第16話 隣のクラス

 千春くんが言ったようにお昼休みに隣のクラス、3組に来た。

攻撃的ではないものの、すっかり話題の的になってしまった。

「千春、こんな可愛い彼女がいたんだね」

「か、可愛い......彼女......? 」

思ってもいなかったことを言われて戸惑う。

”可愛い”わけでもないし、”彼女”でもない。

まだ、想いを伝えていない。

「このクラスにも癒し系が欲しかったなぁ」

「ここの女子、美人だけどキツイもんな」

非常に失礼な単語が飛び交っている。

あいにく、”失礼しちゃうわ”などという言葉がちらほた聞こえた。

だが、クラスの雰囲気はどこよりもよさそうだ。

もう少し成績が良ければ。

というのも、ここの学校は成績でクラス編成をする。

そのクラスに見合った授業をするためなのだとか。

私は去年もその前も2組。

先生方にもあと一歩、と言われてきた。

どれもこれも自分の努力不足が原因。

「で、これからたまに来るけど構わないよね? 」

「もちろん」

私が考え事をしている間に話が進んでいたようだ。

どうやらここへ来てもいいらしい。

頭がいい人には親切な人が多い。

もちろんプライドが高い人や頑固な人も多いが。

「千春から少し聞いちゃったんだけどさ......いじめられたんだって? 」

「えっと......はい」

千春くんと仲がいいという人が尋ねてきた。

その通りなので肯定するのみ。

「もっとね、強気でいいと思うよ」

「そうそう! レベル低いことしてるんだからさ、ガツンと言ってやりなよ!」

「麗ちゃん強いから大丈夫」

そんなことは、と否定しようとしたのに、言葉を続けられる。

「小さい時は俺の騎士だったからね」

それを褒め言葉として素直に受け取れない自分がいる。

”騎士”は女性に使うべき言葉ではない、と思う。

挙げ句の果てに周りから感心される。

でも、少し勇気が出たことにはそっと感謝しておこう。

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