第十四章
砂漠
数多に輝く星の下、冷えきった砂丘の上を一台の車が走っていた。
忙しくタイヤを回転させ、砂を蹴っては光のない暗闇を突き進んでいく。
その後方――空いた荷台には大型のライトスタンドが置かれていた。
パチパチと瞬きをするように、時たま光っては何度も消灯を繰り返し、下から流れてくる砂上を照らしていく。
果てなく続く砂漠を走り、丘を越えた辺りで車は止まった。
切れるエンジンの鼓動に、一瞬にして静けさが辺りを纏う。
少しの間の後――再び車は声を上げ、駆け出した。
繰り返される瞬き――ふと、明かりの先に何か大きな物体が写り込んだ。
車は次第に速度を落とし、そして足を止めた。
マフラーから煙を吐き出し、ぶるぶると身を振るわせる中、荷台に居た人影が動き始めた。
端に詰め込まれた液体入りのポリタンクを両手に持ち、立てられたライトスタンドの横から明かりの輪に向かい、その中身をぶちまけていく。
一つ……ふた……。砂を巻き上げ、車が動き始めた。
荷台から止めどなく液体を流し続けながら先を進み、そしてエンジンは止まった。
空になったポリタンク三つを荷台の端へと転ばせ、その場にいた一人がライトスタンドを掴む。
二度、光を瞬かせた。闇の奥から幾つものざわめきが聞こえる。その瞬間――小さな爆発音と共に、燃える轍が姿を現した。
――――――――――――
クラクションの音が晴天を貫く。
並ぶビル郡。その間にある小さな回転場では、湧き立つ車達が互いに主張を繰り返し、虫のようにひしめいては叫びあっていた。
その脇では四、五階建てのアパートが立ち並び、出来る路地では幾つもの屋台が食糧品や雑貨を広げ、その間を歩く人々の足を止めては、雑談などで個々の時間を過ごしていた。
そこからさらに離れた場所――。街から切り離すように広がる砂の上には、レンガ造りの建物がなだらかに広がっていた。
静穏な雰囲気に点々とする人影の間を縫うようにして、一台のジープが駆け抜ける。
マフラーから煙と音を噴かせ、砂煙を上げては入り組んだ路地を抜け、ある一軒家の前で止まった。
二人の男女が降りてくる。その服装はどちらもその地方でよく着られる貫頭衣仕立ワンピース姿だった。
男が先に扉の前へと移動する――同時に開き、中から別の男が顔を覗かせた。
その場から動かず会話を交わした後、中の男が外にいる二人を招き入れる。
明かりのない室内。先を歩く男が二人を連れ、さらに奥へと進んでいく。
三人は小部屋に辿り着いた。そこには一台の机、そして並べられた椅子の一つには恰幅ある男が腰を下ろしていた。
座る男が三人に気付き振り向く。
案内してきた男が先に声を交わし、その後、女と共に歩いてきた男が距離を縮め会話を始めた。
座る男が立ち上がり、話していた男の背に手を回すとさらに奥へと体を押し進めた。
布で仕切られた、か細い部屋の前にたどり着く。
太い腕が垂れる布を払いのけ、中に向かい手先が差し向けられた。
男が部屋から漏れ出るランプの灯りへと顔を入れる。
四方に視線を散らせた後、後ろに居た女に道を譲った。
女は同じく顔を覗かせ、そして――――。
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