第3話








 船に居た病人の治療を終えて外に出たわけだが、これからどうするか悩む。いや、やることは決まっているのだが、この島の内容が全然わからん。今いる浜辺からすぐ先は森であり、気温は熱いのでヤシの木みたいなものまである。あれがヤシだったら水分の確保はどうにかなるが。

「先輩、どうしますか?」

「それ、まだ続けるのか」

「おや、嫌ですか? 私は結構気に入っているのですが……」

 首をかしげてくる。とても可愛いので撫でてやると、怒られた。

「撫で方が雑です。もっと丁寧に。後、力を入れすぎです。殺す気ですか。あの子たちならぺっちゃんこです」

 エミリアの言葉にひっという声が三人からあがる。確かに力加減を間違えたらだめだな。

「わかった。それと呼び方は好きにしてくれ。変なのじゃなかったらな」

「残念です。色々と面白い呼び方をしたかったのですが……」

 ろくでもない奴だろうから、くぎを刺しておいて正解だ。っと、そろそろ本題に入ろう。すでに日が落ちかけている。

「たしか、フランツィスカでよかったよな?」

「はっ、はいっ」

 俺に呼ばれてビクッと身体を振るわせて返事をする。すぐに残りの二人がフランツィスカの前にでてきた。

「フランに酷い事、だめ」

「私が代わりになるから……」

「二人共……だめです……私が……」

 互いに互いを庇いあっている。少し待っても話し合いは一切、決着がついていない。

「無限ループですね」

「そうだな……って、何を作っている」

「砂のお城です」

 器用に砂でお城を作っているエミリア。本当に自由人だな。まあ、別にやりたいことをやれと言ったのだしいいのだが、彼女達をどうにしてほしい。

「まずお前達は……あ、やばい。エミリア」

「なんですか?」

「お前、俺の位置は常にわかるか?」

「もちろんです。私の魂は先輩の体内にありますからね」

「なら、そっちの紫の奴をつけるから、船に残っている衣服や毛布とか、必要そうなのを取ってきてくれ。先に確保しておいた方がいいだろう」

 これから野宿することになるのだから準備は必要だ。

「私達に必要ですか?」

「俺達にはいらないだろうが、三人にはいるだろう」

「さっさと作れば服以外はいらないのでは……?」

「試すか」

 不老不死の薬を作るイメージをするのだが、力が発動しない。ポーションやハイ・ポーションぐらいまでなら作れるが、万能薬とは作れない。

 無理矢理にでも発動しようと思えばできそうだが、嫌な予感がする。

「駄目だ。作れない」

「ああ、やっぱりですか」

「何が原因か、わかるのか?」

「ええ、もちろんです。私も何度も経験しましたし。言ってしまえば魔力切れといったものです」

「だが、俺のにはコストがないぞ」

「ですが、個数制限はかけれられているのでしょう。鑑定でもあれば……」

 創造コストがない代わりに個数制限がかけられているのか。確かにばかすか作ってたよな。

「あるわよ」

 声に振り向くと、紫髪を胸辺りまであるツインテールにしている女の娘。服装はかなりぼろく、所々破れていて、下着が露出していたりもする。その下着もかなり汚れているが。

「あんまりみないでよ」

「これからたっぷりと見せてもらうんだ。慣れろ」

「死ねっ」

 蹴りかかってくるが、足を掴んで逆に逆さ吊りにしてやる。

「アナちゃん!」

「アナ、無茶しすぎ」

 二人も俺に寄って来て謝ってくる。

「ごめんなさい。許してあげてください……」

「ん、お願い。代わりにステラを玩具にしていい」

「駄目よ!」

 先程と同じ無限ループだ。

「ああ、もううるさいっ。黙れっ」

「「「ひゃっ!?」」」

「とりあえず、俺の質問に答えろ。それからお前達の境遇を決める。話し合いは後で……個別に行うが、お前達次第で奴隷からも解放してやるし、殺したりもしないから安心しろ」

 震えながらこくこくと頷く三人を座らせてから、確認していく。

「そじゃあ、まずは名前を教えろ。フランツィスカからだ」

「わ、私はフランツィスカ・ステルヴィア。フランって親しい人には呼ばれています」

「わかった。フランだな」

「はっ、はい……男の人に呼ばれたの、はじめてです……」

 顔を赤らめて恥ずかしそうにしているが、可愛いのでよしとする。フランは紫かかった銀色の髪の毛の子で身長は130ぐらい。

「年齢と祝福は?」

「16歳です。祝福は……ありません……」

 祝福なしということは俺と同じ転生者かもしれない。いや、ただ単純にないの、転生者以外でも複数持ちは一つにつき10年かかるのかもしれない。

「で、ですから……その……身体で、愛玩動物として……頑張りますから……ひどいことは、役立たずの私に……」

「フラン……」

「ん」

 二人も悲しそうにしているが、フランの扱いはこんなんだったんだろう。

「望み通り、愛玩動物として可愛がってやるし、ひどいことはお前達次第だ。これは三人全員だが、お前達には選択肢をやる。一つ目は俺の妻になって一生を捧げて添い遂げることだ。妻としての役目を全うするのなら、家族になるのだから自由もかなり許す。奴隷からも解放するし、衣食住は保証しよう」

「つ、つま……」

「お嫁さん?」

「えーこいつの?」

 フランとステラは反応が良さそうだ。しかし、もう一人は嫌そうだ。

「二つ目はこのまま奴隷として過ごす。そうだな……お前達に使った薬の代金分を支払ったら解放してやろう」

「無理じゃない!」

「無理じゃないだろう」

「あ、あの……薬は何を使ってくれたんですか……?」

「それぞれに万能薬とハイ・ポーションを5本だな」

「ハイ・ポーションはともかく、万能薬って……」

「ん、数千万から億単位」

 普通に考えて奴隷が集められる金額じゃないし、一生を捧げることになるだろう。

「それと女の奴隷としての役目も全うしてもらいますよ。私が大変ですから」

「一つ目とほぼかわらないじゃない!」

「それが何か? 選択肢を与えてあげれいるんですから、いいほうでしょう。死にたいのなら別にいいです。三つ目は死ぬことです。役割を果たさぬのなら、死ぬほうが楽ですから。私達も貴女達もね」

「っ!?」

 何時の間にかエミリアの剣が彼女の首筋に添えられており、残りの二人が必死に縋り付く。

「アナちゃん、駄目です」

「死んじゃ、めっ」

「わかったわよ……一つ目でいい。それが一番楽そうだし……借金もなしよね?」

「ああ、もちろんだ。病気になってもすぐに治してやる」

「でも、相談はさせて」

「どうぞ。決めて欲しい条件もあれば教えてくれれば出来る限りは受け入れよう」

 三人で相談はすぐに終わったようだ。

「三人で妻になります」

「条件はアンタ専用で、他の男にやらないこと。三人で一緒に過ごさせること。後、可愛がること」

「人としてちゃんと扱う。物やペットは嫌」

 色々とと条件をつけられたが、それはいってしまえば人として幸せにしろということだった。

「最後に、ちゃんと愛情を注いで欲しいです……」

「私達、愛情なんて互いにしか注がれたことなんてないし。他の奴等は私達を道具やペット、家畜としか思ってなかったし」

「ん。フランだけが奴隷の私達にも優しくしてくれた」

「先輩、いいですよね?」

 この子達も愛情に飢えているのだろう。扱い方を間違えなければちゃんと妻になってくれるだろう。

「もちろんだ。これから家族になるわけだしな。それに俺もお前達と似たような経験があるからな。ああ、こちらからの条件追加だ。裏切るのは駄目だ。それ以外なら家族になるのだから大切にする」

「それと、私が年長で一番最初の妻、お姉ちゃんですから、敬い尽して私を楽させてください」

「ちょっと待ちなさい。年齢だったら私だって負けないわ。こんななりでも31歳なんだけど」

「え? 紫ちゃんがですか?」

「本当に?」

「そうよ。私は31歳。祝福は呪術と鑑定。代償はあるけれど相手を呪殺したり、呪いを与えたりできるの。これでもステルヴィアに奴隷にされてから結構、やばいこともやってきたんだから」

 呪いと鑑定か。どちらもかなり強力な祝福であり、二つ持ちなんて滅多にいない。後天的に技能系のは得られることもあるそうだが。

「もしかして、肉体年齢を下げていますか?」

「代償でね。基本的に等価交換に近いから、相手に老化の呪いをかけると私も老化する。でも、ちゃんと触媒を用意して身代わりを作っておけばそっちが引き受けてくれたりするの」

「ああ、もしかして他の人よりも進行具合が遅かったのはそれで時間を巻き戻していたのですか」

「そうよ。エリザベスを含めて四人。触媒なんてとっくに尽きてるし、どんどん身体が縮んでこんな貧相な子供体系に……やってらんないわ」

「違う。貧乳はもとから」

「ステラ?」

「事実。それに……」

「アナちゃんは優しいですから、全員にかけてましたよ。だから、その分自分の代償が多くなったんです」

「へぇ~」

 ニヤニヤしてみてやると、顔を真っ赤にした後、すぐにもどって碧色の瞳をジト目にしてこちらを睨んできた。

「うるさいっ! ちょっと指定範囲を間違えただけなんだから!」

 これがツンデレという奴だろう。生じゃ初めてみた。思わず抱き上げてみた。

「はな~せ~」

 大人しく降ろしてやろうとして止めた。

「ところで名前はなんだ?」

「アナスタシアよ」

「それでアナか」

「アナって呼ぶな。ターシャかスターシャでいいわよ」

「いや、ここはアナでしょう。先輩のアレなんですから」

「下ネタかっ! 変態がっ!」

 ああ、そういうことか。確かに女の娘(?)をアナ扱いはアレだよな。

「いえ、瞬時にそれに気付くアナの方が変態ですよ。流石なアナ」

「っ!? この……年上を敬いなさいよっ!」

「ふっふっふっ、それなら私を敬わないといけませんよ。なんせ私は、百を超えていますからね!」

「ばばあじゃない」

「殺す」

「あぶなっ!」

 アナは俺の腕を軸にして俺の腹を蹴って上に逃げた。すぐそこをエミリアの魔剣が通り過ぎ、俺の身体を正面から切断する。一瞬で結合されるが、斬られたことには違いない。

「俺の服がっ!」

 腰みのはお亡くなりになった。これはまずい。しかし、二人はそんなことなんて気にしない。

「呪え呪えっ」

「ふん。聖剣と魔剣を持つ私には無意味……」

「誰がお前にかけるか!」

 俺の身体に触れているアナ。なんだか身体の中がから力が溢れてきて叫びたくなる。同時に身体中が熱くなって暴れ回りたくなってくる。

「ちっ」

「はっ!」

 逃げていたアナが凄い速度で接近し、エミリアを殴り飛ばす。しかし、彼女は光の槍を複数放つ。アナは光の槍を避けて接近する。

「あわわ、ど、どうしよう!」

「ん、止める?」

「そうだな。お前ら、そこまでだ」

 命令して強制的にやめさせる。反省の意味も込めて正座で座らせる。しかし、女性に年は禁句だな。

「しかし、若返ると思考まで戻るのか?」

「そうよ。私もだいぶ子供っぽくなってるし……」

「そうか。まあ、仲良くしろ。これから家族になるんだからな」

「嫌です」

「嫌よ」

 二人共、仲良くする気はないようだ。これはいただけない。家族だし、妻達には仲良くしてもらいたい。家庭内の不和はこれからの生活に困るからな。

「そうか。なら、二人纏めて喧嘩する暇もないほど犯してやる。流石に互いのあられもない姿をみたら喧嘩はしないだろう」

「えっと、麻酔や媚薬とかもなしですか?」

「なしだな」

「つ、痛覚の遮断は……」

「当然、なしだ」

「仲良くするから勘弁してください」

「えっと……わ、私も仲良くするから……ね?」

「なら一回で勘弁してやろう」

「「え」」

「フラン達も仲良くしてくれたほうがいいだろう?」

「仲良くするのが一番です」

「同意」

「というわけでお仕置き一回は確定だ」

 二人は互いを睨み合うが、ここは大人しくしてもらう。

「それで鑑定は……まあ、後でいいか。とりあず、エミリアはコートを貸してくれ」

「別にいいですけど……って、ちょっとまってください」

「またん」

 エミリアからもらったコートを腰にまいて大事な部分を隠す。こればかりは仕方ない。

「なななんてことをっ!」

「お前が俺の最後の服を斬ったのが悪い。後で返してやるから」

「いりませんよ!」

 喚くエレミアを無視して、話しを続ける。

「ステラの自己紹介だ」

「ん。ステラはステラ。年齢はしらない。生まれた時から玩具として売られてた。祝福はごみの加速」

 生まれてからずっと奴隷ということは両親も奴隷なのか、生まれてすぐに売られたってことだろうな。どちらにしろ、幸せにしてやれるように頑張ろう。

「しかし、加速って強そうだがごみなのか……?」

「ごみ」

 加速って使い道が色々とありそうだがな。

「先輩。加速の祝福は基本的に自分だけに作用し、応用も幅広く使いこなせれば先輩の言う通り強いです。ですが、加速の力にその人の身体が耐えられたらの話です。例えば思考や視界を加速すると脳が負荷によって壊れます。足を加速すれば筋肉の酷使によって筋肉が断裂するでしょう。加速の祝福は前提として人が使いこなせるものではありません。使い慣れればコントロールはできるでしょうが、確実にそれまでに死にますので使えない祝福です。自爆特攻ぐらいはできるでしょうが」

「それって、俺なら運用できるようにしてやれるってことか?」

「そうですね。先輩の力なら、ステラを上位の実力者にすることはできるでしょう」

「ほんとう?」

 俺に抱き着いてこちらを見上げてくるステラ。やっぱり、祝福が使えるようになるのは嬉しいのだろう。

「ああ、本当だ。だが、少し待ってくれ」

「ん、待つ」

「まずは俺はアリウス。お前達のご主人様で夫だ。呼び方は……趣味に走るか。フランはお兄ちゃんで」

「お兄ちゃん……?」

「おお、いいな」

「変態めっ」

「嫌なら違うのでもいいぞ」

「いえ、お兄ちゃんはいなかったので、嬉しいです」

「なら、決定だ。ステラは……」

「ご主人様でいい。それ以外は考えられない」

 出自として考えると、それ以外の呼び方を押してもらってないのかもしれない。だが、お兄ちゃん呼びも捨てがたい。

「ステラがいいならそれでいいか」

「ん」

「アナは……」

「アナっていうな!」

「だが、断る」

「この変態がっ!」

「そうだな、やっぱりアナにはご主人様って呼んでもらおう。ステラはお兄ちゃんにしてくれ」

「なっ!?」

 前言撤回してステラにもそっちで呼ばせる。こっちの方が楽しめる。

「そうそう、私はエミリアです。私のことはお姉ちゃんと呼ぶように。年功序列でも私が上ですから」

「はい。お兄ちゃん、お姉ちゃん」

「ん、お兄ちゃんとお姉ちゃん。覚えた」

「ほら、アナも」

「ふふふ、いっちゃいなさい」

「ごっ、ご主じ……ごしゅん、さま……お姉ちゃ……やっぱり無理っ! ごしゅ、ご主人様はしかたないからいいけれど、こいつを姉と呼ぶのは嫌よ! だから、エミリアって呼ぶっ!」

 顔を真っ赤にして照れまくっている。可愛いい。

「駄目です。お姉ちゃんと呼んでください。ほらほら」

「くっつくな! 絶対に呼ばないから!」

 後ろからエミリアに抱き着かれて辛そうにしている。

「まあ、家族だからこれでいいだろ」

「待って。それじゃあなんで私だけご、ご主人様なの?」

「決まってるじゃないか。さっき喧嘩したお仕置きだ」

「良かったですね。身も心も捧げたら直してくれますよ」

「こいつだけずるじゃない」

「エミリアは別のお仕置きをするからな」

「や、まってください……」

「待たない。さて、話を最初に戻すが、俺を鑑定してくれ」

「そ、そうね」

 俺に抱き着いて懇願してくるエミリアを無視してアナに頼む。教えてもらった内容は砂浜の砂に書いてもらった。


 ありとあらゆる薬をコスト無しで創造する。

 神話級 残り使用回数0 回復日数100

 伝説級 残り使用回数4 回復日数50

  上級  残り使用回数50 回復日数10

  中級  残り使用回数100 回復日数1

  下級  残り使用回数無限 回復日数なし

 ※アンリミテッド:上級以上の物を作れる。使った後は下級と中級以外は全て回復日数×本数×2の計算式の間は使用不可。



 潜水薬とかは中級で、ポーションだと低級で、ハイ・ポーションは中級。エクストラポーションが上級で、エリクサーは伝説級だ。不老不死の薬や蘇生薬は神話級になる。ちなみに万能薬は伝説級だ。上級には各種解毒ポーションが用意されている。

 伝説級ですら安くて数千万から億単位らしいので、神話級とか値段がやばすぎる。

「どうしますか?」

「三人を殺すわけにはいかないから、アンリミテッドを使う。300日ぐらい、耐えればいいしな」

「それが安全ですね」

「えっと、どういうことですか?」

「もしかして、神話級の薬を私達に使うつもり?」

 不思議そうに聞いてくるが、自分達に使われる薬なら仕方ないだろう。

「そうだ。お前達にも不老不死の薬を飲んでもらう。これで死ぬことはなくなるからな。ステラはこれで加速が使えるだろう」

「不老不死の薬とか、最高じゃない! いいの!」

「ん、素晴らしい」

 アナとステラは大喜びだ。

「ステラはわかるけど、アナもか?」

「そうよ。だって、死なないのなら相手を呪殺できるじゃない。代償で返ってくる呪いはくそ高い触媒で防ぐんだけど、それがなくても私は死なないのよ。なんて素晴らしいの」

 戦闘力が跳ね上がるわけだし、確かに喜ばしいことであり、重要なことだな。

「じゃあ、早速飲んでもらうか。護衛は皆に任せたらいけるしな」

「それに細菌による攻撃も使えますしね」

「だな。まあ、この菌はきのこを作るためでもあるんだが……」

 椎茸とかマッシュルームとか、松茸とかな!

「不老不死なら、私も戦えるかな……」

「だいじょーぶ」

「だよね」

「じゃあ、作って飲ませるから並べ」

「ああ、それなら口移しで飲ませてくださいね。私もそれをやられたのですから、この子達も同じでお願いします」

「わかった」

「ちょっ!?」

「あう~」

「恥ずかしい」

 合法ロリの美少女三人を抱き寄せて順番にキスしながら、舌を入れて薬を流し込む。三人共、顔を真っ赤にして照れていてとてもいい。だが、フランは吐きそうになっていたのでキスしながら唇で押さえて飲ませておいた。これを零すとかありえない。もったいないからな。数滴でも数千万は軽く超えるのだ。

「んぐっ、んんっ!」

「んぐっ」

 アナは吐きそうになりながらも両手で口を押えてしっかりと飲み込んでいく。こちらを恨めしそうに睨み付けるが、涙目なので逆に可愛らしい。ステラはあっさりと飲み切った。

「……あぁ……」

 フランは放心してしまったが、残り二人は早速試すようだ。

「私は怖いから、ステラ、片腕だけでやってみて」

「ん。加速アクセラレーター

 瞬時にステラが視界から消えて衝撃波が俺達を襲う。俺は近くにいたフランとアナ、エミリアを引き寄せて庇うと、衝撃が突き抜けていった。

「大丈夫ですか?」

「ああ。三人は大丈夫そうだ」

「ありがとう。それよりも……あの馬鹿は片手だけっていったのに……」

 振り返るとステラが目を回して倒れていた。身体からは修復されているせいか、煙がでている。見るだけで気持ち悪くなるような酷い傷口が急速に消えていっている。

「本当に不老不死になったんだ」

「いっただろう。これで病気になることはあっても死ぬことはない」

「普通は病気もならなくなるはずですが、それだと不死を無効化された時に大変ですからね。耐性は手に入れておくべきです」

「そうね。不死に頼ってたら駄目よね」

 実は病気耐性を入れるのを忘れていたなんていえない。だって、体内に血清とかワクチンとか作りたい放題なんだからな。まあ、不老不死に病気とかは効かないだろう。その時点で固定化されているのだから。

「さて、それじゃあ服や備品を取ってきましょう」

「そうね。行きましょう。でも、ごっ、ご主人様……達は待っているの?」

「いや、俺は雨風が防げる場所がないか探すつもりだ」

「なら、フランに聞くといいわよ。最初、この辺りを探索していたはずだから」

「わかった」

 二人を見送ってからフランを正気に戻してステラを抱き上げる。

「大丈夫か?」

「ふぁい……そ、それで……なんでしたか?」

「雨風が防げる場所がないかってことだ。できれば森や川が近くにあるところだな。海もあるとなおいい」

 希望を思いっきり伝えてやった。

「贅沢ですね……でも、一つだけあります。洞窟なんですが、そこしか知りませんし、奥までいっていません」

「そうなのか?」

「モンスターが強すぎたんです。暗い洞窟の中で吸血蝙蝠や蛇とか虫がいっぱいで……先遣隊で残ったのは数人でした。その人から病気が広まって……」

 ペスト菌の感染者はそいつか。面白い。

「なら、そこへ案内してくれ」

「はい」

 一時間ほど歩くと、浜辺の端に岸壁が裂けて洞窟になっていた。ここが例の場所であるように、入り口が封鎖されてあった。

「どうしますか?」

「中に入る。だが、その前に……」

 細菌を作る。ペスト菌をさらに強化して致死性と進行速度をあげる。様々な毒も混ぜ込んで作り上げる。ただ感染能力は下げて、黒い霧みたいにして操れるようにする。

「フランはここで待っていろ」

「わ、私でも盾くらいにはなれますっ」

「じゃあ、一緒にいくか」

「はい! え? なんで抱き上げているんですか?」

「盾だからな」

 片手で抱え上げて暗視薬を作って二人で飲む。中に入ってそのまま進んでいく。天井には蝙蝠が沢山いたので、早速改良型ペストを放ち、虐殺する。死の風が辺りを縦横無尽に駆け巡る。後には大量の死体が落ちているだけだ。

 まるでイナゴの軍団みたいだが、ビジュアル的にはただの黒い風なのでこちらが上だろう。

「アナちゃんがみたら発狂しそうです」

「死骸を片付けないとな。ああ、いいことを思い付いた」

「?」

 細菌を操作して発光する食用キノコを作る。それらは魔物の死骸を取り込んで成長して洞窟を照らしてくれる。

「んん……」

「あ、ステラちゃんが起きました」

「おはよう。身体は大丈夫か?」

「おは。身体は大丈夫。ここ、どこ?」

「洞窟ですよ」

「ん、なるほど。死ぬことがないなら、倒せる」

「すでにほぼ倒したがな」

「ん」

 死骸から必要そうなものだけ回収する。肉とかは全部キノコが処理してくれたから、便利だ。

 拾いながら進んでいくと地底湖があった。水を確認すると真水だった。どうやら、ここから海にも流れているようだ。

「ここを拠点にするのがいいな」

「ん、いい」

「水場が近くにあるのは助かります。身体も洗えますから」

「風呂も作らないとな。というか、服は絶対必須だ」

「ですね」

 流石にエレミアのコートをつけているだけなのはまずい。どんな野蛮人なんだ。

「まだ先がある」

「まずはそっちにいくか」

「ですね」

 そのまま進むと今度は外にでた。入り江の場所にでたようだ。反対側には洞窟がなく、岸壁だけだ。砂浜もあって泳げそうだ。それに洞窟の方が高い位置なので真水が滝のように流れおちていてウォータースライダーみたいになっている。

「ここは遊ぶのによさそうだな」

「ですが、海の中にもモンスターは沢山いますよ?」

「ん、強い」

「大丈夫だ」

 俺は口笛をふいておく。その後は砂浜を歩いて安全かどうか確認していく。一応、邪魔なモンスターは全て排除しておいた。そうしていると海から鳴き声がした。

「あ、あれは……」

「危険」

 海にはシャチがきていた。

「大丈夫だ。アレは友達だ」

 海から頭を出して鳴くチシャとシャナの二匹に笑いかけながら要件を伝えるとすぐに動いてくれる。頼んだらはこの近辺のモンスターの排除だ。普通の魚はいいが、遊泳するのに危険なのはいらないからな。

「こちらはこれでいいから、後は洞窟の改造だな」

「凄いです……」

「海の悪魔と友達、流石ご主人様……ちがった。お兄ちゃんだ」

「そうだな」

 入り口に戻るとすでに沢山の荷物を持って二人がやってきていた。

「良い場所が確保できた。改造は明日だが、とりあず湧水もある」

「なるほど。こちらも服はなんとか確保しましたが、調理道具や調味料、食料は全滅でした」

「全部持っていかれていたわ。あいつらは感染者を閉じ込めて飢え死にさせる気だったのでしょうし、当然といえば当然ね」

「ベッドまでないとは思いませんでしたが……」

「ベッドまで持ち出されていたのか……」

「これでは固い地面に寝るしかありません」

「服以外は全滅だが、こちらは収穫があった」

「そうですか。それは助かります。さっさと私のコートを返してください」

「わかった」

 腰にまいていたコートをやると、エミリアはちょっと臭いを嗅いでから離した。

「これは洗濯し……面倒です。このまま着ましょう」

「おい」

「いえ、どうせ今夜は汚れるのですから別にいいでしょう。それにベッドがないなら、この服を下にひきます。不壊属性、つまり壊れませんから大丈夫だです」

「便利だな」

「まったくです。ところで、早く着替えてください」

「着替えたいのはいいが、サイズがない」

「……とりあえず、男物を巻き付けておいてください。布は確保したので、仕方ないので縫ってあげましょう」

「助かる」

「継ぎ接ぎだらけでも文句は言わないように」

「もちろんだ」

 嫁の手作りの服とか、最高じゃないか。楽しみにまっていよう

「というか、ご主人様は鑑定したらトリプルとかありえない祝福の数なのよね」

「そうなのか?」

「勇者は五つありますけどね。人類だと三つか四つでしたか」

「ええ、そうよ。トップクラスの数よ。って、不老不死も祝福に入るのでしょうし、四つね。おめでとう」

「嬉しくないな。俺は妻とスローライフを遅れればいい」

「野心はなしか。まあ、いいけれど……で、フランとステラは?」

「あの二人なら……あれ、いないな」

「洞窟の中ですか?」

「安全は確保……やばい。地底湖の中はまだだ!」

 急いで中に入ると、二人は地底湖の前で震えていた。彼女達の目の前には複数の頭を持つ巨大な蛇、それも毒を吐いている。

「ヒュドラですか、面倒ですね。アナは私に強化をしてください。先輩は弱体化をお願いします」

「わかった」

「しかたないわね」

 呪術による強化がされている間に俺のペストによる攻撃によって身体中が斑模様となり、暴れていく。ひょっとしたらこいつがペストをばら撒いていたのかもしれない。しかし、自らの菌でやられるのはどうなのだろうか? こちらがかなり強化したせいかもしれない。感染能力は低いが、体内に入った後の増殖率はかなり高くなっているしな。

「これでは簡単に潰せそうですね」

「強化した意味ってあるの?」

 振り返ればアナの腕がなくなっていた。すでに再生が始まっているようだが、かなり痛そうだ。

「ありますよ、たぶん」

「私の腕を代償としてくれてやったんだから、さっさと殺しなさい」

「ええ、お姉ちゃんに任せなさい」

「ふん」

 エミリアが突撃する。ヒュドラは毒の息吹を吹きかけるが、エミリアは完全に無視する。身体が溶けて爛れようとも接近し、魔剣を一閃する。全ての首が飛ぶが、一つだけ再生を始める。

「無駄ですよ。焼き尽くしますから」

 魔剣だけでなく、聖剣まで持って二刀流で滅多斬りにして最後は特大の光線を放つ。

「おい馬鹿っ!」

「あっ」

 光線はヒュドラを飲み込んで斜め上に向かって巨大な穴をあけてしまった。そのまま光線が突き進み、消えると暗くなりだして夕日がみえる。

「やっちゃいましたね……」

「これはお仕置きだな」

「えー許してくださいよ。事故じゃないですか」

「却下。普通に大技を使わなくても倒せたよな」

「ええ、まあ……でも、ここは姉としての威厳をしめすために……」

「なら、諦めろ。崩壊しないか怖いしな」

 大きな穴を確認するかぎり、断面が焼かれていて崩れる心配はなさそうだ。しかし、これで地底湖がプールみたいになった。ある意味ではいいのだろう。

「ところで、エミリア」

 毒は大量の解毒ポーションを流し込んで綺麗にする。後は洞窟の中に大量の魔物避けの薬をばら撒いておく。

「わかってますよ。とりあえず、食事の後で水浴びです」

「だな」

 食事はもう面倒だったのでヒュドラの切り落とした首の肉だ。解毒ポーションに漬けてから、リンゴ味のポーションとかと混ぜて柔らかくし、海水を入れて海藻と一緒に炊く。後は櫛を刺して聖剣の上でじっくりと焼く。そう、俺達は聖剣を調理道具にしているのだ。鍋とか竈とかもつくらないといけない。

 さて、焼けた肉はワイルドに素手で食べる。明日は森にいって木材の確保だ。生活用品を整えないとな。

 食事が終われば水浴びをする。俺は浴びて綺麗にしてから洞窟の一角を綺麗に細菌を使って削り取る。

「お待たせしました。三人はあちらで寝てもらいます」

 やってきたのはセーラー服姿で髪の毛を後ろに結って丸めて項がでるようにしている。

「一緒でいいのだが……」

「流石に最初は一人がいいです。死にそうですが」

「わかった。それでどうする?」

「先輩も、アリウスも初めてなんですから、ここは薬を使いましょう。怖いです」

「でも、お仕置きもこみだから一回はなしだな」

「まあ、いいでしょう。興味はありますし。でも、一回だけですよ。アリウスは大きすぎるんですから、何度もだと死にます」

「わかっている」

 エミリアを壁際にやって、そのままキスしていく。その後はやることをやりまくった。最初は絶叫のような悲鳴があがったが、後半からは別の悲鳴だ。


「この獣めっ。何回か死にましたよ。やる時は薬必須です。私でこれとか、三人だともっとやばいですからね」

「わるかったって」

「ふん。悪いと思っているなら甘味を要求します。労働には対価が必要なのです」

「労働って」

「何も間違っていません。今はまだ」

「わかったよ。それよりも最後は気持ち良かっただろ?」

「まあ、そうですね。薬は偉大です。素人でも十分にできるのですから。やりすぎると危険らしいですが」

「適量だしな」

「それよりも甘味を……って、何をしているのですか?」

「お望み通り、甘味をやろうと思ってな。別に身体からだせるのだから、どこからでもいいだろ」

「斬り捨ててやろうかとも思いますが、甘味になるならあまあいいでしょう。後でちゃんと別の甘い物も要求しますよ」

「ああ」

「まったく」

 面白半分でやったのだが、エミリアが無茶苦茶はまった。完全に搾り取られた。

「これからはこれでいきましょう。私は甘味が取れて幸せに。先輩は気持ち良くなって幸せ。ウィンウィンな関係です」

「却下」

「むぅ、残念です。ですが、楽しみもできたのでいいでしょう。身体が慣れたらもっと楽しいでしょうし」

 なんだかんだで距離はかなり近づいた。今も俺の上に寝転がってぐったり嬉しそうだしな。



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