救世主の部隊

~1~


 ここがグレイたち救世主の元の世界なら、大学の講義が行われていても不自然ではない大部屋で。救世主たちの注目を一身に集めている中。諸君、と。聖王は荘厳な声音で、まずはそう切り出した。


「危険な目に遭わせることとなってしまった……」


 開口一番は、そんな懺悔するような台詞であった。


「儂はそなたらに礼を言うべきなのじゃろうし、詫びるべきなのじゃろう。そなたらには、別の世界でのそなたらの人生があったはずなのじゃから。ここより平和で安全な、そして魔法とは全く異なる種の技術が発達した世界じゃと聞き及んでおる。そんな若人わこうどたちに戦いを宿命付けた儂が、その件に関して今更言えることは、およそないじゃろう。仮にあったとしても、儂にそれを推し量ることは残念ながら出来ん。推し量れたとしても、それを言葉として口にし、そなたらに聞かせることは恐れ多い。これだけの数の人の生涯を、魂の行く道を狂わせておいて、自らを釈明しようなどとも、儂は思わん。

 ――そなたらには民の期待が、世界の命運という重責と共にその双肩にのしかかっておるのじゃ。そなたら、そして聖王たる儂には、それに応える義務をも課せられておる。そなたらは、儂を許すことなどないじゃろう。憎み続けるじゃろう。しかし、儂はそなたらに何も言わないじゃろう。何も言えないじゃろう。憎しみの糧としてでも怒りの種としてでも構わん。どうかそれだけは、その胸に置いておいてほしい。儂がこれまで通り聖王として、そなたら【救世主】を支援することに変わりはないと、亡き先代の救世主イーヴァス様に誓って偽りない」


 聖王は室内の救世主たちを一人一人見渡し、その純粋な光を帯びた瞳で、なにがしかを訴えかけんとしていた。

 沈黙。それは公私に対する決意の表明として聖王が下した、一つの答えなのだった。この場に座している全ての人々の――救世主たちの生き方。その歯車を歪めてしまった咎

とが

を、今浴びている視線同様、一身に引き受ける覚悟を以て、彼はここに立っている。それだけは。確かに世界の希望の面々の心が、魂が。しかと感じ取ったのであった。

 もっとも、罪悪感などに駆られて言ったのであろう聖王の一連の台詞を聴きながら、しかしグレイは胸中、おそらく他の救世主の大多数が考えているであろう事実を思い浮かべていた。

 何を隠そう、全ての元凶はオリジナルの救世主、イーヴァスその人である。これだけは。決して揺るがない真実である。少なくとも、ここにいる救世主たちにとっては。だが、この世界において救世主は全人類の信仰の対象。聞くところによれば神にさえ匹敵し得る絶対性を持つとされる救世主。いくら法と政治の大本たる聖王といえど、その実はこの世界の一住民。救世主に向ける信頼と尊敬の念は民衆と異なるものではなく、そんな彼がイーヴァスの責任を引き合いに出すことなど、考えられないことなのだろう。あるいはイーヴァスに負わせて然るべき責任などないと考えていても、なんらおかしくはない。

 そんな世界観を、グレイは既に知っていた。件の召喚に関して、この世界においてイーヴァスは無実であり無罪だ。そして聖王は、民衆は、変わらず救世主を信仰されるべき対象として、世界に希望を与え続ける。


「さて、儂はここスコラ学院の創設者として、僭越ながらこの場に招かれた身の上であるわけじゃが……それではいよいよ、各人の部隊編成を発表させていただくことにしようかの」


 ざわざわ、がやがやと。聖王が訪れる以前ほどではないが、再び大部屋は騒がしくなった。


「ねえねえ、部隊ってなんか軍人さんみたいだね! なんか急にかしこまりたくなってきちゃうよね!」


 レインも例外ではなく、しきりにグレイの肩をぽんぽん叩き、彼が振り返ると興奮した様子で言った。


「いや、まあウィルからもう聞かされたことではあるけどさ……」


 『救世主によって構成される特殊部隊』――彼が口にした穏やかでない言葉で、既に予感はしていた。していたが、いざこうして眼前にその現実を突きつけられると、やはりというかどうにもピンとこない。冷静さを失わず、けれども戸惑っていないわけではない。そんなグレイの心情が、台詞を通して露見していた。


「今からそなたらがそれぞれ配属される部隊ごとに、一人ずつの名前と識別IDを言い渡すから、呼ばれたら立ち上がり、その段階でIDを覚えるように。こうも大人数となると、情報の統率も難しくてな。現在、識別IDの提示のみで個人を認証する仕組みを開発しておる最中じゃ。いずれ実用化されるはずなので、これに対応してもらいたい」


 聖王は懐から書類の束を取り出し、今一度グレイたち救世主を流し見ると、一番上の書類を読み上げた。名前を呼ばれた救世主は立ち上がり、続いて告げられるギリシャ文字とアルファベット、そして数字の三つから成る識別IDを言い渡された。


「今立っている者は、1階のA教室へ向かうように」


 願わくばレインと同じ部隊に配属されたいという思いを密かに抱いているグレイだったが、四十名ほどの救世主が立ち上がった時点で発した聖王の言葉で、まずは安堵した。レインは未だ、自分の隣に座っている。


「一緒だったら良いね」

「……無理だろ。七百八十五人中四十人が一つの部隊なんだから――確率的には二十パーセント未満だ」


 そんなタイミングでドンピシャな台詞を言ったレインに、グレイは素っ気ない語調で答える。全身がじんわり熱くなるのを感じた。

 その後も四十名ごとに区切って向かう配属部隊を分割し続ける聖王だが、教室の救世主が三割ほどいなくなったところで、グレイは今まで聞いてきた識別IDに法則性が存在することに気がついた。

 識別IDはギリシャ文字、アルファベット、数字の三要素で構成されている。一番最初の救世主はαアルファエーワンと、そんな具合だ。この識別IDは、十名ごとにギリシャ文字が変わり、四十名ごとにアルファベットが変わっているのだ。アルファベットの切り替わりが、同時に向かうべき教室に対応している。

 加えて二百名強ほどの救世主が出払ったところで――識別IDΔデルタエフワンまでの救世主が出払ったところで、聖王の述べるIDの、今度は数字が繰り上がった。


「そなたらは2階のA教室へ向かうのじゃ」


 何度目かに起立した四十名に――αアルファエーツーからΔデルタエーツーの救世主たちに、聖王はそう告げるのだった。

 そうして数百名が大部屋を去っていき、いよいよ残された救世主が半数近くになってきたかというところで、聖王は


「レイン、αアルファディーツー


 と、彼女の名前をIDと共に呼んだ。レインは『はい!』と笑顔を浮かべて立ち上がる。その瞬間、グレイの胸中は、それはそれは悲壮であった。

 嗚呼……いよいよ呼ばれてしまった。どうしよう。このまま、あと三十九名の内に自分の名前が呼ばれなければ、今後は見も知らない有象無象に囲まれ、およほ生活の大半を過ごすことになるのか。友達、出来るかなあ。

 そんな、グレイが学園生活もしくはキャンパスライフへの不安を呈していた刹那。


「グレイ、αアルファディーツー


 呆気なく呼ばれた。あ、なんだ。呼ばれるんじゃないか。お、やった。レインと一緒になれるじゃないか。いえーい。これで一人ぼっちになることはないぜ。

 グレイは飛び回って喜びを体現したい衝動を抑え、あくまで平静を装い、黙って立ち上がった。続いて三十余名の名前が呼ばれ、それに応じて救世主たちが起立する。そして十人目のΔデルタディーツーが呼ばれ、おそらくは七度目となる四十名の救世主が揃った。


「では、2階のD教室へ」


 向かいなさい、と聖王は促した。その息づかいはやや荒い。それはそうだ。立ちっぱなしで数百名の名前と記号の羅列を延々と独唱し続けるのは、老体には苦だろう。決して弱音を吐かない聖王だが、相当な疲労を蓄積されているはずだ。誰だ、彼を小一時間以上立ち続けなくてはならない状況にしたのは。このプログラムを組んだのは誰だ。というか誰でもいい。彼に席を譲ってやってくれ。

 そんなことを思いながら、しかし何も言うことなく、グレイはレインと、そして他の救世主たちと共に大部屋を後にした。


「やったね、グレイ!」


 廊下に出るやいなや、レインは花が咲いたような笑顔で言った。


「同じクラス!」

「そうだな」

「同じ学年!」

「それは生まれた時からそうだろ」


 果たして聖王の老体が持つのかどうかは、気にしているていを装うだけに留まらせることにして、グレイはレインと談笑しながら階段を降り、既に四十名の救世主で埋まった教室を通りすがりに眺めながらも、指定された2階のD教室へ入るのだった。


~2~


 正面の教卓から向かって扇形に配された机と座席が、二人は大学の講義室のようだと思った。教卓の上にも各座席にも、誰がどこそこに座れなどという書き置きはなく、救世主たちはそれぞれ、好きな適当な場所を確保した。グレイは先ほどの大部屋での一件を教訓にし、変に格好をつけようとはしまいと、手頃な席を見つけるとすぐさま座った。


「あれ? 今度は優しくしてくれないんだ?」


 レインはその隣に腰掛けらながら、にんまり笑って言った。本当に意地悪だとグレイは思った。そんな話を蒸し返すことはないじゃないか。傷口をほじくり返すことはないじゃないか。


「レイン。救世主候補査定委員会の仕事中に話したっていう人は、この中にはいないのか?」

「……うん。全然。知らない人ばかり。あーあ、嫌だなー。友達、作れるかなあ――」


 話を逸らす意図で振った話題だが、レインは真面目に憂鬱そうな表情で言った。その愚痴を零すような彼女の口調は、グレイからすれば珍しかった。普段から温厚で柔和な、品行方正の優しい優等生といった印象を勝手に抱いていたのだが。実際に優等生かどうかは、幼稚園以来ろくな付き合いのないグレイの記憶からは判別できないが。

 そうだなあ、と相づちを打ちながら、グレイは今しがたレインがしたように、辺りを見回した。重苦しい表情の若者もいれば、眠たそうに欠伸をかく歳の離れた女性もいる。中には幼気

いたいけ

な少女も混ざっている。さすがに五十代以上の人物は見受けられないが、それを差し引けば、まさしく老若男女と言っても差し支えない年齢層の広さだ。イーヴァスが本当に無作為に選んだ新世代の救世主なのだな、と。グレイは他人事のように、しかし直後に紛れもなく自分のことであると気づきながらも、そう思った。

 すると。グレイは四十名の中から、見知った顔の少年を見つけ出した。目を疑ったが、目を凝らしてみたが、やはり彼だ。この時のグレイの安堵っぷりといったらなかった。レインのことは――彼女には申し開きの立ちようもないが――召喚される寸前まで記憶の深淵に沈んでいたとして、それまでの交流関係で、およそ最も親しい人物であることは揺るぎないと思われる、そんな十全の信頼を寄せる少年だったのだ。


「おい!」


 グレイは叫んで、彼に駆け寄った。レインの制止も聞かずに。良くも悪くも静寂を保っていた室内で、とびきり目立つ行動を起こしてしまったことへの危惧だろう。しかし、そんなことは半ばどうでもよかった。先ほどの聖王よろしく (規模は段違いだが) 、多くの救世主たちの視線が、一挙にグレイに向けられた。グレイは怖じ気づきつつ、だが臆せず級友の元へ向かう。

 当の少年も、自身に近寄るグレイの存在に気づき、今まで物静かに腰かけていた座席から立ち上がる。


「おお!」


 と、そんな歓声を以てグレイを迎えた。左右に乱れたグレイと違い、少年は直線的な髪型だった。前髪も額を隠すに留まっており、その素顔はオープンだ。


「えーっと……」


 グレイは言葉を詰まらせる。レイン同様、やはり眼前の少年の名前も思い出せない。覚えて、いない。先方もそのようで、気まずそうにしている。


「いい加減切れよ、その髪」


 ややあって、少年はグレイの眉辺りまで伸びた黒髪を指で弾き、ようやっとそんな台詞を捻り出した。


「こんなトイプードルみたいになるまで伸ばして」

「トイプードルみたいにはなってねえよ」


 少なくともそれは長さだけで、髪自体は垂れておらず、むしろどちらかといえば肩幅と平行な方である。

 そんなやり取りで一頻り腹を抱えると、少年は言った。


「俺はクロムCHROMEだ。また同じクラスだな」

「ああ、俺はグレイ……よろしく」


 グレイの脳裏では、二人が最初に出会った頃のことが思い出された。おそらくは、それはクロムも同じなのかもしれない。


「グレイ、お知り合い?」


 そこにレインが脇から現れ、グレイの横からクロムの顔を覗き込む。


「ああ。俺の、言ってみれば親友」

「え、親友なんて言葉、まだ現代に生き残ってたの?」

「やめろよ。言ってるこっちも後悔してるんだから」

「初めまして。私はレイン。グレイの幼馴染みです。よろしくお願いします」


 レインは礼儀正しく、言葉遣いもどこかかしこまった調子だ。一方でクロムは彼女の『幼馴染み』という単語を呟くように復唱し、考え込むような素振りを見せると、グレイの肩に手を回した――否。表現としては、もはや首を締め上げていた。


「お前、幼馴染みなんていたのかよ……知らなかったなあ」

「いやいやいや、俺もついこの間まで知らな――いや、覚えてなかったんだって」

「それでお茶を濁したつもり?」


 顔に血の気が集まりつつあるグレイに、レインは女性にしては、何より誰より彼女にしては低い声音で、有り体に言えばドスの効いた口調で言った。


「へえ。電車の中でも怪しいと思ったけど、一瞬チラッと思ったけど、やっぱり忘れてたんだ」

「いや、嘘。嘘嘘嘘。覚えてました。忘れてませんでした。覚えてるよ。覚えてますとも。逆上がりの練習とか一緒にしたし、折り紙も教えてくれたよね、あと隠れんぼの時なんか見つけてくれなくてさ――」

「他には?」

「え」

「だから、他に覚えてることは? 忘れてないことは、他に何かないの?」

「それは……俺より先に、レインの方が逆上がり出来ちゃって、参っちゃって、泣いちゃって、帰っちゃって、それで――」

「他には?」

「…………」


 区切るようなレインの語調は、もはや尋問というよりは拷問である。クロムに首を締められている最中なのに、それとは別のことで息の根を止められてしまいそうだ。下手をすれば命が危うい。グレイの額に一筋の汗が流れた。


「……なんか、卒園式の時、絵を描いてたら」


 卒園式。その言葉を聞いた瞬間、レインの表情は一変した。グレイもそれを視認して口をつぐむ。以降の台詞を、言っていいものか悪いものか判断がつかない。

 秘剣ヤーグを発現するために思い出した、あるいは思い出したことでヤーグを発現した、言うなれば最新の記憶。レインと幼少期を共に過ごした、最後の記憶。そこに隠された真実が、何を秘めているのだろう。ここで、この場で解き明かすことは、まず好まれないだろうとグレイは直感した。クロムがいる前では、やはり昔の出来事といえどプライバシーなので憚れる。レインの今の表情を見れば、それが分かる。

 卒園式の日、そして電車の中で再会した時――そして今回、三度目になるその表情は、グレイがしようとしている話に、肯定的であり否定的な心情を現していた。グレイが、その事を覚えていることが、嬉しくもあり、悲しくもあるような。

 そんな、複雑で読めない表情だ。


「皆、席に着くように」


 ガラリ、と教室の戸が開かれる音がしたのと同時に、グレイには、そしてレインには聞き慣れた声が言った。おそらくグレイやレインには、この場合、この上なく良いタイミングでの登場であろう。

 教卓の前に移動すると、ウィルは教室を一望した。


~3~


 グレイとレインは言われた通り当初の座席に戻り、事の顛末がうやむやとなった。席の数は四十名分きっかりしかなく、旧知の間柄と再会できたといえ、席の移動がままならなかったクロムは、少し名残惜しそうにグレイの首を解放したのだった。


「俺がこの教室の部隊を担当する、ウィル・ミン・ヴォルンテス軍曹だ。よろしく頼む」


 鎧兜により素顔は知れないが、少なくともその口調から、グレイとレインは彼が至極真面目な態度でこの場に臨んでいることを汲み取った。それほど緊張しなければならない、シリアスな状況なのだ。この、教室内は。


「まずはこれから、このスコラ学院に在籍する諸君ら救世主の部隊編成について、詳しい説明を行う。質問があれば、一連の説明を終えた後に機会を設けるので、その時までは静粛にしているように」


 メモを取りたい者は取って構わない、とウィルは付け足すように言ったが、グレイとレインは紙と筆の類いを持っていなかった。紙ならまだしも、そして筆といってもシャープペンシルならともかく、エクゥスアヴィスの羽を常備する習慣などを、二人はまだ持ち合わせていなかった。

 グレイたち二人以外の十余名ほどが、がさごそと鞄やらポケットやらを漁る音が聞こえ、一通り動きが治まったのを見計らって、ウィルは咳払いを一つすると、全員に話し始めた。


「この学院には、総勢七百八十五名の救世主が在籍している。その他、戦闘介入の不可能な老人や赤ん坊、妊婦など諸事情により学院の在籍が叶わなかった救世主たちも含めれば、その数は千人ほどに膨れ上がる。だがこの者たちは部隊には含めず、ケントルム直属の極秘機関により厳重な警備の元、保護されている。つまり、人々の希望たり得る救世主は、スコラ学院に在籍する七百八十五名のみとなる――即ち諸君らだ。諸君らには戦闘に参加できない救世主たちの分も、民のために尽力してほしい。

 その七百八十五名の救世主たちは、大きく二つの機関に別れる。一つは実動部隊。直接戦地へ赴き、クラウズと戦う部隊。これは諸君らを含む、およそ九割の大多数の救世主が入る部隊だ。もう一つは支援部隊。直接戦闘には参加せず、文字通り諸君らを支援する部隊だ。この両部隊も、それぞれが得意な分野に選

り分け、選りすぐりのエキスパートとして行動してもらうべく細分化されている」


 この世界にも、救世主たちの故郷における黒板とチョークのようなものが、エクゥスアヴィスの羽とは別に存在するらしく、ウィルは教卓の前方で壁にかかっているそれに、大きな四角形を二つ書いた (もしかすると黒板とチョークそのものなのかもしれない) 。


「実動部隊は、能力と適正に沿って一定数の救世主を纏める手法が採用された。これは諸君らの育成機関として学校が選ばれた起因でもある。年齢は様々だがな……。諸君らには、この教室に来る前に、聖王様より識別IDが言い渡されていることと思う。このIDが、言ってみれば教室、ひいては所属部隊を表している。見ての通り、この学舎は四階建てだ。四階は先ほどのように大勢の救世主を一堂に会したり、特定の目的にしか使われない階層だが。一階から三階が諸君らの教室――言うなれば拠点となる。

 まず、この教室で五名一組の【班】を組む。これが戦地における基本的な部隊の単位となる。行動の起点となる、と言うべきだろうな。更に二つの班を合併させ、十名一組の【分隊】を作る。この分隊は今後の生活を共にする運命共同体だ。各自、しっかりコミュニケーションをとるように。そして四つの分隊を結集させ、四十名で一組の【小隊】が出来上がる。この小隊こそが、今この場に集う諸君ら全員のまとまりだ」


 カリカリと。筆を走らせる音が疎らにグレイの耳に聞こえてくる。


「さて、この学舎の一階から三階は、それぞれAからFの六つの教室により構成される。一つの教室が、即ち一つの小隊を表すわけだ……この小隊が六つ合わされば、いずれかの階層の全てを拠点として与えられた【中隊】が完成する。この中隊ともなれば、その総員は二百四十名に上る。更に一階、二階、三階の中隊が集まれば、このスコラ学院の学舎全体を所有する【大隊】が結成される。総勢七百二十名――これが実動部隊の全容だ。諸君らは第2中隊のD小隊となるな」


 これを知った民衆は、救世主という概念に対してどう思うのだろうと、そんな懸念を抱かざるを得ないグレイだった。もっとも、民衆にこの内情が知らされることがあるのかは定かでないが。


「残る六十五名が支援部隊となるのだが、彼らは学院には残留しない。九つの兵科に分類され、各科の活動内容に則した第一級の専門機関に、それぞれ配属されることになる。作戦科、通信科、衛生科、物資科、運搬科、研究科、開発科、広報科の八つの科に七人と、残る隠密科に九人だ。

 作戦科は戦地の状況によって実動部隊の行動を判断・決定する。通信科は作戦科の下した決断を現地の兵士――つまり諸君らに伝える。

 衛生科は怪我人の治療を責務としている。

 物資科は必要な物品を発注し、運搬科は各所に必要なものがあれば即座に現地へ急行する。戦地もそうだが、万が一民間に被害が出た場合も考慮されるからな。

 研究科には、捕縛したクラウズの解剖と、新兵器・新魔法の考案という大役を担ってもらう。開発科は、研究科の提出した資料を元に、新兵器・新魔法が実用可能かを判断、可能であれば発明してもらう。

 広報科は、あまり戦闘に介入する科ではないな。民間に救世主の活動を好意的に宣伝する科だ。脚色するかもしれないがな。諸君らにも広報活動の一貫として、取材やらインタビューやらが訪れるかもしれない。その時は快く引き受けてやってくれ。広報科はケントルムへのスコラ学院内の状況の報告も担当しているから、あまり恨みを買わないようにな。

 最後に隠密科は……」


 ここまで相当な文量にも関わらず順調に話を進めてきたウィルだが、そこへきて急に言葉を詰まらせた。グレイは、そしてレインは、その実を察した。

 隠密科――裏の仕事。公には明かされない、社会の闇。正義に潜む、世界の暗がり。タイムリーな話題で、エモがその仕事に携わっていることが判明した。彼女とウィルは昔から接点があるらしい。とても深い関わりが。彼はきっと、隠密科からエモを連想し、何やら思うところがあるのだろうと、二人は慮ったのだ。


「……裏切りや企みを阻止する兵科だ」


 しばしの沈黙の末、ウィルは端的にそう言ったのだった。


「そして諸君ら実動部隊と、残る六十五名の支援部隊とを総合した【連隊】が、現代の救世主の総戦力となる。七百八十五名の大規模部隊だ。……以上で部隊編成についての説明を終わるが、何か質問のある者は?」


 ウィルが問い、グレイは自然と辺りを見回した。こういう大多数の人間に問いかけるような事態となった時、グレイは元来より周囲の人間を盗み見る性格だった。そこには二名、手を挙げた男性がいた。一人は眼鏡をかけた青年、もう一人はなんとクロムだった。

 ウィルは手始めに眼鏡の青年を指した。青年は立ち上がり、眼鏡をくいっと人差し指であげた。創作物ではよく見かけるような仕草だ。そしてそのまま手を顔の前で、指を三本立てた状態で掲げる。


「三つほど、よろしいですか?」

「構わない」

「まず一つ。あなたは戦闘介入の不可能な救世主は厳重に保護されていると、そう言いましたよね」

「ああ」

「それは体のいい言い方で、本当はいわゆる軟禁や、プライバシーの脅かされる苛烈な監視態勢など、そういった非人道的なものではないのですか?」

「それはない。我々は異世界の者であろうと、救世主に対しては限りない敬意と信仰を持っている。そんな行為に及ぶことはありえない。少なくとも、現聖王様が在任している限りはな」

「断言するんですね?」

「ああ、するとも」


 少しギスギスした雰囲気となってしまった。青年の方は間違ったことは決して言ってはおらず、見た目通りの真面目さ故に呈した疑問なのだろうが。時に行き過ぎた正義は、小さな波乱を呼ぶのかもしれなかった。

 青年は数秒黙ると、分かりました、と言って引き下がった。


「ではもう一つ。先ほど分隊の話に触れた時、分隊の救世主たちは生活を共にすると言及していましたが、具体的にどの程度、どのレベルまで共にするのですか? どのくらいまで運命を共にするのですか?」

「それはこの後説明する」

「分かりました。では最後に一つ。クラウズの侵入経路であるポルタは世界各地に開く可能性があると聞き及んでいます。出撃の際は、どうやって現地へ赴くのですか?」

「それもこの後、学院の施設としての構成と生活について説明するときに触れる」

「分かりました。なら質問は以上です。ありがとうございます」


 これこそ礼儀正しい、畏まった人物の作法だった。ぺこりと頭を45度下げ、やや険悪なムードに陥った (無論、本人たちにその気はないのだろうが) にも関わらず、締め括りは感謝の言葉とする。

 なるほど。どこぞのなんちゃって優等生とは格が違うわけだ、とグレイは思った。いやいや、だから隣の彼女が本当に優等生であるか否かは、未だ定かでないのだが。

 ウィルは眼鏡の青年との問答が終わると、今度はいよいよクロムを指した。グレイも、今こそまるで自分のことのように緊張した。クロムは、しかし眼鏡の青年と違い立つことはなく、座ったまま問うのだった。


「俺たちが元の世界に帰る目処めどは?」


 瞬間。室内のほぼほぼ全員が、半ばうつむきかけていた頭を、顔を、素早く上げた。ウィルを、あるいは質問の主であるクロムに視線を移した。

 ウィルは――その表情は兜に隠されて窺い知れないが、おそらくは申し訳のなさそうな表情なのだろう。少なくとも、彼の口調からは、そんな様子が見受けられた。


「現在も最新鋭の技術と叡智を以て模索を続けているが、未だに解決の糸口すら見つかっていないとのことだ」

「そうですか……」


 ひどく落胆したと、通常ならそう思うのであろうし、現実にクロムも落胆するのだろうと、グレイはそう思いながら級友を案じた。が、彼に視線を向けていたグレイは、その眼に映った光景に驚愕することになる。

 クロムは口角を片方だけ密かにつり上げ、ほくそ笑んでいたのだ。元の世界へ帰れない。その事実を突きつけられて尚――あるいは、事実を突きつけられたからこそ、なのか。その真意は彼のみぞ知るところだ。


「他に質問がないなら、次は学院での生活、施設利用について説明する」


 挙手する者が皆無なのを確認するとウィルは、よろしい、と言って続けた。


「スコラ学院には三つの校舎と二つの競技場が存在する。まずは校舎。北側に位置するこの建物は【学舎】と呼ばれる。校舎でも学校でも、各自が好きに呼んでいいが。ここは言わずもがな、諸君らがこの世界について、あるいは戦闘について足りない知識や技量を学んで補うための施設だ。この教室は諸君らの学び舎

まなびや

であり、そして拠点だ。残る東西の施設だが、これは諸君らが生活する学院の寮となっている。衣食住をはじめ日常生活については、ここで全て事足りる設計だ。東側が男性寮、西側が女性寮だ。正門から向かって右手が男性寮、左手が女性寮、だ。故意のあるなしに関わらず、異性の寮の敷地内に侵入することは固く禁じる。侵入者には相応の対処がなされるので、肝に銘じておくように。

 次に競技場だ。一つは、おそらく大半の者は見ただろう【スタジアム】だ。見晴らしのいい平野をモチーフに建設された広大な訓練場。戦いの技術を確認するなら持ってこいの施設だ。もう一つは【ラビリンス】という迷宮だ。――そんなものがどこにあるんだと思った者もいるだろう。答えは地下だ。諸君の足下には、スタジアムを含めた学院の全敷地に股がる巨大迷宮が広がっている。面積はスタジアム以上、加えて幾つもの階層によって構成されているので、三次元的に莫大な広さの競技場となる。ここはより高度の技術をためす場だ。一つ一つの階層が広大で、下っていくだけでも相当な鍛練となるだろう。更にラビリンスは魔法によって意思を持たされており、一定時間ごとに自ら内部構造を変える仕組みだ。この構造変化に同じパターンはなく、常に新しいフィールドで実践経験を積むことができる。言ってみれば自律思考する迷宮だな。

 そして出撃の際は、諸君も通った学院の正門が転移魔法ワープの門扉となるので、予め報せておく。出撃の命が出れば正門へ向かうように」


 迷宮――ラビリンス。本当にそんなものがあるのか。そんなものの上に自分は立っているのか、とグレイは足下を見下ろした。横目で見やると、どうやら隣席のレインも同じような素振りを見せているらしく、見渡せば教室内の大抵の者が視線を下げていた。


「では寮内での生活についてだが、先ほど言ったように分隊ごとに集まって飲食、睡眠を共にしてもらう。大体、各分隊は男女五名ずつで構成されるように調整した。各寮の各部屋にそれぞれ五名ずつ、この学院の一階から三階までとほぼ同じ造りとなっているの。部屋割りも同様だ。自分のいる階層の中でなら、周囲に迷惑をかけない範疇で自由に行動して構わない。別の分隊の部屋に入ることも、分隊内の誰かの許可があれば可能だ。所属する分隊の部屋の中については、各々が内装や家具、所持品を自由に置いてくれ。

 だがその分、時間には厳しくさせてもらう。食事と入浴は定時きっかりに始め、定時までに終わらせるように。どちらも余裕をもって一時間ほど設けているから大丈夫だろう。就寝時間は食事と入浴の後ならいつでも構わないが、必ず時刻が深夜を回るまでには床に着くように。

 ……学院内の生活については以上だ。質問はないか?」


 今度は誰も手を挙げなかった。ウィルは少し待ったが、やはり動きはないので、話を次の段階へ持っていった。


「では、これより各分隊ごとに集まり、顔と名前を覚えてもらう。良ければ自身のプロフィールも好きに公開してくれ。戦場では分隊を二分割させて、状況に適した班を随時編成さるように。そのためにも、まずは互いについて深く知り合うべきだろう。この教室には識別IDαアルファディーツーβベータディーツーγガンマディーツーΔデルタディーツーの者たちが、それぞれ十名ずついるはずだ。同じIDの者同士で一ヶ所に集まってもらおう。そうだな……」


 ウィルは八名一列の座席を五行分、見渡すと四隅を基点に各分隊が集うよう指示した。グレイとレインはIDαアルファディーツーに指定された、教室の左前方へ向かった。

 後からクロムもやって来て、二人は彼が同じ分隊の所属であることを知る。グレイは寮内においてクロムと生活をも共にするのだ。これは両者にとって、いやはや嬉しいものだった。

 グレイは手近な席に腰掛けてから、クロムに先ほどの笑みに何を含んでいたのか問い質したくなったが、後から続々と集まってくる分隊の面々を前にすると憚られた。

 そこにはクロムを探し当てる直前に見かけた重苦しい表情の若者や、眠たそうに欠伸を掻く女性、更には幼気な少女もいた。中にはウィルに質問した眼鏡の青年もいる。

 グレイは面子の顔を覚えようと、どことなく辺りを窺うような素振りをしていると、彼らの後ろで、少し離れたところからこちらを見つめる少女と目が合った。彼女は慌てて顔を伏せるが、グレイは一瞬だけ見えたその顔に見覚えがあるような気がした。この世界に来る前に、馴染みのあった顔のような――。


「では自己紹介と洒落こもうか。まずは俺から! 俺はヘイルHAIL! 二十八歳だ! 武器はトリプルスピアだ! よろしく!」


 十名が揃ったところで、重苦しい表情をしていた男性が、掌に槍を出現させて言った。唐突に眼前で構えられた凶器に、グレイをはじめ数人が一歩退いた。この状況を前にしても微動だにしない冷静沈着なクロムを見ると、グレイは彼の器量に驚愕した。彼には驚愕させられてばかりである。

 ヘイルと名乗った若者は、ウィルに『直ちに武器をしまえ』と叱られていた――いや、年齢的には若者、ではないのか。グレイの目には、彼は若く映っていた。


「出身はスペインだ!」


 ヘイルは付け足すように言った。


「私、レインです。十七歳。日本生まれの日本育ち。武器は魔弓ニアで、ちょっとだけ魔法を使えます。よろしくお願いします」


 レインはヘイルに続く形で言った。聞きながら、そういえばこれまでは先遣隊と後方支援という役割の違いから、ろくに彼女の魔法を拝見したことがないなあと、グレイは思った。常々、彼女自身から早く見てほしいと急かされてはいるのだが。

 敵前で後ろを振り返るなど言語道断である。


「うんうん、若いのに礼儀正しいな! 感心感心!」


 わはは、と快活に笑ってヘイルは言った。なにかとハイテンションである。なぜ先ほどはあんなに重苦しい表情をしていたのだろうか。グレイは少し気になった。


「……クロム。十七。日本人――武器は銃の【モノMONO】」


 聞こえづらい声量で言う彼を見て、グレイは思い出す。ああ、そういえばこいつも人見知りだったなあ。ヘイルが『声が小さいぞ! 若いんだから元気よくなくちゃあな!』と肩を叩くと、クロムは不快そうに彼を睨んだ。グレイは、まあまあ、と宥めながら仲裁に入る。


「グレイ……十七歳。日本人。武器はヤーグっていう、まあ変な剣――よろしくどうぞ」


 グレイは話を、というかクロムの怒りを逸らす意図で、本当は最後辺りに明かそうと考えていた身の上を述べた。


「…………」


 ぼそぼそ、と。か細い声音が何かを言った。僅かな声を辿ると、グレイの視線は先ほどの見覚えのある少女に行き着いた。自分の声が伝わっていない。それに気づいたのか、彼女はもじもじと指先を弄りながら自分の爪先を見つめた。

 その挙動。その仕草。グレイはある人物が思い当たった。


「もしかして……」


 グレイは少女に近寄ると、その顔を覗き込んだ。少女は恥ずかしそうにしながらも、グレイの動きに逆らおうとはしなかった。

 やはり。グレイの取っ掛かりは確信に変わった。その顔を見て、グレイは思い出したのだった。


「いやあ、どうも。ご無沙汰ですね。君もこの世界に召喚されてたんだ?」


 グレイの言葉に、少女はゆっくりと。まるで亀の如く、緩やかに頷いた。


「どちら様?」


 クロムと再会した時のように、レインはグレイの横から割って入るように言った。出過ぎておらず、かといって無視できない。そんな絶妙な立ち位置だ。


「ああ、俺のバイト先のお得意様。けっこう贔屓ひいきにしてもらってたから、こっちも顔は覚えてるんだ」

「バイト? どこでやってたの?」

「近所の本屋」

「え!? もしかして、あのお爺さんのところ!?」

「そう」

「嘘!? 私、あそこいつも行ってたんだけど、全然見かけなかったよ?」

「そりゃ、こっちにもシフトがあるからな」


 そんな毎日はいないよ、と言いながら、グレイはレインから少女に視線を戻した。レインが突然登場したことに怯えたのか、彼女は机を支えにがくがく震えている。

 ああ、彼女も人見知りだった。どちらかといえば恥ずかしがり屋、シャイと言った方が正しい気もするのだが。バイト先でも、彼女が店員に問い合わせても何をお求めになっているのか分からず、彼女の対応を常に任されていたのは自分だったなあ、と。グレイは感慨深い心境になった。


「どうしました?」


 グレイは元の世界で、半ば日頃の行いと化そうとしていた動きを、手慣れた様子で見せた。少女の顔へずいっと近寄り、人の良さそうな笑顔で、彼女が何を言わんとしているのかを聞かせてもらうのだ。

 少女は、ぼそぼそ、と。グレイの耳元で囁いた。儚げで綺麗な声である。周囲の人間に聞かせられないのが勿体ないと、グレイはそう思った。


「えっと、彼女はスノウSNOW。十四歳の日本人。能力はチェーンウィップという鞭みたいな武器の発現、らしいです」


 少女の途切れ途切れの言葉を繋ぎ合わせ、独自に分かりやすく改変させた台詞をグレイは伝えた。少女――スノウは拍手するような素振りを見せながら、今度はうんうんと激しく頷いた。聴取が成功するとこういう可愛らしい一面を見せるものだから、この仕事は止められないものだ、とグレイはにやける。うつむいて隠すその素顔も、グレイは何度か拝見したことがあるが、なかなかの美少女という印象を持った。


「僕はスリートSLEET。二十三歳、出身はドイツ。リコイルトンファーという武器を扱います。どうぞよろしくお願いします」


 眼鏡の青年が、恭しくお辞儀をしながら言った。礼儀正しい。とにかく綺麗なフォームだ。彼ならマネキンという職業に就けるのではないかと、グレイは自分でも訳の分からない感想を抱いた。

 ヘイルは彼に対しては『礼儀正しいのはいいが、かしこまり過ぎるのは若者としてどうかと思うぞ!』と、やはり賑やかに笑って、そんな言葉を送った……今にして思えば、よくスノウの番の時に何も言ってくれなかったと、グレイは思った。スリートの嫌悪感を隠さない表情から、今回も黙っていれば良かったのにと。


チルドCHILLEDはね、十二才! ロシア人! 特技は【プリーズPLEASEフリーズFREEZE】! 氷が作れるから、夏でも涼しいんだ! よろしくね!」


 可愛い。そんな一言で済む幼気さだった。彼女が掌の何もないところから生み出した氷塊を見て、レインはグレイに『あれは氷の魔法だよ』と耳打ちした。

 というか、ロシアに夏はあるのだろうかと、グレイは気になった。


「俺はネルシスNARCISSUS、二十六歳。イタリアの生まれだ。水を操る【クラッシュCRASHスプラッシュSPLASH】という魔法を使うが、そんなことはどうでもいい――俺は美しいものが大好きだ。だから美しいものの味方だ。美しい婦女に囲まれるのはこの上ない喜びだ。光栄の至りだ。クラウズとかいう化け物など俺が絶滅させてやるから安心してくれ。男は去れ目障りだ」


 言動が終始一貫してキザな男である。そんな第一印象を持ったのは少なくとも自分だけではないはずだ、とグレイは思った。これで美男子なら考えさせられるのだが、そしてその顔立ちはそれなりに整っている部類なのだが、いかんせん、なんとも言えない容姿だった。自信があるのは良いことだ、とヘイルは豪快に笑うが、クロムとスリート、そして半数以上の女性方の表情からして、掴みは最悪らしかった。レインでさえ、この苦笑っぷりである。

 中途半端の一言に尽きる。一体何が駄目なのだろう。グレイは彼が少しだけ不憫に思えた。


「なんであたしがこんな奴の後に……」


 残るは女性二人のみとなったが、一人は――先ほどグレイが見かけた時は眠たそうに欠伸を掻いていた女性は、既に机に突っ伏しているので、必然的にツインテールの女性の番となった。それを受け、彼女は非常にやぶさからしかった。

 やがて女性は『あーもう!』と叫ぶと、なぜか偉そうな態度で分隊の全員と向かい合った。


「あたしはブルートBRUTE! 十九歳! そう、JKよ!」


 グレイは『十九歳』を『JK』と称する人物を初めて見た。JKは『女子高校生』の略だろうが。というか外国にも浸透しているのかよ、その略語。

 出だしが面白い女の子だった。


「台湾出身。中国じゃないわ、台湾よ! 魔法は、なんか動物に変身する【タロンTALONタスクTUSK】ってやつを使うわ――わ、笑いたきゃ笑いなさいよ!」

「可愛いな、お前。結婚しよう」

「は、はあ!? す、するわけないでしょ!? バッカじゃないの!? こ……この変態!」


 潔いネルシスではあったが、しかし直後、ブルートは手を虎のそれに変形させ、ネルシスの顔を猫のように引っ掻いた。キザ男は教室の端から端まで吹っ飛び、壁に激突して動かなくなった。

 この事件にウィルが駆けつけたが、彼はネルシスの容態を窺うと、別段急を要することもないと判断したのか、ブルートには室内での無許可の魔法使用を禁じている旨を説明し注意するに留め、当の怪我人には何もせずにそのまま別の分隊を見に行った。

 なんだこの扱いは。いくらなんでも不憫すぎる。グレイは思わずにはいられなかった。


「んん……むにゃ?」


 と。今の今まで眠っていた、あるいは覚醒のタイミングの良さから狸寝入りを決め込んでいた可能性を疑わないでもない一同であったが、なんにしても最後の一人が起き上がった。

 女性は欠伸を掻きながら乱暴に髪の毛を手で振り払うと、きょろきょろと周囲を取り囲むグレイたちを見た。


「――あれ、うちの番?」


 女性がとぼけた調子で言うと、スリートはわざとらしく溜め息をつき、クロムは舌打ちをした。いやいや、スリートならまだしも分かるが、果たしてクロムは以前からこんなに態度が悪い奴だったかなあ、と。グレイは疑問を抱かずにはいられなかった。

 うむ、とヘイルが頷くのを見て、女性は『えへへ~』と照れるようにはにかんだ。


「うち、グロウGROWって言うんだ~。え~っとね~……ああ、あと三十一歳、独身で~す。前はカナダに住んでました~。ハワイだよ~、ハワイ~」


 ハワイはアメリカだろ。と、誰もが言いたい瞬間だろうと、グレイは確信した。この分隊の中で最年長にも関わらず、この間延びした口調といい、滲み出る年齢にそぐわない幼さといい、なんだか掴みどころのない女性というのが、グレイのグロウに対する印象だった。

 それより名前が似ているのが気になった。


「あとは~……あ、そうだ~。【クライドCRIEDグラウンドGROUND】っていう、こう――地面がばあ~んってなる魔法を使うよ~」


 終わり~、と間延びした語調で言って、グロウは再び机に突っ伏した。どうやらまた眠ってしまったようだ。


「のび太くんかよ」


 耐えきれず皆が守っていた沈黙を破り、グレイは言うのだった。なんなんだ、この面々は。国際色はおろか、人間性も豊かな集団じゃあないか。これまでとは格別に賑やかになりそうだ。

 かくして救世主大隊、第2中隊D小隊所属、α分隊が結成されたのであった。


~4~


 今日のところは学院についての諸説明に留め、本格的な訓練や勉強を行うのは明日以降となるということで、グレイたちは男女で別離し、各々が寮の部屋で身体を休めていた。

 個性豊かなルームメイトが五人――その共同部屋には二つの二段ベッドと、普通の一人用ベッドが予め用意されており、ネルシスは我先にと一人用のベッドの上に荷物を置き、自身の居場所を獲得したのだった。


「気に入らん」


 鞄のチャックを開けながら、ネルシスは顔を歪めて言った。この顔で女性を口説いても、おそらく落とせないだろう。


「どうして俺が男なんかと一つ屋根の下で生きなきゃいけないんだ。不愉快だ。お前らさっさと出ていけ。ここは俺の部屋だ。入りたかったら女を連れてこい。招き入れる時だけ入室を許可してやろう」

「冗談も程々にしておいた方がいいですよ。我々は曲がりなりにもチームです。嫌々でも友好的な関係を築いていくべきです」


 足を組み、しっしっ、と野良犬を追い払うような仕草で悪態をつくネルシスに、スリートがギラリと眼鏡を光らせ、釘を刺す。グレイは早くも波乱を予感していた。


「おいおい本気にするなよメガネ君……はっはっは、こんなのは社交辞令じゃないか」

「その悪態のどこが社交辞令なんですか」

「女は食事に誘い、男には罵詈雑言を浴びせる。これが俺にとっての挨拶でね。この暴言もご愛嬌ってやつさ」

「愛嬌という言葉の意味を辞書で調べるか、あるいはそのまま鏡でも見ることを勧めます」

「んだとこの鼻くそエッフェル塔が!」


 逆上した。今風に言うならば逆ギレである。彼の飄々とした様は相手にしていて曲者となるやもしれないという、この場の全員の予想を裏切る結果となった。

 この男、存外脆い。


「それは僕と、僕の母国に対する侮蔑の念を込めて言った台詞なんでしょうが、しかしエッフェル塔はフランスの建造物です」


 おまけに頭も悪いらしい。


「え、嘘……じゃ、じゃあピサの斜塔!」

「それは自分の国でしょうが……」


 というかただの馬鹿だった。


「あはははは! 仲が良いなあ、お前らは!」


 笑いながら、ヘイルはちゃっかり入り口から向かって左側の二段ベッドの下段を、自分の寝床として占領していた。意外と抜け目ない。見ると、スリートと並んでネルシスへの嫌悪を露にしていたはずのクロムも、いつの間にかもう一つの二段ベッドの下段で、既に寝転んでいた。なぜ下段が人気なのか分からないグレイだったが、やけに暑苦しそうなヘイルと同じベッドを共用したくはなかったので、いそいそとクロムのベッドの上段に鞄を放った。どちらかというとヘイルのことではなく、クロムというよく見知った間柄の存在が強かったのだが。くっ、と悔しい顔をしつつも、スリートは仕方がなさそうにヘイルのベッドの上段にキャリーバッグの中身を放り出した。


「グレイ、街へ行こうぜ――ウルプスの街へさ」

「なんだよ、お前そんな行動派だったか?」


 グレイは分隊ごとの初顔合わせの後、ウィルの言っていた言葉を思い出した。


「街への外出も許可されている。一般市民の視点を味わうのも大事だろうからな……ただし、くれぐれも救世主としての品位を損なわないようにな。羽を休めても、あまり羽目を外し過ぎないように。諸君は人々の希望なのだからな」


 そういえば、どうして身分や役職を隠していたのか訊くのを忘れたなあと。グレイは思いながらクロムの話に耳を傾ける。


「ファンタジーの世界の街だぜ? 廻らなきゃ損だろ」

「でも金なんか持ってないし」

「そんなの初給料から差し引いてもらえばいいさ」


 救世主の給料は、その時代に適した役目を果たす度に支払われる。出来高給、というやつだ。世界的な貧困の時代に選ばれた救世主は、各地の金銀財宝を探り当てる度に給料をもらい。石油の不足で危機に瀕した時代の救世主は、新たな油田を見つけるか、もしくは作ることで給料を得る。

 グレイたち現代の救世主は、クラウズを殺した数だけ金を受け取る……。


「水を差すようで悪いですが、門限は過ぎてますよ」


 スリートは寮内の生活規律について書かれた書類の内、救世主の一日のタイムテーブルをクロムに寄越した。というか彼は歳下に対しても敬語を崩さないようだ。ここまで畏まるのも病的だ。

 ルールブックに記載された外出時刻の期限は、たしかにとっくに過ぎていた。クロムは「つまんね」と書類の束をスリートに投げて返した。幸い、ルールブックは何かしらで一纏めにめてあるらしく、バラバラになって宙を舞う事態にはならなかった。それを知っていてこのような行動に出たのだろうと、グレイはとりあえず思うことにした。


「残念だったなあ、あっはっは。駄犬は小屋で大人しくしてろ」

「その小屋から出ていくよう言ったのはどこの誰だよ」


 挑発するように嘲笑うネルシスに、クロムは今にも噛みつきそうな視線をやった。というか視線で射殺そうという意図すら、僅かながら垣間見える。

 ネルシスも、社交辞令やら挨拶やら云々言ってはいたけれど、そんなことを以前から言ってきたなら争いの種となることは重々思い知っているはずだけれど、どうしてその言葉遣いを直そうとしないのだろうと、グレイはつくづく思った。こんなんでよく女性を口説こうなどと考えられるものだ。

 クロムは外出できないことに腹を立てながら布団に潜った。グレイはこのまま彼が寝てしまう前に、どうしても訊きたいことがあったのを思い出し、慌ててベッドの柵から身を乗り出し、下段のクロムに呼びかける。


「なあ……この世界に召喚されたこと、どう思ってるんだよ?」

「――なにが?」


 クロムは面倒そうに布団から顔を出すと、グレイが何を言っているのか分からない風に言った。


「だから、救世主に召喚されてさ、理不尽に戦えって言われてさ、なんとも思わないのか?」

「聖王が言ってただろ。俺たちは一人一人、自分の意思ってやつを確認されたんだ――少なくとも俺は。お前は違うのかよ?」

「質問を質問で返すな」

「……俺は好きで救世主になったんだ。クラウズと戦って、たくさん殺して、英雄として崇められたい」

「お前、それ……」

「俺をこの世界に召喚したこと、イーヴァスには心から感謝してる。掃いて捨てるほどいる人間の中から、たとえ千人でも一万人でも、その中の一人に俺を選んでくれたんだ――俺に、チャンスを与えてくれたんだ」

「チャンス?」

「俺の人生、つまらなかったさ――楽しかったし、悲しかったし、つまらなかった。嬉しいことがたくさんあって、悔しいことも山ほどあって、だからこそつまらなかった」

「……なんでだよ? 楽しかったらいいじゃないか。悲しくってもいいじゃないか。みんな同じことを感じるんだし、あるいはろくに感じられないまま死んじゃう人だって、きっとどこかにはいるんだから」

「みんなと同じだから嫌なんだ」

「え?」

「みんなと同じだから嫌なんだ……楽しくて悲しくて、嬉しくて悔しくて、それが当たり前なのは分かってる。『普通』がどれだけありがたいことなのかも分かる――だけどさ、それってきっと」


 グレイはクロムが何を言っているのか、それこそ分からなかった。一体、何を言っているんだ、こいつは。これまで、幾度も別件でそういったことを思うことがあったが、今回は段違いだった。

 価値観の違い――それは互いに、以前から認め合い、許し合っていた二人の決定的な隔たりだった。グレイはグレイであり、クロムはクロムである。それを双方にこの上なく実感させる事実は、しかしこの場合、隔たりになっても溝にはならなかった。両者を両者たらしめたとしても、それが絆の崩壊の要因となることは、これまでおよそなかったのだが……。

 今回ばかりは。グレイはクロムが何を言っているのか、本気で分からなかったのだ。別の世界に召喚されたショックで、気でも狂ったのかとさえ思った。

 しかし。クロムは瞳に確かな光を湛えて。この上なく正気で、言ったのだった。


「幸せじゃないと思うんだよ」


 当たり前は素晴らしい。普通は素晴らしい。そんな人生は、素晴らしい。


「だけど、他のみんなと同じってさ、要するに他のみんなと同じ幸せしか手に入らないってことだろ?」

「…………」

「幸せがさ、そんなありふれたものでいいのかな?」

「…………」

「よく『当たり前が幸せ』とか『普通が一番』とか言うけどさ。それも一理あると思うけどさ、それって平凡であることで妥協してるって意味じゃないのか? 幸せって、やっぱり目に見えて確かに感じられるものじゃないと、少なくとも俺は実感が湧かないんだ」

「…………」

「幸せだって思ったこともあるさ。自分がこの世で一番幸せなんじゃないかって思ったことも、一瞬くらいはあるさ。十七になってまだこんな青臭いこと考えてるんだって、馬鹿馬鹿しくなることだって、ないわけじゃないさ――けどさ。だけどさ、どうしても俺は、幸せが劇的で、刺激的でなきゃ満足できない気がするんだよ」

「…………」

「元の世界では、そんな願い叶いっこなかった――でも、この世界は違う。どれも劇的で、どれも刺激的で、元の世界にはないものばかりだ。……俺は思ったよ。俺は結局、退屈が嫌いなだけなんだ。平凡な人生、平凡な幸せに納得できないだけだったんだ。わがままだってことも、もう分かってるけどさ」

「…………」

「――ほら、俺って妥協を許さない性格だろ?」

「……知らねえよ」

「……なあ、お前はこの考え方、どう思う?」

「…………」


 グレイは何も言えなかった。一理ある、どころかクロムの言っていることは、正論である。一人の人間の考え方として、信念として成立している。それを、今の自分がとやかく言うことは出来ない。そもそも人生を深く考えたことなんて、ない。ちゃらんぽらんとしていて、いつだって他人に流されて、誰かに促されて、そんな生き方をしてきた。

 問われて初めて気がついた。自分の人生とは、なんだろう。幸せとは、なんだろう。グレイは黙りこくる。今、自分が救世主をしているのは。

 守りたいものがあるから。それだけなのだから。これだって理由が他人に、自分以外の誰かにあるのだから。

 行動理念の中心が自分ではないのだから、その生き方が定まっていないと言って偽りない。

 グレイは、クロムの信念に、何も言えなかった。


「自分語りが過ぎる男は嫌われるぜ」


 ネルシスが、独占しているベッドで寝返りを打ちながら言った。数々の女を相手にしてきた俺の言うことだ、間違いはない。


「人の会話を盗み聞く男も嫌われるんじゃないか?」

「今ここに女はいない。男に嫌われるなんてどうでもいい。むしろ俺に付きまとわれる方が迷惑だ。俺の魅力が陰るからな」


 案外、この二人は仲良くやっていけるのではないか。クロムとネルシスのやり取りを見ていて、グレイはそう思った。なんだか微笑ましくもある。

 同時にグレイは気になって、身体を捻りネルシスの方へ向けた。


「じゃあ――アンタが救世主になった理由は?」

「は?」

「元の世界に帰りたいとか、そういうことは思わないのかよ?」

「俺は女がいればどこでもいい。海の底でも活火山でも、そこに女がいるなら構わないのさ」

「そんなの、理由になってないだろ」

「何を言う。俺がここにいるのに充分な理由だ」

「違うだろ。アンタのは他人を言い訳にしてるだけだ。自分の意思が、そこにはない」

「どうした? 眠たくて頭が回らないか?」

「は? だって」

「他人を言い訳にすると決めた――これも立派な理由だろ」

「…………」

「俺は女を理由にすると決めたんだ。女を生き甲斐に、人生の中心にすると、そういう生き方を自分で決めたんだ。これ以上の理由があるか」


 自分で決めたことがあるなら、それは理由になるだろうが。ネルシスはそう言って頭まで布団を被った。


「臭い男も嫌われるぞ」

「うるさい。時間になったら起こせ」


 入浴のことを指したのであろうクロムに、最後にそう言い残してネルシスは眠った。グレイは今となっては物言わぬ彼の言葉について考えた。

 クロムにとっては元の生活で得られなかった興奮が、ネルシスにとっては女性そのものが、救世主となるに相応しい理由。相応しい理由とすると、彼ら自身が、そう決めた。これこそが……これだけが、理由と言える。


「――アンタらはどうなんだ?」


 グレイはヘイルやスリートに、今度は問うた。


「僕は、ただ帰れる方法がないからってだけですけどね。自分で元の世界へ帰る方法を探しても構わないのですが、どうにもこの世界は僕の持ち合わせる知識と技術がまるで通用しないようですし……それに、戦闘職に任命されてしまったんですから、帯びた任務をこなしますよ。それが世界の規律に役立つなら」

「俺は無論、正義のためだ! 元の世界はどうにもごちゃごちゃしていて、本当の正義のなんたるかが曖昧になってしまっていた気もするしな! その点、この世界はいいじゃないか! 全ての人が同じ敵に脅かされている。全てに敵対する化け物を倒す、これは全ての善良な人々が納得する正義だ! もちろん元の世界へは帰りたいが、ここに揺るぎない正義が存在し、それを遂行できる立場にあるなら、俺は戦うぞ!」


 規律。正義。それぞれが、救世主となる理由を真に抱いていた。聖王が尊重した己が意思に従い、自ら戦う決意を固めた。

 刺激、異性、規律、正義――そして。


「守りたいもの……」


 グレイは独り呟いた。自分はと言うと、それくらいしかない。いや、もしかするとこれだけあれば、それでいいのかもしれない。理由としては、上出来なのかもしれない。

 そうだ。なんだったら、元の世界に帰れないし、これといって特にやることもないから、仕方なく戦うという心情だって。言ってしまえば、そんな動機で救世主をやったって、それは理由になるのだ。理由として通用するのだ。他でもない自分が選んだ結果なのだから。自分で選んだ理由なのだから。

 初めて戦場に出撃した日――目の前で彼

の男性が死んでしまった時、ひどく落ち込んだ末に出した結論が、自分が今ここにいる理由になった。

 守るため。そう決心したことは、何よりも正しく、何よりも理由として相応しかったのだ。それを自分は、きっと誰よりも誇っていいのだろう。

 自分の理由を迷うことはないのだろう。


「みんな好き勝手に生きて、好き勝手に死んでいくんだよな」


 それが自分の生き方ならば。


「誰にも迷惑かけないなら、いいよな」


 まあ、それだけは念頭に置いておかなければならないなと、グレイは思った。

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