好悔



「俺ばかり好きでくやしい」

 そう言葉に出来たらこんな想いを抱かずに済んだのだろうか?

 テイクアウトを待つ間、壁にもたれて考える。店内には他の待客も静かに壁のメニューやポスターを見ながら過ごしてる。

 さ迷わせた視線の先、大型ポスターの隙間のガラスのむこう。誰かに笑う君がいた。

 人混みが君を、連れを隠していく。

 番号を呼ばれて追うことを諦め受け取りにいく。

 見られているわけではないのに周囲の視線が「さっさとしろよ」とイラついている気がして追い詰められ感がます。

 慌てて店を飛び出して、セルフの箸を入れ忘れていて落ち込む。

「見かけたんだけど、一緒に居たのは誰? なんて何気なく聞けばいいのか? ああ、きっとずいぶん楽しそうだったけど。とかつけていやな思いをさせてしまいそうだ」

 ひと気のない場所まで来て小声で繰り出すとほんとうにその通りできっと責めるような詰問になってしまう。勢い余って箸を取り忘れたことの責任すらなすりつけかねない。

 こんな自分が嫌いだ。

 箸も忘れる。思ったこともちゃんと言えない。それなのに自分のいやなところをわざわざ確認してしまう。ウジウジしていて本当にいやになる。

「あ」

 なぜか君の声が聴こえた気がした。

 こんな時に会ってしまうのはよくないし、きっと幻聴だ。だって、ついさっき誰かと楽しそうに笑っていたんだから。

「これからごはん? 一緒にしたいからコンビニ付き合ってよ」

 大きな声をあげて後ろ向きで転んだ俺に頬を膨らませた君が手を伸ばす。

「ひっどーい。そんなに驚かなくてもイイじゃない」

「誰かと一緒だったんじゃ?」

 ああ、聞いてしまった。

「えー。なんで声かけてくれないのー」

 あれ?

 怒られた?




3つの恋のお題:俺ばかり好きでくやしい/君の声が聴こえた気がした/一緒に居たのは誰?


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