それを俺に尋ねようというのはエリスではなく、村の長たる者でもなかった。


「……なぜ、素直にみんなを返す」

「なんてことはない、再会の感動を見させてもらっただけだとも」


 俺がおどけた様に嘯いて見せては、勇者の表情はより険しくなる。

 彼がこの場所に来た意味として仲間を取り返すことは大きな目的である。それをこんな冷やかし方をされては疑念も強くなるだろう。


「馬鹿にしているのか?」

「馬鹿になどしないさ。この魔王とて並の感性くらいは備えているつもりだ」


 おどけた様にも聞こえるかもしれないが、それは未だ俺が捨てきれないもの。俺が魔王として未熟な所以だ。

 自分の意思ではどうにもならない、変えようとしてもそれを拒むのはやはり自分の意思だった。

 未熟ゆえに、悪しき行いに度々後ろめたさに心を痛めてきた。だがそんなことは言い訳に過ぎない。

 彼らからすれば俺の意思に関係なく、忌むべき怨敵であることは変わらないのだ。


 この感性のおかげで、彼らの恨みのおかげで自分に納得してきたというのも事実ではある。

 ただ死んだだけで、魔王になったことを受け入れられるはずがなかったのだ。

 それをここまで支えて来てくれた存在。未熟なりに頑張ってみようなんて、おこがましくも思っていた。

 彼女、彼らの期待に応えるため、俺に敗北は許されない。勿論、死にたくもない。死ぬのは怖い。

 もとより、俺がここまでしてきたのはただ生き残りたいがためである。そこに大それた大義名分があるのではなく、忠誠に応えるという責任が付きまとうだけだ。


 あるいは、責任なんて考えることがそもそもそれこそおこがましい考えなのだろう。

 生まれ変わって魔王になったことで崇められたり恨まれる対象になり、そこに責任を感じようとしたところで俺の独り善がりなのは分かりきっている。魔王になってしまった事実はどうしようもない。魔王になってしまった事実を俺が恨んだところで今更変えられようもないだろう。

 だからと言って開き直れない理由ならば、自分なりの答えを得た。


 思えば、俺がこの世界に来てからの時間など、これから魔王として生きていく時間を考えれば所詮一握りの時間なのだろう。だが短くもあり長く感じてしまうのは、あまりにも激動的すぎる日々の所為だろうか。

 俺が魔王であり、そこに勇者が居るように、俺の命は常に狙われている。ただ死ぬのが怖いからと、後ろめたさを押し殺して対策を強いてきた。


 当然、そんな経験が前世にあるはずがない。現代社会に飲まれる一般的な一介の日本人が、こんな漫画のような生活をしていることなど考えられもしない。

 この魔王の中の人に至っては、いい年をしておいて彼女すらできたこともない一般的以下の人間なのだ。

 魔王として生きた短い時間、されど前世の何年分にも及ぶ感覚は、前世で経験したことも無い内容の濃い日々に時間の感覚ぐらい大雑把にもなるだろう。気が狂わず自我を保っていられただけましとも見るべきか。


 とにかく、それくらいは激動的であり、その中で自分に責任を課してしまう理由は前世で俺に無かったものを得たからに他ならない。勇者が故郷の者たちに囲まれ、彼らが安堵した顔を見せている今と同じく、仲間という存在ができたからだ。

 前世の記憶を引き出しても何ものにも例え難い、厚い忠誠をもらっているからこそ信頼できる仲間の存在。当然、家族やそれに準ずる心を許せる存在は居た。それとはまた違う意味で今の俺たちは繋がっている。


 何よりも、俺はこの世界で責任を分け合う存在ができた。

 常にこの魔王の傍らに付き添ってくれたただ一人。

 自分で言ってしまっては空しいが、前世の俺には持ち得ることも無かった存在だ。


 俺はおもむろに玉座を離れる。

 勇者の表情には強い警戒が見れた。


「この魔王が魔王であるように、勇者ユーリ、貴様は勇者だ。恐らく、他の誰にも負けぬ強い意志を持っているのだろうな……さりとて、勇者といえど人の子、当然恋人も居る」


 肩を抱き合う勇者とエリス、俺がその存在を示唆したところで勇者は庇うように力を加えた。一歩ずつ歩み寄る魔王に警戒を強めるのは当然のことだ。


「守るべきものがあるからと、その女は言った。勇者が自分たちを救うことを信じて、守るべきものがあるからと根拠もない自信を宣ったのだ。説得力など皆無だが、この魔王も嫌に納得してしまってな……」

「それで、何を言うつもりだ……?」

「この魔王もまた、守るべきものを見つけた」


 悠然とした足取りで隣まで近づいたところ、見せつけるようにおもむろに片手で抱き寄せる。俺の不意な行動に小さく声を荒げていたことなどこの期に及んで気にしている場合でもないか。

 ガーネットちゃんは凛とした佇まいこそ乱しはしないが、俺の腕の中で狼狽した表情はわずかに赤みを帯びていた。

 戸惑っているのはガーネットちゃんだけではなく、警戒半分に勇者も訝しんでいる。


「守るべきものがあることが貴様の強さだというなら、守って見せろ」


 勇者と魔王の戦いの中で、その背にした彼らを守れるのなら。

 この極限の戦いにこれだけの人数を守って戦える余裕があるのなら。


 ガーネットちゃんには戦いに巻き込まれたとしても自分の身を自分で守れるくらいの力がある。勇者の背に身を寄せる彼らとは違う。

 その中で戦う。人質としての役目を彼らには果たしてもらう。

 勇者は俺の意図に気づいて嫌悪感をにじませながら焦りを見せた。


「みんな、その扉から逃げるんだ!」

「――逃げれると思うか、この魔王の本拠で」


 扉の先にはマルクを含め、村人程度には後れを取ることはない兵士たちを配置してある。

 もはや逃げ場はない。勇者には彼らを守りながら戦う以外に選択肢はないのだ。

 彼らの表情は一層と恐怖を露わにし、同様に罵倒をも飛ばしてくる者も居た。

 卑劣などと、彼らには言うだけの権利がある。


「何とでも言うがいい。我はこの争いに勝利するためならば手段を選ぶつもりはない」


 この戦いに勝つために今まであらゆる策を講じてきたのだ。それを今更変えることは出来ない。彼らの村を元に戻してやることなど出来るはずがないのだ。

 俺が醜い真似をしてきたことなど俺自身が誰よりも知っている。だからこそ勝たなければ、他の誰よりも俺自身が報われない。

 悔しそうに歪めた勇者の表情を滑稽と笑うことは出来ないが、この戦いの勝利に近づいていく実感を認めることは出来る。


 守るべきものがある強さ。俺が守るべき忠誠と、彼らの存在。

 俺に守られるまでもなく、彼らは自らの手で自らを守り、自らの意思で自らの忠誠を守ることができる。

 勇者の背後に守られている彼らが、果たして魔王の軍勢とどう違うのか、もはや言うまでもないだろう。


 俺は独りでに魔法を唱え始めた。

 威力としては大きな力を持ってはいない。しかし、力を持たない人間を襲うという意味では十分な脅威となることだろう。そしてこの中に俺の破滅の意思を防ぐことができる者は一人しかいない。

 彼は慌てて剣を構えた。


 俺は白々しく標的をずらして魔法を放つ。

 勿論、勇者ともある存在が小威力程度の魔法を断ち切ることなど容易く、剣の一振りによって防がれた。だが俺は攻撃の手を緩めない。


「よく守って見せた。だが、次はどうだ?」


 先ほどに比べては大きな威力を発揮する魔法。

 具体的には、この場の村人程度であればその半分を消滅させるくらいの威力があるだろう。


「貴様ああ――!」


 勇者の逆上を買う。

 あるいは、漫画やゲームの中で見た勇者と魔王の戦いには相応しくない、それが開戦の合図とは、俺という魔王を評するにはちょうどいい気がした。



 ◆



 かくして、勇者と魔王の戦いは幕を閉じる。

 決着の付け方すらも小汚いというか。守りながらの戦いに攻めあぐねる勇者が背後の村人たちに気を遣わせてる隙を見て、ガーネットちゃんが転移の魔法で俺を勇者の背後に回させた。後は俺の最大の魔法でとどめを刺した訳だが、当然後味は良くない。

 この世界に来て初めて直接この手で人を殺めた。その事実は俺の中で大きな意味になるだろう。一応、気を遣ったわけではないが俺の魔法は村人たちに届くことはなかったようだ。勇者が上手く守ってくれたのだろう。何の気休めにもならないが、なぜか胸をなでおろしてしまう自分が居る。

 決着の瞬間、エリスは足取り重く勇者の下に駆け寄っていた。既に息が小さい勇者を抱き寄せて涙を流す姿は居た堪れなかった。


 少なくとも、爽快感なんてものがある結末ではない。

 それでも、配下の彼らのため、傍らの彼女のため得た勝利なのだと自分に言い聞かせて納得させる。

 勝利を得た後のガーネットちゃんの称賛の声は右から左に、頭の中を空しく抜けていく。扉からぞろぞろとマルクと兵士たちも駆けつけ、村人たちは勇者の死を悲しむ間もなく再び恐怖に突き落とされる。その中でエリスだけは勇者を抱きかかえたまま涙を流していたのは印象的だった。

 恋人として、勇者に最後まで寄り添っていた。


 勝利の高揚の勢いに任せて、恋人らしくガーネットちゃんにキスをしてみた。

 驚かせてしまったみたいだが、拒まれはしなかった。

 顔を離すとおめでとうございますという言葉だけ、言われて微笑まれてしまった。


 胸がぽっかりと空いた感覚だ。

 この世界に来てから掲げていた目標を果たしてしまった空しさだろうか。

 人をこの手で殺めたというのに、それが全て賞賛に変わる。

 それを咎められるのは俺自身だけということなのだろう。


 俺は魔王だ。

 魔王だけど彼女ができた。

 俺が魔王である前に、前世の意思がなければ彼女と付き合おうなんて考えはなかっただろう。

 俺は魔王としては未だ未熟かもしれないが、前世の意思を失くしてしまおうなんて考えはない。

 俺が俺の意識を失くしてしまえば、ガーネットちゃんと付き合うこの幸せを失うからだ。

 今更になってガーネットちゃんと付き合ってるのだという実感がわいてきていた。


 前の世界では彼女ができないと嘆く男もいるだろう。

 他ならぬ俺自身がそうだった。

 俺は少しだけその彼らに対して優越感を持っている。

 一度彼らにも教えてやりたいものだ。

 彼女ができないと嘆くくらいなら、魔王になってみては如何だろうかと。


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