初めての従魔&夢幻属性魔法

 ピピピピッ!

 通知音が鳴った。レベルアップしたようだ。何だか遅いような気がする。

 モンスターを倒しましたという通知がないのも気になる。やはり現実だからなのか?

 次の瞬間、ブワンッ!という音を立てて、レンの目の前に大きな黒いウィンドウが表示された。



レベルアップしました!


ステータス


レン  大賢者


Lv 3


HP 1850

MP 2410

EXP 180

NEXT 166


ATK 176

DEF 154

MAT 282

MDF 246

AGI 204

LUK 126


《状態》

《装備》

天羽々斬剣(片手剣) 魔王錫(杖)

《所持品》

〈アイテム〉

〈武器〉

天羽々斬剣(片手剣) 天叢雲剣(片手剣) 魔王錫(杖) 

〈防具〉

《従魔》

《特殊技能》

炎・氷・雷・水・大地・風・神聖・暗黒・無属性攻撃魔法第二段階まで 炎・氷・雷属性付与魔法二段階まで

夢幻属性魔法〔幻夢小迷宮 蜃気楼実体化 惨劇幻想実現 魔法干渉(制限)〕 呪文詠唱高速化 探索魔法〔瞬間移動 脱出 透明化〕

魔法消去魔法 従魔入手可能 能力値透視

《称号》

孤高の一匹狼 半無感情 半ニート半廃人 鈍感野郎



 以前のステータスと比較するように表示してくれないので、少々分かりづらいと思ったが、驚異的な伸びだということはわかる。

 特にMPは400以上上がっている。9999も夢ではない。

 特殊技能の中では夢幻属性魔法に一つと、そして能力値透視というものが加わっている。

 使ってみないと分からないため、今度出番があれば使ってみることにしよう。

 称号は相変わらずだ。『孤高の一匹狼』は二つ名みたいでいいが、まあ次の半無感情はいいとして、他の二つが……。

 (ていうかこの状態で敵とかいたら見えないよなあ~。)

 あ、フラグ立てちゃったと思ったがもう遅い。

 ウィンドウを閉じると、水色の敵が……水色の……スライムがいた。少し大きいが、拍子抜けしてしまった。

 「ケルベロスとかじゃなくてよかった。」

 強くそう思っている。ウィンドウを閉じた瞬間襲い掛かってくるようなことがあれば悲惨だ。死にはしないと思うが。

 「やっぱり初めての従魔はこいつだよな。」

 今更ようやく従魔のことについて思い出す。別に一生いなくてもいいとは思っていたが、色々便利になる気がしてきたのだ。

 レンは何の恐怖も抱かずにスライムに向かって歩く。スライムの頭上に『スライム』と赤い文字が表示された。種族名のようだ。つまんねえなあ。

 スライムは威嚇のつもりなのか少し体を膨らませるが、レンにとっては何でもない。

 こんなに膨らむんだなと感心しながら、手をかざす。

 スライムの体内に凄まじい量の魔力が流れた。服従契約魔法である。

 溶接でも行っているかのように火花が散り、スライムはもう力尽きた。

 それでもなおレンは呪文の詠唱をやめない。

 ちなみに呪文はすべて覚えるわけではない。魔法を使いたいと思えば、自然と声に出すことができるのだ。

――――――詠唱がまだ終わらないので、呪文詠唱高速化を使用。

 使ってもMPが減らなかったことから、この特殊技能はMPを使わないようなので、長い呪文には使うことにする。攻撃魔法で詠唱が聞こえなかったらちょっとあれかなと。

 二倍速の詠唱によりやっと終了。スライムは晴れてレンの配下となった。

 もう寝ており、村に到着して宿に泊まるまで荷物となることだろう。

 レンはこのスライムを『インフィ』と名付けた。

 「スライムだっていつかはペガサスになるのさ。」

 <答え> ならない。

――――――――――――

 「遠い!遅い!疲れた!眠い!このスライム地味に重い!」

 何のことかと言うと、村だ。村の距離だ。最後らへんは気にしないでほしいのがレンの願いだ。

 歩いても歩いても村に到着しそうもない。

 もう辺りは暗い。夜になっている。これはどうもおかしい。

 間近にあるはずなのに距離が縮まらない。

 しかも回復魔法やアイテムを持っていないレンにとっては長距離の移動は致命的だ。 

 (おかしい、おかしい……マ・テ・ヨ?)

 レンが勘付いた。この状況を説明できるのものが、今のレンの知識で一つだけある。

 (遠方に村を発見、歩く、歩く、スライムを仲間にする、歩く、歩く、距離近くならない、歩く……これはまさか……)

 (シ・ン・キ・ロ・ウ?)

 蜃気楼。早い話が色々あって本当はないものがあたかもあるかのように見えてしまうこと、レンをはじめとするありとあらゆるものを絶望させる一つの方法。

 発見時の希望、その他諸々が、蜃気楼だと分かったときにあっという間に失われる。そして絶望となって降りかかってくるのだ。

 だが、レンにはまだ希望がある。当の本人も気づいているだろう。あの村にたどり着く一つの方法。

 それは、あの忌々しき蜃気楼を実体化する方法だ。

 「使ったことないけど・・・呪文詠唱がなさそうだからこのまま言えばいいのかな?夢幻属性魔法・蜃気楼実体化!」

 少しかすれ気味の声を頑張って出し切る。一回水属性攻撃魔法を使って水が飲めないか検証してみたが、すこぶるまずかった。

 (これ何にも反応がないと恥ずかしい奴だな。)

 その後、無音の時間が流れた。汗がにじみ出てくる。

 だが次の瞬間、蜃気楼が薄いピンク色に染まり、そして外見は元通りになった。

 MPを多く消費したのか体がだるくなったが、気力等々を振り絞って大地属性攻撃魔法第二段階(ルボーデスと詠唱した)を使用。

 自分がいる位置から始まる村までの滑り台を作り、後は運に任せた。自分の考えの意外な柔軟さに少し驚いた。てか本当にこれ攻撃魔法かよ。

 (おっ、滑り始めたぞっ!)

 シューーーーーーーーッッドンッ!

 滑ったというか落ちたというか滑り落ちたというかよくわからなかったが、投げ出されて硬い地面に落ちたような気はする。ケルベロスの一撃より痛いかもしれない。

 流石に眠気も少しなくなってしまったが、宿屋に行くまでの力はもうなかった。

 

 インフィを見ると、まだ寝ているようだ。荷物もちゃんと手元にあった。

 こいつにこんな度胸がある限り、自分の命も安泰だと少し楽観視した。

 「ステータス。」

 何かが不安になってステータスを少し除くと、何とMPが2410→2260まで減っていた。何とと言っても基準がないので、燃費がいいのかどうかはよくわからないが。

 道具を盗まれるなどということも忘れ、目覚めた時の光景を予想しながら、レンは静かに眠りについた。

 そんな中彼を見ているものは・・・誰一人いない。

 彼が重要なことを気付くのは次の朝になるだろう。

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