花曇り
ぴたりと足が止まった。
白々とした花弁が指先に貼り付いている。視線を巡らせても花は見当たらず、空を仰いでもただ薄明るい曇り空。
「どこから訪れたのだろうか。君は」
口ずさんでも花弁が応じるはずもなく、また風にひらり飛び去ってゆく。
「よっ」
路地から現れたおまえは当然の表情で私の横につく。その口からこぼれ落ちる益体もない言葉たち。「今日みたいな空を花曇りって言うんだろうな」
思わぬ洒落た言葉すらひらほろおちる花弁のように。
気兼ねない友人で気がつけばよく横にいて心を、まぁ、解してくれる。
「そんなことをするのは好意を持った相手にだけ」
などと言っている腹立たしい博愛主義者。
いつだって胡散臭くも飽きはしない。ついついしかたないなと受け入れてしまう。言葉を交わすことが横に並ぶことが楽しいのだ。
「ちゃんと前見ろよ」
クッと手を引かれてたたらを踏む。
驚いて「危ないじゃない」なじるようにそう言おうとしたら白い花弁が無数に舞う。
いつの間に誘導されていたのか。目前に広がる胸を締めつける光景に泣きそうになる。
「やだ。もう。好き」
脈もないのにこんなことしないで欲しい。私だけがどんどん恋の沼に沈んでく。好きの沼は深いけど隠してあり続けるのは苦しくて増えた想い出が辛くなる。
「おう。一番好きなやつと共有するのが一番いいだろ?」
は?
耳に心地好い囁きがどんと落とされた。
一番という単語に思考停止を余儀なくされる。
ゆっくり再起動した私はきっと顔が赤い。だってなんだか暑い。その原因を見つめればツッと視線をはずされた。
え?
誰でも同じじゃないの?
「あーあ、言っちゃった」
お題は【春】の季語である「花曇り」を使った「相手の裏の顔を知る」お話です
#季節しばりのお題 #shindanmaker
https://shindanmaker.com/893447
「ぴたりと足が止まった」で始まり、「あーあ、言っちゃった」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば7ツイート(980字)以内でお願いします。
#書き出しと終わり #shindanmaker
https://shindanmaker.com/801664
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