第2話 北村潤の扉 壱
夢を見ていた。
あれはいつの話だろう。
父さんと母さんが笑って僕を迎えてくれる。
「ああ、こんな日々もあったなあ」
中学高校までは、親の期待に応えようと精一杯だった。どこで俺は選択を間違えたのだろう。
目の前の温かい光景がどんどん霧がかっていき、暗くなっていく。
「はっ!」
目をさますと真っ暗な世界だった。
そう、俺は、俺たちはピエロに質問に答えてもらう、と言われ何故か意識を失って—
「お、やっと起きたわね」
若い女。宮本梨咲が俺に声をかけてくる。
他の2人ももう目が覚めているようだ。
「あなたが寝てる間にね、私たちは目が覚めて周りを見てみたらこんな紙が落ちてたの」
と一枚の紙切れを見せてきた。
—————————————————————
Q1.あなたは、今何が欲しいですか?
答える時は心の中で強く念じてください。
大事な選択なので慎重に考えてください。
また、制限時間内に1人でも回答することが
できなければ連帯責任です。
他の者との話し合いは不可です。
—————————————————————
何だよこれ。ほんとにどうでもいい。
正直俺はそう思った。
そして、こんな質問で誰が生き残るのかきめようと考えるあのピエロへの苛立ちが抑えられなかった。
そんな俺の様子で気づいたのか宮本梨咲は諭すように
「私もこんな質問で私たちの命がどうこうされるのは嫌だわ。でも、状況がわからない今はこの指示に従った方がいいわ」
と俺の目を見ながら言う。
確かに彼女の言う事は正しい。
彼女が離れていくのを確認して、とりあえず俺は、今、自分が欲しているものについて考えてみることにした。
正直なところここからこの場所から出たいというのが本音なのだが、そんなことをしたら何か嫌なことが起こるというのは少し考えればわかった。
そうなると俺は何が欲しいのだろう。お金?恋人?それとも地位や名誉?
どれもピンと来なかった。
俺は自分が平凡な人間であるということはわかっている。
だから高望みしない人生を送ってきた。今の自分に甘んじているわけではない。
ただ、何をすればいいのかわからないのだ。
高校卒業後、何の疑問もなくエスカレーターで大学へと進学した。
高校時代は、友達もいたし、彼女だっていた。
じぶんでいうのも何だが結構充実していたと思う。
ただ、その生活はを得るために俺は、いつも何かを我慢してきた。自分の時間を他者のために使い、精神をすり減らす生活を続けていたと思う。
大学に入ってからはそんな生活に嫌気がさし、周りとの接触を断つようになった。
それからだ、俺の生活が変わったのは。
何をするにもやる気がわかない。
何か大切なものをなくしてしまったような虚無感に悩んだ。
自分の選択でこの道を選んだのに、残るのは後悔だった。
日々を漠然と過ごす中で失くしたもの。
俺が求めるものは自然とわかってきた。
—俺は一体何が欲しいんだ。
もう一度同じ質問を自分に問いかける。
俺は———
Life Door 烏乃実沙 @karasunomisa
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