召喚されたら色々ありまして②
「ステータスって何か聞いても良いか?」
「ステータスとは状態を示す言葉だそうです。魔法を使い、それを確認することが出来ます」
へぇ、魔法。そんな空想の産物と思っていたそれに期待のような何かを抱いていると
「そのステータスってどんな感じなんですか?」
「そうですね……いえ、見てもらった方が分かりやすいかと思います」
「百聞は一見にしかず……か」
そして5分後、案内された部屋に入ると円卓が一つ、あった。そして
「どうぞ、お座りください」
「ありがとう御座います」
「さて、では魔法についてお話しさせていただきますね」
「「「魔法!?」」」
やはり、と虚偉は思った。魔法と聞いただけで心臓が高鳴った……俺は期待しているんだ。そして――
「ステータスを見る魔法は《視状》です。試しにウツロイ様に使ってみますね」
「俺に?」
「はい。構いませんか?」
「構わんが……モルモットみたいだな」
「もるもっと?」
「《視状》」
「……何にも起きないぞ?」
「いえ、私が見えています。ウツロイ様のステータスを紙に書きますが構いませんか?」
「それを見せてもらえるのなら」
「分かりました」
さらさら、と紙に書かれた文字を眺めて
「あ、読めませんよね。えっと……少し待ってください」
「いや、読める」
「え!?」
「あの……虚偉くん、さっぱり読めないんだけど」
「はぁ?」
虚偉は絶句した。何故この程度の文字が解読できないのか、と。独学でドイツ語の本を読んだりしている自分が異常なのに虚偉は気付いていなかった。
「文字表を作るから待っていろ。その間に魔法に関する説明はお願いします」
「え? 良いのですか?」
「聞きながらでも作れるから」
そして15分後
「結構簡単なんだな」
「いえ……どうしてウツロイ様はそこまであっさりと魔法が使えるようになったのですか!?」
「いや、知らん。なんかできた」
虚偉はそう言いながら自分に《視状》を使った。
『本読虚偉 男 17歳
職業 魔法使い
レベル1
HP 20/20
MP 45/50
STR 8
INT 32
VIT 4
AGI 11
LUC 21』
これは……低いと言うべきか、職業が決まっていると言うべきなのか。魔法使いだからこのステータスなのか。だが職業とはなんなのだ。分からん。
とりあえず分かったことはアレだ、《視状》がMP5を消費するようだ。それぐらいしか分からなかった。
「ウツロイ様は魔法使いのようですね」
「……職業は一つなのか?」
「はい」
「……三人も、見た方が良いか?」
「あ、頼んでも良いか?」
「ああ」
それから隆人、武人、まご何とかのステータスを確認し、紙に書いていくと
「剣士に拳士に僧侶、ね……なんと言うか、古いRPGにあるな」
「ドラクェか」
「……ああ」
そしてそのまま、俺とまご何とかは魔法の講習を受け、他の二人は騎士団の訓練に加わるようだ。だが
「《視状》以外の魔法は詠唱が必須です」
「……必須?」
「どんな感じなんですか?」
「えっと……とりあえず屋外に行きましょう。魔法を見せます」
そして魔法使いの練習場的な場所に着いて
「始まりの五元素より我は放つ、《ファイアーボール》!」
「中二病乙」
「凄い!?」
「……まご……何とか。お前今の口に出せるのか?」
「え? ってまご何とかって何よ!? 真心!」
「真心……か」
「幼稚園からずっと一緒なのになんで忘れちゃっているの!?」
「え?」
実は虚偉は忘れているのだが、元々虚偉は内気な幼稚園児だった。だが真心のおかげで現在のような青年に育ったのだ。本人は忘れているのだが。
「幼稚園の頃なんざ記憶に無い」
「酷い……」
「あの、続けても良いですか?」
「あ、はい。お願いします」
「では魔法の詠唱を書いた紙を明日、何枚か渡しますね」
「「え?」」
「それを読んで使える魔法を増やしてください」
さらには宿題のようにすらすら、と五つ魔法の詠唱が描かれた紙を手渡された。
「これは忘れないでください。生活にも役立つ魔法ですから」
「えっと……読めない」
「火を起こす魔法に水を出す魔法、風を起こす魔法に土を出す魔法、そして――雷を出す魔法? これが五元素ってやつか」
「はい」
そしてその晩、お互いにあったことを話し合う事になったのだが
「肉刺が出来ているんだよ」
「素振りでもしたのか?」
「金属の剣があんなに重いなんて初めて知ったぜ……」
「アルミの剣で良いなら軽いだろうな……ジェラルミンでも大差ないが。それで素振りは……出来なかったようだな」
「まずは木の剣でだとさ。それでも重かったけどよ」
「お前ら……剣士と拳士なんだろ、片方剣要らないだろ」
虚偉の言葉に武人は頭を掻いて
「モンクって事だろうけどさ、それでも剣を振るってみたいのが男ってもんだろ」
「その理論だと俺は女か?」
「え、お前剣使いたくないのか!?」
「マジかよ……」
「お前らと違って俺はインドア派なんだ。蹴鞠部と一緒にするな」
「いやだからサッカーだって……いや、良いけどさ」
「ウツロイって部活入っていたのか?」
「いや」
入っていなかったし、入りたくもなかった。趣味の方が大事だったからだ。
「それでそっちは魔法を学んだんだよな! どんなのなんだ!?」
「……えっと、詠唱が必要なタイプ?」
「どんな?」
真心が詰まっている。言いにくいのだろう。仕方がない、と言うことで手助けくらいはしようか。
「《
「おお!」
「ファイアーボールって奴か?」
「いや、知らん」
「ちょ!? え!? そんなの学んでないよ!?」
「だろうな。詠唱を見てなんとなくアレンジしてみた」
なんだこいつ、真心は心からそう思った。だが虚偉は何も言わず、掌の上に浮かんでいる炎の球を眺めていた。そして――そのまま炎の球を消した。
「魔法を作ったって事で良いのか?」
「いや、アレンジしただけだ。詠唱の意味を理解してからやってみたら出来た的な感じだ」
「……それって凄いのか?」
物理攻撃組はよく分からなかった。
*****
「五元素より外様に在りし双璧よ、我が腕に通りて球となれ、《シャインボール》」
「え!?」
「凄いです、ウツロイ様!」
「凄いのか?」
「凄いですよ! 教えていない属性の魔法を使えるようになっているなんて!」
宿題で魔法がどれか使えるようになってくること、と言われていた。だから俺の溢れ出る想像力を駆使してみると出来てしまった。少し泣いた。
「ウツロイ殿はそれほどまでに魔法を使い熟せておるのか」
「使い熟す、と言えるほどでは御座いません。ただ、その一端に足を踏み入れただけに御座います」
「ふむ……魔法研究という物を知っているかな?」
「寡聞にして」
「その名の通り、魔法に関する研究をするのだが……ウツロイ殿ならば興味を持つと思ったのだが」
いや、興味津々だ。そう王に伝えると
「そう言っていただけると思っていた」
なんだか罠に掛けられた気分だった。
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