第10話 本当のことを聞かせて
眩しい光が入り、薄く目を開く。
もう、朝か。
あんまり寝れなかったけど、起きないわけにもいかない。
「おはようございます。 千春様」
声に気がついて横を見る、とすでに着替えを済ませたこいつがいた。
姿勢を正し、夜中のことなどなかったかのようにうっすら笑みを浮かべている。
俺は、その顔が嘘だってこと、知ってる。
でも、その顔の向こう側に何を抱えているかは、分からない。
聞いてみるしか知る方法はない、か。
「ここ」
俺は仕草で隣に座るよう促す。
だが、こいつは動かない。
「座って」
「......はい」
おずおずと腰を下ろす。
少し距離があるが、今回はまぁいい。
すぅっと一息吐き、声を発する。
「俺の質問、全部正直に答えて」
「......はい」
先ほどから小さい声で返事をする。
具合が悪いのかと思えばそうでもない。
「名前は? 」
「麗、です」
苗字は......まぁいいか。
今は他の質問を。
「昨日悪い夢でも見た? 魘されてたけど」
「ちょっと......」
やはり当たり。
ちなみに、誘導尋問でも職務質問でもない。
断じて違う。
「俺のこと、”千春くん”って呼んだことある? 」
「っ......い、いいえ、滅相もありません」
分かりやすい反応。
どうして隠す?
俺はベットから立ち上がり、麗の前に立膝になる。
「正直に、って言ったよね」
「ごめんなさい......呼んだこと、ありました」
ここで核心を突く。
なぜか、一つ知ればもっと知りたくなる。
麗は、俺をそうさせる何かがある。
「君は、誰? ......俺の、何? 」
「顔見知り、です」
「......そっか、ありがとう。 仕事に戻って」
他の人に聞いてみよう。
俺は部屋を後にして、家中を歩き回ることにした。
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