第17話 ハプニング

 来たる週末、予定どおりパーティーが開かれた。

「麗ちゃん、緊張してる? 」

「ちょっと......」

ちょっと、とは言いながらも肩がガチガチ。

顔も無表情の仮面が張り付いているようで見ていられない。

もう会場入るのに。

「海外でパーティーとかなかったの? 」

「なんか、雰囲気が違って......」

もっとフランクなのかな。

日本ほど堅苦しい挨拶はしないだろうね。

「せっかくドレス似合ってるんだから、リラックスして? 」

別に挨拶とかないし、と付け加えると、少し緊張が解けたようでふんわりと笑った。

やっぱり、笑ってるほうがいいな。


 会場の中を歩いていると、麗ちゃんは多くの人に声をかけられていた。

俺はそっちのけ?

そう思っても言えなかった。

だって、すごく楽しそうで、場の雰囲気を壊したくなかった。

......連れてくるの、間違いだったかな。

「千春くん、あっちに飲み物あるって」

「じゃぁ、もらいに行こうか。......失礼します」

それまで話していた人に挨拶をして、その場を後にした。

飲み物のコーナーには色々な種類ジュースがあった。

皆思い思いに飲み物を取っていく。

俺はオレンジだけど、麗ちゃんは......。

「たぶんカシス? ベリーの味もするような......」

そう言って飲み干した。

それ、まずいかも。

「お酒じゃ......って麗ちゃん!? 」

俺の方にぐったりと倒れてそのまま動かなくなってしまった。

肩が微かに上下しているので、眠っているだけらしい。

このままここにいるわけにもいかない。

力の抜けた体を持ち上げるのは困難かと思ったけど、そうでもなかった。

それくらい麗ちゃんは軽かった。

「救護室、どこですか? 」

「ホールの奥、突き当たりです」

その場に居合わせた人に礼をして、体を揺らさないように、けれども急いで向かう。

救護室の人が快くベッドを貸してくれたので、休ませることにした。

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