第4話
朝、スッキリとした気持ち良い感覚で目覚めると、胸の上で可愛い寝息と心地の良い体温が伝わってくる。目を開けるとエミリアが俺の身体の上ですやすやと眠っている。
疲れているのか、時々寝苦しそうにしているが、指で頬っぺたをぷにぷにとして遊ぶ。
「にゃにしているのですか……」
「気持ちいエミリアの肌を楽しんでいる」
「まったく……まあ、いいですが……」
「ところで、身体はどうだ?」
「身体中が痛いですし、寝床がよくありません。まあ、先輩の上は温いのでまだましです。地面が硬いから他じゃ寝れませんし。雨風が防げる場所が手に入ったら、やはり住居環境の改築が必須ですね」
「まずは出入口の扉と椅子や机、調理道具の制作だな」
「では、今日はそれでいきましょう。まあ、竈くらいなら私でも作れますのでそちらは任せてください」
「わかった。なら、俺は……」
「ベッドを作ってください」
ベッドか。木で作ると問題があるし……いや、まてよ? キノコで作ればいいじゃないか。柔らかく弾力のあるキノコで菌の拡散をしないようにすればいい。
「できそうだな」
「本当ですか?」
「そちらは任せてくれ」
「お願いします。それと抱っこしてください。まともに立てません」
「すまん」
エミリアを抱き上げて少し移動するとフラン達三人が抱き合っていた。こちらに気付くなり、震えて少しでも距離を取ろうとする。
「ああ、昨日の私の声が聞こえていたんですね。あれは貴女達も通る道ですから、諦めてください。ですが、ましにはできますから、ちゃんと準備をしていれば大丈夫です。それに私達は死にませんからね。しばらくは私が相手をしますので、三人はサポートです。だから安心してください」
「それ、安心できないわよ……」
「ステラは三人でいられるなら、なんでもいい」
「それにどうしようもありませんし……頑張ります」
ステラとフランはあっさりと納得した。アナもしぶしぶだが、納得しているようだ。
「それに病気とシーサーペントに襲われた時に命を助けてくれましたから……これぐらいなら大丈夫です」
「確かに、恩返しをする」
「それもそうね。私や二人を助けてくれたわけだし、うん」
どうやら折り合いはついたようだ。俺は鈍感やヘタレじゃないので、据え膳食わぬは男の恥という奴だ。まあ、やれる時を逃すと後悔するからな。前はそれで騙されて後悔したしな。
「さて、俺はベッドを作るので三人は浜で食料確保を頼む」
「エミリアは?」
「私は木材の切り出しと乾燥を行います。それが終ってから窯を作ろうと思います。ですので、いい石があったら取っておいてください」
「ん、任せて」
「護衛は私がやるわね。不死になったから、いくらでも戦えるし」
「頼む。しかし、気を付けろよ」
「うん」
これで問題がないので、エミリアと一緒に森へと向かう。
「ああ、先輩。薬をください。痛み止めと回復薬を」
「わかった。咥えろ」
「あ~」
エミリアの口に大きな指を差し込んで薬を流し込む。すぐに喉を鳴らして飲み込んでいく。
「んぐっ、んんっ……ふう。ついでに甘味もください」
「いいぞ」
舌を絡めてぺろぺろと舐めてくる。それはそれで気持ちがいい。
「ほら、仕事だ仕事だ。後でたっぷりと飲ませてやる。色々とな」
薬を出すところは自由だしな。そう思っていると、飲み終わったエレミアはしっかりと全て舐め終わってから小さな口から大きな指を引き抜いた。唾液の橋が名残惜しそうに消えていく。
「さて、木を切って乾燥させますので少しお待ちください」
「ああ、頼む」
エミリアが俺から飛び降りて、森へと駆けていく。すると沢山の木々が斬られて倒れていく。それらはすぐに枝を落とされ、聖剣によって水分を奪われて乾燥していく。
後はこれを使える形に切り分けて組み立て、ベッドなど家具へと変えていく。日本では釘を使わない建築法があるので、それを利用して作っていく。
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