第6話 よくできる

「俺の隣に”婚約者”として立って恥ずかしくないくらいにはなれ」

そのために立ち振る舞いを覚えろ、と言われ、レッスンが始まった。

歩き方からテーブルマナー、人との話し方まで。

はたまた英語の教養。

やることは山のようにあるはず。

が、どれもこれもすぐ終わってしまう。

私だって幼い頃に教わったことを忘れているわけではない。

「いい意味で、やる意味がないわね......さすが麗ちゃん」

担当に就いてくれた深和さんが言う。

それは自分でも薄々感じてはいたが、不備があるかもしれないと思っていた。

その考えも無駄だったようだ。

「ダンスは踊れる? 」

「一応、ですけど」

最近は踊っていない。

それゆえに感覚も忘れてしまっている可能性がある。

明日、学校は休みなので、やってみるという。

......千春くんと。

「お疲れ様、今日はお休みなさい」

「ありがとうございました」

お風呂へ行こうとしていたところを、メイドさんに呼び止められる。

何事かを伺うと、衝撃の答えが返ってきた。

「お風呂から上がったら、千春様の部屋へ来てほしい、と」

私もそこまで鈍くはない。

それが何を意味しているのかも、勘付いた。

だが、主人の言うことを聞くのが私の仕事。

そう言い聞かせて、お風呂へ向かった。

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